学園の美少女たちの俺に対する態度がおかしい

第1話

 クッソ。また遅刻になっちまった。これで何度目だ?


 出来る限り急いで自転車を漕ぐ。

 急いで向かえば、二時間目が始まる前に到着することが出来るはずだ。


 最悪間に合わなくても登校することが大切だと、自分に言い聞かせて帰ろうかなと思う心を抑える。

 遅刻するくらいならと初めは遅刻が確定した時点で休んでいたが、あまりに遅刻しすぎてそれが出来ない。これ以上休むと単位取得が怪しくなってくる。


 さすがに卒業しないと、親からどんな説教を食らうか分かったものじゃない。俺の親は基本放任主義だが必要最低限のことはやらないと、段々と規制をかけてくる。


 この前も遅刻のことで言われたばかりなのに、その数日後に遅刻するってどうなってんだ。


 そうこう考えているうちに、校門が見えてきた。校門の前で自転車から降りてスタンドを下す。門の隣に設置されたインターホンを軽く押した。


 ピンポーンと軽い音が鳴る。

 聞きなれた音とその後に聞こえてきたのは、いつのおばちゃんの声だった。


 「はい……。また君ですか。少し待ってなさい」


 もうこちらから何かを言わなくても開けに来てくれるようになってしまった。


 校舎のほうを見ていると、人影が出てきてこちらに向かって歩いてくる。そして俺の目の前に、先ほどの声の主であるおばちゃんが来た。


 「おはようございます」


 「はい、おはよう。これからはちゃんと間に合うように来なさい」


 おばちゃんも呆れている。それもそうだろう。年に数回なら分かるが、俺の場合一周間に三回は遅刻だ。

 形だけだが謝ろうと思い声を出そうとしたとき、おばちゃんの後ろから一人生徒指導の男性教員が来ていた。


 「おい、神崎!以前も注意したばかりだろうが!」


 にこやかな笑顔に青筋が浮かんでますよ先生。控えめに言っても恐怖でしかない。

 対抗して俺もにこやか且つさわやかに返答する。


 「ははっ。田中先生。また、お世話になります!」


 自転車を駐輪場に置き、田中先生と共に生徒指導室へ入る。


 先生はドアを少し乱暴に開けて悪態をつく。


 「クソっ。俺はお前の世話なんかしたかねぇ。お前が遅刻ばかりするせいで、俺は本来の仕事が進まねぇんだ!」


 それは知っている。なぜなら先生は俺が生徒指導室にいる間見張っているからだ。

 

 「だがまぁ、今日でそれも終わりだ。お前のことは俺では面倒を見切れんからな」


 「先生……寿退社ですか?」


 「違うわ!それに俺は既婚者だ!知ってて言ってるだろ……。はぁ、いいか?お前は先生方……主に俺に迷惑をかけすぎだ。そしてお前の担任の志藤先生にもな。そこで昨日の会議でお前の話題が上がった」


 「嬉しいですね」


 「不名誉すぎてな!!……そこで白羽の矢が立ったのが生徒会だ。生徒会のメンバーにはすでに了承を得ている。まぁ放課後に学校への奉仕活動をお前にはしてもらう予定だ」


 奉仕活動だと……!


 「せんせーい質問です。給料は発生しますか?」


 先生が遅刻の紙を書きながら答えてくれる。


 「いい質問だ。お前が逃げ出すことがないように生徒会メンバーが三人以上付いていてくれるぞ」


 んん?答えになっていないような気がする。

 というか待てよ。生徒会のメンバーって確か……


 「先生もう一つ質問です。生徒会のメンバーの中に男はいますか?」


 「いい質問だ。生徒会のメンバーの中に男は……」


 「ゴクリ……」




 「いない!!!」


 先生の断言に俺は絶望した。


 「そっ、そんな、先生は俺に犯罪者になれと言っているんですか!」


 「はっ。お前は見た目に反して弱いからな。お前如きでは彼女らに勝てんよ」


 「くっ、見た目で苦労している人間によく言えますね」


 「知ったことか!教師を困らせ続けるお前への罰だ。それが嫌ならしっかりと更生するんだなぁ!」


 田中先生……あんたって人は!


「この人でなし!あんたはもっと話が分かる人だと思ってた」


「教師をあんたって言うな。はぁ、茶番はもういい。さっさと教室に行け」


 くそっ、結構楽しかったのにこの茶番。ていうか先生もノリノリだったのに。


 しっしと手を払う田中先生に背を向けて生徒指導室を出る。もうすでに二時間目は始まっている。田中先生と遊びすぎたな。遅刻であることに変わりはないが、教室へ向かって早歩きで歩く。


 教室がすぐ目の前の位置まで来たときに気付いた。

 そう……あまりにも静かすぎる。

 恐る恐るドアの窓から教室の中を覗くとだれ一人としていなかった。


 しまった!移動教室の授業だったのか。鞄の中に入っている時間割表を確認して、授業が始まっている化学室へと急いだ。

 


 


 


 


 

 

 


 


 

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