本日も隣の小鳥が騒がしい

ゆー

隣の小鳥

プロローグ

俺の隣には、騒がしい小鳥がいる。


『―…きら。起きなさい、…晃』

『きょうはあなたのじゅうろくさいのたんじょうび』

『いや違うけど』


いつも眉間に皺を寄せて、しょっちゅう口うるさくて、細かいことをぐちぐち突っつき、けれど極たまに優しく


『…ちょっと。今日は三人で出かける約束だったでしょ?』

『つばめおねえちゃん、あきら、おきない?』

『ちょっと待っててね、雲雀』


年の離れた、大切な妹のために一生懸命な小鳥が。


『せっかくおしゃれしたのにね』

『……何を言ってるの?雲雀』

『きのう、なんどもなんども雲雀にこれどうあれどうってむぐ』

『す、少し静かにしてましょうね……』 


これは、そんな騒がしい小鳥と雛鳥と共に過ごす俺の他愛ない…


『むぐぐこれならかわいいっていってくれるかななんて』

『雲雀落とし!』

『おおおお……!?』 

「ぐっは!!!」


とかそういうレベルで済まない重量が突如、俺の腹に勢いよく落とされる。


「あ、おきた」


気持ちいい朝とは程遠い目覚め。腹の上の物体は目を開けた俺を楽しそうに見つめ、俺を殺しかけた当の本人は


「…あら、おはよう晃」

「…おう…」


まるで何事も無かったかの様な澄まし顔。そのくせ、何故かちらちらと俺の方を見ながら、着ている服の裾をひらひらはためかせている。


「…………」

「…………?」


よく分からないままに、俺は目の前の小鳥の姿を見つめる。

普段彼女が好む健康的、スポーティな服装とは少し異なるその雰囲気。レースやらフリルやら何か肩とか脚とか出てる服装。

それを見て俺が思ったことはごくごくシンプルだった。


「お前いつも脚出してんな」

「……………」

「風邪ひくなよ」


そう言い残すと俺はもう一度下がった布団を引き上げた。


彼女は太腿で皮膚呼吸してんのかってくらい脚を常に出している。絶対領域を何が何でも活かそうとするそのスタイルは嫌いではないが、もうちょっと方向性を変えてもいいのではないかと、そう思っただけなのだが。


「雲雀、ゴー」

「いえっさー」


「ごふっ…」


帰ってきた答えは、再度のタックルでした。

再び訪れた痛みに悶絶する俺を見下ろす小鳥達の目は、どこまでも冷え切っている。


「………ばか……」

「ばーか」

「何だ二人して朝から!!!」




そう、これはそんな俺と、この小鳥達との、他愛なくてくだらない、ただの日常の一幕。

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