第22話 魔物の後始末

『スイスイ』を掛けられたミクは、悲しい表情からキョトンとした表情に成る。

 リンは続いて、ナツにも『スイスイ』を掛ける。


「……」


「……」


『スイスイ』を掛けられたミクとナツは『何が何だかの…』の表情をしている。

 アスはミクとナツに向けて、優しい表情で話し始める。


「ミクちゃん。ナツちゃん!」

「少し、お昼寝しようか?♪」


「うん……ミク。何だか眠たく成っちゃった……」


「私も……アス先生…」


 ミクとナツは、眠たそうな表情でアスに言う。

 アスはリンに向けて、穏やかな表情で話し始めた。


「リン先生。スイスイありがとうございます!」

「今から、この子たちを部屋に連れて行きますので……」


「あっ……はい……」


 リンは、バツの悪い表情で返事をする。

 だって、これは本来。リンの仕事に成るから……


 アスはミクとナツを連れて、養護施設内に入っていった。

 リンは困った表情で、俺に話し始める。


「……スズヤさん!」

「アスがしっかり者過ぎるから、私は不要みたいな感じがしてしまいます……」


「……」


(……どう答えよう)

(リンは名目上では養護施設の管理者だが、実際は俺の補助だ!)


 シスターもリンと協力して、食事を作れと言ったし、リンに対しての引き継ぎも何も行われなかった。

 それは、孤児で有るアスが実質の、養護施設の管理者で有るからだ。


 変な話をすれば、二人も管理者は要らない。

 だが、俺とリンの状況を汲み取った神父が、リンのポストを無理矢理作った。←なのでリンの給料は3万キランしか出ない


 俺は悩んだ表情で、リンに話し始める。


「リン……気にするな!」

「アスは養護施設の中では一番年長者だし、それに子どもたちからしたわれている」


「リンの仕事はリンには悪いが、神父が無理矢理作った仕事だ!」

「そして、リン本来の目的は、養護施設での仕事では無く、俺の側に居たいんだろ?」


「……はい、そうです」

「私はスズヤさんの側に居たいから、こうして付いて来ました」


「でも、お金を貰っている以上は、スズヤさんの補助ばかりでは駄目ですよね///」


 リンは困った微笑み表情で俺に言う。

 俺は穏やかな表情で、リンに言い始める。


「ずっとでは駄目だが、最初の内はそれで良いだろう!」

「シスターもを認めているのだし、アスもリンを強くは求めていないから、気楽でいれば良いんだよ!!」


「スズヤさん……///」


 リンは嬉し恥ずかしそうな表情で呟く。

 リンは俺の娘では無いが、お父さんの役も時には演じないとな!


「……あらら」

「これはまた、派手にやりましたね…!」


 シスターの呆れた口調が、俺とリンの耳に入る。

 俺とリンは振り向くと、神父とシスターが帰って来ていた。


「……」


 神父は絶命した大型コウモリの側に行き、お祈りを始める。

 魔物でも、生き物には変わらない。


 シスターは俺とリンの側に来て、困った表情で話し始める。


「……これは、アスの仕業ですよね」


「……はい。俺とリンが市場から帰ってきた時。そのコウモリが、ミクとナツに襲い掛かろうとしていました」

「アスは火の魔法を使って、コウモリを焼き殺しました……」


 俺は真面目な表情でシスターに話す。

 だが、シスターは溜め息を吐く?


「ふぅー」


「アスがした行為は正しい行為ですが、殺してしまうと……結構大変なんですよね///」


 シスターは『やれやれ』の表情で、俺とリンに向けて話す。

 シスターは説明する表情に変わって、言葉を勝手に続ける。


「王国城への報告も必要だし、魔物処分も必要に成ります……でも、一番の問題は魔王軍を刺激させてしまう事なんです(汗)」

「アスは子どもたちを守る為に、魔力の調整をせずに、ブランドを使ったのでしょう」


「威嚇程度のブランドで、収めれば良かったですのに……」

「アスは正義感が強い子だから、仕方ないですけどね」


(魔法の調整が出来るんだ!)


 アスは、ミクとナツを守るために、100%の『ブランド』を唱えた。

 だから、大型コウモリは焼け死んだ。


 でも、50%位の『ブランド』で有れば(?)、大型コウモリは火傷だけで済んで逃げて行った??

 だが、そんな都合良く行く物だろうか……


 ……


 大型コウモリの後始末は、神父たちに任せて、俺とリンは厨房に入る。

 俺とリンで、買ってきた食材の整理整頓をしていると、リンが落ち着いた口調で話し掛けてくる。


「スズヤさん」

「シスターはさっき『あぁ』言っていましたが、私はアスちゃんの取った行動は正しいと感じています」


「俺もそれは感じていた……」

「魔法の力を抑えれば、コウモリは死ななかったかも知れないが、コウモリが反撃に出た場合。アスは致命傷を受けるだろし、ミクとナツも巻き添えに成る可能性も有った!」


「シスターは……事なかれ主義の一面も見られるから、大事おおごとにはしたく無かったのだろう」


 俺も、落ち着いた口調でリンに話す。

 魔物の命も大事だが、子どもたちの命の方がもっと大事だ。


 ……


 神父たちの連絡によって、大型コウモリは王国軍が回収に来た。

 その時に軽い事情聴取を、アスは王国軍の隊長からされたらしいが、アスの行動は『正当防衛』と判断されて、叱責や罰などは下らなかった。


 これで、コウモリの件は無事に終わった事に成るのだが……シスターがさっき言っていた。魔王軍への刺激を与えてしまった……

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