ケイドロ中のお姫様抱っこ



「はあはあはあはあ」

肩で息をしながら、両手を広げて目の前に立ちはだかるベルナルド様をこちらも両手を広げて構える。


「いい加減に諦めて捕まったらどうだ、カイン」

「はあはあはあ。ベルナルド様こそ、大人気ないですわよ」


「助けて!カノン!」

「お姉さま!」

「姉上!」

「カノン様!」


捕まって檻ゾーンから手を伸ばすマルクス王子殿下、妹弟にアイシャ。

ルーカス様は私に助けを求めている4人から少し離れたところでこちらを窺い、じわじわと近付いて来る。

4人は私に向かって必死に手を伸ばしている。


私は覚悟を決めて、4人に駆け寄った。

ベルナルド様の手をギリギリのところですり抜けた。

「あ!!ルカ!!捕まえろ!!」

「はいッ!」

ルーカス様を避けようとしたが、ルーカス様に手首を掴まれた。


「いたっ!」

ルーカス様の握力が強すぎて、つい声をあげた。

その瞬間、パッと掌が離れた。

ルーカス様は「しまった」という顔をしたのを後目に、檻ゾーンの4人に駆けていく。

タッチして全員を解放する。

「わあああ!」

「きゃーーーー!」

「あははははは」

「やったーーー!」

と大騒ぎになる。


「ルカ―!今の捕まえられただろうー?」

「申し訳ありません。細すぎて、骨を折ったかと思ってしまいました」

「ちょっと、骨折って危な過ぎですわ!力加減を考えてくださいませ!」

振り返ってルーカス様に文句を言った。

「大丈夫です。次は捕まえます」

そう言って駆けだしたルーカスは、あっいう間に私の目の前に移動した。そして、背中に手を当てたと感じた瞬間、逆の手が膝裏に入り、ふわっと体が浮いた。

「きゃっ」

お姫様抱っこーーーーーーーーーーー!!!!!!!!??????


「捕まえました」

冷静な報告口調で言い、檻ゾーンにお姫様抱っこのまま連れて行かれる。

「あ、あ、あ、あ、あ、あ」

降ろして!恥ずかしいから!!

恥ずかしすぎて言葉にならない。


「カノン様、手首は大丈夫ですか?」

「え?」

「先程捕まえた時、痛いとおっしゃっていたので」

「あ。は、はい。大丈夫です」

掴まれた手首を反対の手で撫でたのを見つめ、

「痛いですか?」

「いえ。全く。ほ、ほら、なんともなってないです」


出した手をじっと見つめ、

「よかった。怪我がなくて安心しました。申し訳ありませんでした」

と、安堵の微笑みを浮かべた。

「大丈夫ですよ。ゲームですから」


檻ゾーンに入ったルーカス様は私を抱いたまま片膝をつき、私を降ろした。

そしてそのまま走って次の泥棒を目指して駆けだした。


優しい抱き方。背中から肩に回された腕の温かさ。胸板の硬さ。服越しに伝わる熱を思い出す。

は、はずかしいいいいい!


瑠伽より筋肉ががっしりしてた。

瑠伽は細くはなかったけれど、ムキムキってわけでもじゃなかった。でも、軽々と私をお姫様抱っこしてくれた。瑠伽の胸の中に抱っこされてテレビを見るのが好きだったな。

前世の記憶をたどりながら、ボーっとみんなを見るともなく見つめていた。


「はい二人追加~」

ルーカス様が左右の脇に弟妹を捕まえて檻ゾーンにやって来て降ろした。

・・・。あれ?そういえば、とっ捕まえなくてもタッチするだけでいいんじゃなかったかしら?

あ、私が先程、手が離れたのをいいことに檻から見方を助け出したせいで、ルールが少し変わってしまったようだった。

「はい、マルクス様も確保~」

ルーカスがマルクス王子殿下を肩に担いで連行してきた。

「アイシャ嬢も連れてきたよ」

ベルナルド様はアイシャの手を取り、腰に手を回して連れてきた。

「お助けできず、申し訳ございません」

真面目か!?笑。



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