天地壊拓~人類滅亡後の地下世界で出会ったのは、最恐の化け物と奇跡の宝石でした~

@syubarori

プロローグ

  「前方100m先に複数の高エネルギー反応検知。総員、警戒態勢!」

「「「了解」」」」


 土に囲まれた狭い空間で、十数人の青年たちが武器を構えた。前方から聞こえる異様な物音に最大限の注意を払いながら、彼らはじりじりと暗闇に近づいていく。

 その時、暗闇の向こうから巨大な刃が青年たちを襲った。そこから現れたのは、黒い体をした巨大なカマキリの様な化け物だった。


「クソッ!こいつ、未確認のクリーチャーか!?」

「近づくと危険です!歩兵班は直ちに退避!射撃班は総攻撃で牽制!総隊長も援護を…」


 集団の後方で指示を出す研究員の背後から、2m程の背丈の大男が現れる。彼は煙草の煙を吹かすと、腰の鞘から刀を抜いてボソッと呟いた。


「お前ら、今日は何の日か分かるか?」

「こんな時に何言ってるんですか、総隊長!?」

「今日は選考試験当日だ。一足先に新入りの顔を見る為に、さっさと仕事終わらせて帰るぞ」


 大男の身に纏うオーラに危機感を覚えて、周囲の青年たちは直ちにその場を離れる。大男が一つ深呼吸を置くと刀に雷が迸り、真っ暗闇だった洞窟の通路が昼間のように明るくなった。


「荒れ狂え」

 ━━━━━━━━━━━「飛電」━━━━━━━━━━━━



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 人類は滅亡した。原因は、20年前に発生した大災害【ワールドレイジ】だ。

 突如として地球全土を襲った超巨大地震を皮切りに、世界各地で津波や大火事が発生。各国の国交は完全に断絶し、あっという間に飢餓や疫病が蔓延した。そして極めつけは、火山噴火で火山灰が空を覆った事に起因する氷河期の到来。この時点で全世界人口の8割は死滅し、文明は滅んだ。


 時を同じくして、世界各地の地割れから超巨大洞窟が発見された。その数は計12か所。氷河期を凌ぐ為、人類は洞窟での生活を決意したが、そこは凶悪な化け物【クリーチャー】が住む地獄の世界だった。人類が食物連鎖の頂点に立つ時代は終わりを告げ、たちまち「喰われる側」に成り下がったのだ。


 進むも地獄。戻るも地獄。そんな絶望の中、人類はこの洞窟の中だけに眠る奇跡の鉱石の存在に気づく。あらゆる不可能を可能にする鉱石に全ての希望を託し、それを利用した【オブジェクト】と呼ばれる道具を開発した人類は、洞窟の中に再び文明を築き上げ、クリーチャーに立ち向かう事を決意したのだった────。


 これは血と闇に包まれ、数多の人々が涙を流すこの哀しき洞窟の中で、滅亡した世界を取り戻す為に、未来ある若者たちが命を賭けた冒険に出かける物語。

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