第5話 いざ、〈ポーションクリエイト〉!

 ゲットした空き瓶はアイテム空間に入れておくことにした。

 アイテム空間は異次元にある私専用の収納ボックスみたいなもの。そこなら物はまったく劣化しないんだって。


 空き瓶はボーナスクエストでゲットしたものだから貴重なものだと思うし、リュックに入れておいて、もしも割れてしまったら大変だ。だからアイテム空間の方が安全だと思ったんだ。


 私はステータスって強く念じた。目の前にステータス画面が表示される。そこからスキル画面にページ遷移していって、スキルの一覧から私の初期スキルである〈ポーションクリエイト〉を選択した。


『〈ポーションクリエイト〉を実行しますか? 薬草:1 マナの輝石:1を消費します。また、空き瓶の空きが必要です』


 なんて説明が表示された。

 私の目の前には『はい』と『いいえ』の選択肢がある。


「もちろん『はい』で」

 ポチッとした。

『調合を開始しました。完了まで残り30分です』

 私は目が点になった。ちょっと信じられない文章が見えたからだ。


「え……。30分……?」

 本当に30分? ポーションを作るのってそんなに時間がかかるの?

「すぐにできるんじゃないんだ……」


 どうしよう。30分もぼんやり待てない。特にすることは何もないんだよね。

 ダンジョンの奥の方に行ってみる? うーん……、でもなぁ……。一人で奥の方に行っちゃうと、また強そうなカエルとかに襲われそうだしなぁ。


「本当にどうしよう。今日はもう帰ろうかな」


 もうじゅうぶんにダンジョンを堪能したし。あまりムリはせずマイペースにやっていこうって思うし。

 というわけで来た道をゆっくり歩いて帰り始めた。


 ちょうど私とは反対に奥に向かって歩いて行く学生グループとすれ違った。ソロの私とは違って楽しそうにしていた。

 あれが本来の学生のあるべき姿か……。

 私はぼっち。はあ……。


 長い髪に暗い表情を隠すようにして歩いて行く。きっと今、表情が暗すぎてオバケよりもオバケっぽい顔になってるんじゃないかな……。


「あーあ……、〈ポーションクリエイト〉って本当にハズレスキルだったなー」


 実際に使ってみたことでそう強く実感してしまった。

 このスキルはまったく使えない。ポーションっていう性能の低い回復アイテムをたった1個作るだけなのに、あまりにも労力と時間がかかりすぎる。

 もっと良いスキルだったら私も同級生と仲良くダンジョン攻略ができたんだろうか……。はあーあ……。


「こんにちはー」

「まあ、こんなに表情が暗い女の子じゃあ、ちょっとやそっと性能の良いスキルを持っていても誰も声なんてかけてくれないか」


 もしも声をかけてくれるとしても、ダンジョンの奥地で私を置き去りにするようなひどいクラスメイトだけだろうね……。あー世の中しんどいね。


「こんにちはー」

「はあー、何か良いことないかなー」

「って、あれー。こんにちはー。聞こえてますー? お嬢さん、こんにちはー」

「……ん?」


 子供みたいな手が振られた気がする。私の斜め前方向だった。見てみたら見慣れない感じの人がいた。

 ちょっと衝撃的だった――。


 私が知っている人類の等身とはだいぶ違うから。んー、たぶん四等身くらいだろうか。とても可愛らしい感じだ。

 その四頭身くらいの人が、わーいって感じに両手を振っている。私に気がついて欲しいみたい。


「ど、どうも……」

「やっと気がついてくれましたね。こんにちはー」

「こ、こんにちは」


 見た目は子供。というか、等身の低い二次元キャラみたいな感じ。性別は女の子で、可愛らしい民族衣装を着ている。髪型は二つ結びだ。


「な、なんのご用でしょうか」

「実は、ついついあなたのひとり言が聞こえてきてしまったのですが」

「え、表情が暗いって言っていたところですか?」

「そこも聞こえてしまいましたが……。あなたは抜群にお可愛いですよ?」

「わわわ、嬉しいです。褒めてくれてありがとうございます」


 可愛いだなんて言ってもらえるとは思わなかったよ。照れちゃうじゃない。珍しく頬がほてってしまった。

 四頭身くらいの女性がにこりと温かい表情をくれた。


「実は私が聞こえてしまったのは〈ポーションクリエイト〉がハズレスキルっておっしゃっていたことですね」

「ああ、そっちですかー。残念ながらハズレスキルでした……」

「それです。その認識、大きく間違ってますよ」


 キリッとした表情ではっきり言ってくる。でも子供みたいな容姿だから、なんだか可愛いかった。


「あのー、その前に聞いてもいいですか? 凄く気になっているのですが、あなたはいったい……?」

「これは申し遅れました。私はリルリルと申します。このダンジョンで生活するダンジョンフォークという種族の者です。地球人さんにはそうは見えないみたいですが、これでも成人済みなんですよ」


「ダンジョンフォーク! 聞いたことがあります。わ~、お会いできて嬉しいです」

「わ~、ありがとうございます。私も嬉しいですよ~」


 二人とも笑顔で両手握手をした。

 地球人の一人として、私は恥ずかしくないコミュニケーションがとれただろうか。いやー、ダンジョンで暮らす種族って本当にいるんだね。さっそく出会えてかなりびっくりしたよ。


「あ、私の自己紹介がまだですね。私は千湯咲紗雪です。地球の日本っていう国の学生です。よろしくお願いします」


 リルリルさんは「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」と丁寧にお辞儀をしてくれた。私もお辞儀をした。

 挨拶が済んだことだし、ここからが本題だね。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る