第8話 静かな出発
「大丈夫だ、ティアラ。知り合いだ」
「じゃぁ、あの方たちが?」
「ああ、たぶんな」
そのまま近づいて行くと、向こうもこちらに気づき声をかけてきた。
「アベルか?」
「ああ、ひさしぶりだなイアン。それにみんなも」
おそらく剣士だろう一人の青年が前に出て、声をかけてきた。それに答え他の仲間にも挨拶すると、皆笑顔で返してくれる。
「門番とは話がついている。先ずは街から出るぞ。話はそれからだ。二人共ついてきてくれ」
「わかったよ、イアン」
「お世話になります」
「あっ!こちらこそ、アベルがお世話に生ってます。おい、随分と可愛い彼女だな」
「いいから行くぞ、先ずは街を出るんだろ?」
「悪い悪い、お嬢さんも悪かったな」
「い、いえ、そんな、別に……」
(彼女?彼女かぁ〜そう見えるんだぁ〜)
それからは黙って門をくぐるようにイワンから言われ、一緒についていくと、門番と目が合うも黙礼され無事に何事もなく外へと出れた。
まだ薄暗い中日の出とともに、道沿いを東に向かう冒険者五人と護衛対象の二人。しばらくは無言で歩き続け、その息遣いと、金属や皮、布の擦れる音と足音だけが聞こてくる。振り返り領都が見えなくなる頃には、日も登りきっていた。
「よし、休憩だ」
「「「はぁ〜〜〜」」」
ーードサ、ドサ、ドサ
イアンの合図で初の休憩を取れることになった。
皆、その場で座り水筒を口に加えたり、足をマッサージしたりとくつろいでいる。
「はぁはぁ、ティアラ、大丈夫か?」
「はぁはぁはぁ、はい、がんばります、ふぅふぅ」
アベルが声を掛けると、辛そうながらも弱音を吐かないティアラ。必死で息を整えている。しかしこの早いペースでは、なれてない彼女は保たないだろう。しかも初めての外の旅。街中とは変わり、危険は隣り合わせで神経もすり減る。今までの道中に時折、藪がガサガサと揺れれば、ビクッと立ち止まり、なにかの鳴き声が聞こえれば、ヒッと小さな悲鳴を上げるの繰り返し。慣れた冒険者達は何事もなかったかの様に歩みを進め、アベルも数回近隣の村にまで行ったことがあったので慣れてはいたが、ティアラの手前、痩せ我慢していた。少しでも彼女に頼もしいと思われたかったのかもしれない。
「すまないな、ここからは少しペースを落とすから」
「助かるよ」
「ありがとうございます」
隣り合って座り休んでいる二人にイアンが声をかけてきた。すると、
「ペース早すぎ〜初めての女の子がいるんだから配慮しなよリーダー」
「そうだな無理をさせすぎだ、しかし、追手を考えると先を急ぎたいのもわかる。ここまで来れれば、いつものペースでいけるだろう」
「私はあなた達と違って、身体が丈夫じゃないんですよ!」
イアンの後ろから他のメンバーが各々意見を、というか文句を投げつけてきた。
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