第31話 見せてくるのは、下着
思わず大きい声を出して、コントローラー片手に固まってしまった。
しかし
「どうしたの? あ、コントローラーわたしが使っていいのかな?」
と下着姿のまま受け取った。白い手でカーソルを動かして、
「へぇ、どの子も可愛いね。悩みます。……おすすめとかってあるのかな?」
と俺にさも自然な雰囲気でたずねてきた。
「え、あ、おすすめ? いや、その……えっと」
一方挙動不審全開な俺は、ろくに浮津さんの顔も見られぬまま変な声を出す。
「普通に好みでいいのかな?」
「まぁ……使いやすいとかはあるけど、そっちのが大事じゃないかなって……」
「ふぅん、
「え?」
ゲームのキャラを選ぶとき、俺は基本的に直感で選ぶことが多い。攻略情報でオススメキャラを調べることもあるが、一人か、それか家族と遊ぶ分にはそこまで差もないはずだ。
「……俺は直感かな」
「じゃあ、佐志路部君はどっち選ぶのかな?」
「どっちって……どのキャラとどのキャラで悩んでるんだ?」
「わたしと
画面に並んだデフォルメされた動物たちが、無言で俺を眺めていた。
「はぁ!? いや、なんだよいきなり……」
「妹さんも候補にほしかったです?」
「浮津さんっ!?」
「あら、わたしを選んでくれるんですか?」
下着姿の彼女が嬉しそう笑う。
「そうじゃなくて」
「冗談です。でも選んでほしいのは、本当ですよ」
「偉ぶって……」
「審査。わたし、油断していました。てっきり花澄ちゃんがそんなにすぐ佐志路部君と打ち解けるなんてないって思っていました。でも昨日だけでずいぶん距離も縮まったみたいで」
浮津さんは、まるで教室で俺に話しかけるときと変わらない。
そのことが余計に俺を混乱させて、なんて言っていいかわからなくなった。
多分、妹の裸をなんども目の当たりにしていなかったら、もっとまごついていただろう。しかし俺は裸族の妹と三度も対峙し、昨日は
俺は極めて冷静だ。よし、深呼吸しよう。ええと、まず状況の確認からだ。
浮津さんが下着姿だ。可愛らしい。彼女はいつも制服を折り目正しく着ていて、スカートの長さだってちょっとやぼったいくらいにしっかりしている。だからこうやって肌をつまみびらかにするなんてことは、少なくとも俺は初めて見る。
いや、下着姿を見るのが初めてなのは当たり前だけど。
例えば体育の時だって、女子はジャージよりハーフパンツの方が可愛いからといって好んで履く生徒が多い。それで寒くても太ももの一部を出して運動しているわけで、年中ジャージで長ズボンの俺からすると感心というか、目の保養というかなのだが、そんな中でも浮津さんはハーフパンツは選んでいなかった。
――そんな浮津さんが、下着姿だとっ!?
「違う違う……冷静になるんだった」
「佐志路部君?」
まず対話が必要だ。俺が「きゃーっ、浮津さんなんで下着なのっ!」って逃げ出してもいいんだが、ここ俺の家だしな。彼女がなぜ服を脱いで、しかも平然とそのままゲームしようとしているのか理由を確かめるべきだ。
「浮津さん、なんで下着姿になってるのっ!?」
「あ、なんだ佐志路部君、気づいてたんだ?」
「気づくよっ!! 言っとくけど段階的に脱いでたの、最初から気づいてたからねっ!?」
「あら、意外とムッツリだね。わたしのことそんなによく見てたんだ」
あっけからかんと、やはりどこまでも自然体で下着姿を恥じるような素振りはなかった。
妹の時と同じだ。
――もしかして、なにかあるのか? 中高生女子の間で、突然服を脱ぐのが流行っている……?
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