第7話 イフリート、成敗する

家の方に近付くとネズミが雨樋あまどいの中に入っていった。


俺もそれに続きながら未練がましくパンツ一等兵を見た。


「なにしてるっちゅか?早く行くっちゅよ」

「だめだ、猫に食われそうなパンツ一等兵を置いていけない」


俺はそう言って空中でクロールするように腕を振り回した。


ギュオオオオオオオオオオオオオ!!!


風が吹いた。


ピューっとパンツ一等兵が風に乗って帰ってきた。


「おかえり」


胸ポケットに入れ直す。

猫は突然の暴風にその場で伏せていた。


「さぁ、行こう」

「ちゅっ!」


雨樋を伝って上がっていく。

しばらく進んでるとダクトに入れるようになっていた。


そこからダクトへ飛び移る。


「すっげぇ、なぁ、結構複雑そうな道だけどよく覚えてんなぁ」

「ちゅちゅっちゅ。頭脳明晰を舐めないで欲しいっちゅ」


そう言ってネズミは進んでいく。


「お前そういえばなんて名前なの?」

「イキシアっちゅ」


そう言われて思い出してた。


「勇者パーティのさ。聖女の子たしかそんな名前だったよなぁ。あの子さぁおっぱいでかくて俺好みだったんだよね。しかも清楚っぽそうじゃん?」


ん?


ってか思い出した。


「さっきトイレで一瞬だけ顔見たけどお前イキシアっぽかったよな。顔も。俺の初恋だからよく覚えてるんだよ顔もおっぱいの形も。あの脚線美も男を誘惑するエロエロボイスも」


しかしそうなると疑問が残る。


なんでこんなところにいるわけ?


有り得なくね?


「勇者パーティ全員消息消えたって話だったけどなぁ」


そんな話をしていた時イキシアが口を開いた。


「ここからは静かにするっちゅ。それからなにか見えても飛び出すのは厳禁っちゅ」


お口チャック。


ダクトを進んでいくと色んな部屋を見ることができた。


そうやって進んでいると一室の上でイキシアが止まった。


鉄格子から下を見ていた。

俺も近寄って中を見てみる。


沢山の子供がいた。


(奴隷?)


