第3話 引きこもりの恩恵
学校に馴染めず不登校気味になり家に引き篭もりがちになった自分は、一日中カーテンも開けない部屋に閉じこもり、こっそり親のパソコンを自室に持ち出して、布団の中でネットサーフィンに夢中になった。
特に見ていたのはYouTubeだ。そこで自分はアンダーグラウンドで非常にコアなパンク・ミュージックの世界と出会う。当時のYouTubeは今と違って規制も緩く、誰が撮ったのかも分からないような、画質の粗い昔のマニアックなライブ動画がわんさかアップロードされていた。
最初は所謂最近の流行りの音楽を見聴きしていたのだが、関連動画を未漁るうちに、自分が生まれる前の時代のパンク・ミュージックに辿り着いた。
気付けば自分はそういった類の音楽に夢中になっていて、いつの間に色んなミュージシャンを覚えていた。
それがきっかけでギターに興味を持ち、近所のハードオフで、どこのメーカーかも分からない一番安いアコースティックギターを親に買ってもらい、細々と自分で作曲を始める。
そして幼少期から絵を描くことが好きだったことから発展して、美術の世界に興味を持つようになったのもこの時期である。
散々他人とのコミュニケーションに失敗してきた協調性の無い自分は、"普通に"働くことは無理かもしれないが、音楽や美術の世界に進むことだったらもしかしたら出来るかもしれないと、この時期うっすらと希望を持つようになった。
(結果的に自分は今、企業で一般就労しているが、それと並行してライフワークとしてアーティスト活動を続けている。この話はまた後ほど)
そして高校に上がると、自ずと美術大学への進学を志すようになる。
当時辛さはあったものの、今思えばあのとき部屋に引きこもって音楽や美術に没頭した時間は、今の仕事やライフワークに繋がる自分の原点になっているし、あのとき夢中になったアーティストは29歳になった今も自分の心の支えになっている。
自分にとっては必要不可欠な時間だったのだ。
と考えれば周囲に馴染めなかったことは実は悪いことばかりではなく、結果的には自分にプラスな刺激をもたらしたのだ。
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