【第11話】とりあえずエッチしたほうがいいですか?

いつものように、しばらくコンビニで待っていると、三太郎がやってきた。


「ういっす、カイト。最後の部活はどうだった?」


「それなんだけど、実はテニス部を続けることになっちゃって」


「は? テニスは興味ないんじゃなかったのか?」


三太郎は僕と同様、いや、もしかしたら僕以上に琴音先生のことが大好きである。

琴音先生と新菜、そして僕の三角関係を知ったら、三太郎は荒れ狂うかもしれない。


想像すると恐いので、ひとまず内緒にしておこう。


「ちょっと面白くなってきたから、もう少しだけテニスを続けてみようかと。せっかく三太郎のお母さんのラケットももらったし」


「……そうか。カイトにスポーツなんて似合わないけど、運動不足の解消になっていいかもな」


「そうそう、そうなんだ。テニススクールやスポーツジムに通うことを考えたら、部活は費用も安いしね」


と、そこに新菜が現れた。


「おはよう、カイト」


いつもなら、新菜はもっと早い時間に学校に向かっているはずだし、新菜の家からこのコンビニを通ると、学校までは少し遠回りになってしまう。


「お、おはよう。なんで新菜がここに?」


「今日からカイトと一緒に登校しようと思って」


激しい拒絶反応を示したのは三太郎だ。


「勝手に決めんなよ! 朝の登校時間は俺とカイトの貴重なコミュニケーションの場なんだよ!」


「何がコミュニケーションよ。どうせ毎日エロい話ばっかしてるんでしょ?」


「もう中学生なんだから、べつにエロい話ぐらい、してもいいだろ!」


「うわ、開き直った。サイテー。とにかく今日から一緒に登校するので、よろしく。イヤだったら、三太郎だけ1人で登校してもいいけど」


「なんでだよ!」


そろそろ仲裁に入ろう。


「ストーップ! わかった。これからは3人で登校しよう。そうしよう。決まり。三太郎も、いいね?」


「ちぇっ。カイトがそれでいいなら、いいけどよ」


「さあカイト、学校へレッツゴー!」


勢い余った新菜は僕の手を握ったが、すぐに「あ……」といって、その手を離した。

三太郎に自分の気持ちを悟られたくないのだろう。


幸いなことに、鈍感な三太郎はまったく気がついていないようだ。


「新菜、なんでそんなに元気なんだ? 確か失恋して落ちこ……ぐえっ!?」


デリカシーのない三太郎の横腹に、僕はとりあえずチョップをお見舞いしておいた。


予想通りというべきか、それから学校に着くまでは、新菜と三太郎の口論が続いた。

僕はその間に入って、ひたすら仲裁をしていた。

もしかして、これが毎日続くのだろうか……。


   *


1日の授業が終わって、放課後。


「カイト、一緒に帰りましょ」


「ちょっと待てよ新菜! 帰りもついてくるつもりか!?」


「三太郎はイヤなら1人で帰れば? ね、カイト?」


「……3人で帰ろう」


こうなると、さすがに鈍感な三太郎にも状況がのみ込めてきたらしい。


「もしかして新菜、おまえ……?」


「なによ?」


「カイトのこと好きなのか?」


「……悪い?」


「やっぱそうか! 俺って鋭いから、すぐにわかっちゃったよ!」


「ぜーんぜん鋭くないし」


「で、カイトは新菜のこと、どう思ってんだ?」


「えっと──」


僕の言葉をさえぎって、新菜が答えた。


「好きに決まってるでしょ!」


「おまえに聞いてないよ! カイト、どうなんだ?」


「うーんと、好きは好きなんだけど……」


「マジかよ! じゃあ、付き合っちゃえよ! もしかして、うちのクラスでカップル成立第1号じゃないか!?」


「えーっと……」


ここで琴音先生の名前を出すと、「琴音先生ひとすじ」の三太郎にぶっ殺される気がする。


「なんだよ、煮え切らないな。いいかカイト。男と女なんていうのは、とりあえず付き合ってみて、エッチして、すべてはそれからだ!」


「そういうわけにはいかないよ。ねえ、新菜?」


いつも三太郎のエロ話に難色を示している新菜なら、もちろん同意してくれるだろう。

そう思っていたのだが。


「三太郎のいうことにも、一理あるわね」


「えっ!? 新菜、三太郎の話のどこに一理あるっているんだよ?」


「私とカイトは、エッチしたほうがいいと思う」


♪∽♪∝♪——————♪∽♪∝♪


『テニスなんかにゃ興味ない!』を

お読みいただいてありがとうございます。


この物語は毎日更新していき、

第50話でいったん完結する予定です。


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