わーお。

すごい数だなー。


だがその中で気になる人物がいた。


燃えるような赤髪の女だった。


「皆さん諦めないでください。必ず助けは来ますから」

「こねぇよ、このまま売られるんだよ私ら」


金髪のギャルみたいな奴隷がそう言ってた。


グッ。

拳を握るイキシア。


「早く会いたいっちゅ」

「あの子に?」

「ちゅっ。鍵を取りに行って……いろいろやることが」


俺は鉄格子を2本持った。


メキョン。

メキョン。


鉄格子が2本外れた。

音も立てずに外した。


口を開けて俺を見ているイキシア。


「顎外れてるんじゃねぇの?」

「あ、いや。ぼけっとしてたっちゅ」


そう言うとイキシアは俺にお礼を言ってそこから飛び降りた。


赤髪の肩に乗った。


俺も飛び降りた。

赤髪のおっぱいに飛びついた。


ブルルルルルルルルルルル。

顔をおっぱいに押し付ける。


ネズミは最高だな。

何をしても許されるんだもん。


「な、なんだこのネズミいったいどこから」


そう言って俺を引き剥がす赤髪。


「待って。そのネズミは味方っちゅ」

「このスーツサングラスのネズミが?」

「ちゅっ」


そう言うと俺に向かってイキシアは言った。


「人化」



ポン。

俺は人の姿に戻った。


ザワザワ。

どういうわけか知らないけどここに居た奴隷達の目に光が戻ってきた。


「助けが来たぞ」

「メシアだ。救世主様」


そう言って俺を崇めてくる奴隷たち。


ふむ、どういうわけか知らんが気分がいいぞーこれ。


俺はその時この部屋に唯一あった扉に目を向けた。

南京錠が付いていたので引きちぎった。


ザワザワ。


「あいつ、南京錠引きちぎりやがったぞ」

「どうなってるんだ?」


俺はそのままドアを開けた。

だが誰も出ようとしない。


イキシアが肩に戻ってくる。


「イフリート、行くっちゅ。この館内には敵がいっぱいっちゅ。とにかく殲滅するっちゅ」

「俺は馬鹿だからよく分かんねぇけど、いいぜ。この奴隷たちを捕まえてるやつがいるんだよな。今の雇い主はお前だからなガハハ」


部屋を出るとここは地下牢みたいな場所のようだった。


一本道が伸びており、その左右には鉄格子の部屋。


中には首輪を付けられた子供たちが何人もいた。


「やべぇなぁここ、まぁいいや」


スっ。

横に手を伸ばして鉄格子を引き剥がしながら歩いていく。


「それは魔法っちゅか?ここは魔法を使えないはずなんでちゅけど」

「筋肉魔法だよ」


そう言いながら鉄格子を俺は紙みたいにクシャクシャに丸めた。


あんぐり。

口を開けてるイキシア。


そうして奴隷たちを解放していると1つの独房の中に見知った顔を見つけた。

キシーだ。


「イフリート殿。やはり貴殿は信頼出来る人間だ!」


バゴン。

鉄格子を引き剥がして渡した。


「ないよりましだろ?」

「ありがとうございます。恩に着ますイフリート殿」

「行くぞ、この先だろ?キゾークさんは」

「はい」


頷いてキシーは言った。


「ここはあなたに任せましょう」

「お前は?」

「わたしはここで子供たちの安全を確保しましょう」


俺は頷いてそのまま地下牢を出ていった。


そうして俺は館内を探す。


走り回ってキゾークさんを探す。


スンスン。


「ここっちゅ」


とある一室の前でイキシアは俺を止めた。


その中から銃声が聞こえた。


ターン。


「ぐあっ!」

「キゾークさん?!」


俺は扉を開けた。

そこではキゾークさんが倒れていた。


そして向かい合っていたのは太った男だった。


「そ、そんな」


キゾークさんに駆け寄ろうとしたが。


「やれやれ」


スっ。

キゾークさんは自分で起き上がってきた。


キゾークさんは胸ポケットからハンカチと一緒に写真を取り出した。


「防弾生の素材にしておいてよかったわい」


そこから弾丸がめり込んだ写真を取りだしたキゾークさん。


ベタベタだ!

よくあるお決まりの展開じゃねぇか!


「ふざけんじゃねぇ!クソジジイ!死んどけ!」


男はもう一度キゾークさんを撃った。


「やれやれ、防弾チョッキを着ておいて良かったわい。ちなみに眼鏡も入れ歯も防弾だ」


タキシードを脱いだキゾークさん。

その下には防弾チョッキがっ!


「てめぇ!舐めやがって!」


俺に銃を向けてくる男。


ターン!

俺に向かって発砲してきた。


「ならこいつを殺してやるっ!あばよ!」


撃たれた。


しかし、ここは俺もベタベタで行こうと思う。


「ふぅ」

「なっ!お前も防弾仕様の写真を?!ばかな!」


そう叫んでいる男の前で俺はパンツを取りだした。


「残念防弾パン……って……」


穴空いとるうぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!


え?!このパンティが俺を救ったんじゃねぇのか?!


お前キーアイテムだろ?!


「しねやぁぁぁぁあ!!」


再度の発砲。

しかし俺は倒れない。


不思議に思って俺はタキシード脱いだが変わった様子は無い。


「ふざけんなよ!タキシードサングラス野郎がぁぁぁぁぁぁ!!!モブみてぇな姿しやがって!」


ダダダダダダダ。


俺に乱射してきたが。俺の肉体に傷1つ着くことは無かった。


「なんで、銃が効かねぇんだこの上半身裸の変態サングラスは」


ドサッ。

その場に膝を着いた男。


「何故だと思いますか?!そう、これが筋肉魔法のバリアだからです。筋肉魔法最強!!!!!!今ならなんと一日一万で定額働かせ放題っ!」


べしっ!


俺は男をぶん殴って気絶させた。


良くわかんねぇけどとりあえず悪を倒したようだ。




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