社畜、報告する


俺たちは現在、犯罪組織の場所もといSSダブルエス級ダンジョン『魔導人形ゴーレムの遺跡』から迎えにきた車に乗っている。


俺は奥に爺さんが乗っていることを確認すると、


「おい……爺さん……」


「ん? なんだ?」


こいつ……

まさか忘れてんじゃないよな?


「なんだ? じゃねぇんだよ! なにが大丈夫、だ。SS級ダンジョンってことさきに教えとけよ!」



忘れたとは言わせないからな!

俺がそう爺さんを問い詰めたら爺さんの目が泳ぎ始めた。

おいおい、まさか本当に……


爺さんは俺の考えを察したらしくすぐさまに否定した。


「いやいやいや忘れてたわけじゃない! まさか合体獣キメラなんかがいるとは思わなかったんだ! レリックがいれば大抵なんとかなるし今回は少し難し目のチュートリアルのつもりだったんだ」


「は!? ふざけ……」


いや? 待てよ。

なるほど、一理ある。

よくよく考えてみたらモンスターを使うなんてスキルは誰も知らない。

スキルとしてあるのは自身の身体能力とかそう言ったものの類や、武器などに関するものだ。

これまでモンスターに関わるスキルは出てないし仕方なかったと言えば仕方なかったのだろう。


「はぁ、まぁいいけどよ」


俺がそういうと爺さんはホッとしたようで安堵した表情になる。


今回はここで折れとくとしよう。

結局なんとかなったし、それに爺さんも本気マジで反省しているようだしな。

と、そうそう、これを言っておかなきゃ。


「なぁ爺さん」


「なんだ?」


「さっきの合体獣作った影響なのか分からんが一体もモンスターと遭遇しなかったんだ。いくらスキルでもここまでできるのか気になってな」


俺がダンジョンを出た後でふと思ったことを俺は爺さんに言った。

すると爺さんは思考し始め、そして結論が出たようで俺に真面目な顔で言った。


「なるほど……それは確かにおかしい。いくらスキルでも5分に一回は出てくるモンスターをずっと合体し続けるのは厳しいはず……」


「っていうか、そもそもずっと合体獣の強さは変わらなかったぞ? ……あれ? だとしたら出てくるはずのモンスターは一体どこに……?」


しばらく2人で考えていたのちに、爺さんは結論出した。


「よし、わからんものは仕方ない。今は考えないようにしておこう」


そう、現実逃避という結論を。


おいおい、仮にもダンジョン協会の上層部であるあんたがそう簡単に諦めてどうするんだよ。

いや、まぁ俺もそれはよくやるから強くは言えないんだけどさ。


そうそう、因みにレリックは現在ぐっすりと眠っている。

やはり、疲れていたのだろう。

もともとゴロゴロしたいから怠惰のようだしな。

ダンジョン探索の時もめんどくさそうにしていたし。


「そうそう、忘れてたけど一応今回の仕事の報酬を渡したいんだが何がいい?」


え?

仕事の報酬ってあるの?

あー、でもそうか。

ずっと仕事やってろって言われてもいつか嫌になるだろうしな。

そう言ったことにならないための報酬なんだろう。


だとしたらどうするか。

報酬って……あっ!


「報酬って魔導武具アーティファクトでもいけるのか?」


「うーん、まぁ、いいだろう。でも流石に一回だけね」


「だったらこのナイフ、貰っていか?」


俺はそう言いながらナイフを取り出して爺さんに見せた。


「えぇ? それか? それは使えるかわからないんだけど大丈夫か?」


「いや、これがいい」


「そうか、まぁ、いいけど」


よっし!

これで俺は自由自在の武器が手に入ったわけだ。

頼んである武器も合わせるとだいぶ強いと思う。


「そんで、俺はもう帰っていいのか?」


そう、今回は犯罪組織を潰すことだったからそれは達成した。

だからもう家に帰ってもいいはずだ。


「そうだな、いいだろう。呼び出す時はまたそのカードになるからちゃんと持っておいてくれ」


「わかった」


「そうそう、シロはどんな感じだ?」


俺がそういうと爺さんは思い出したように言った。


「ああ、そうだった。シロから伝言があったんだ。今度コラボしませんか、だそうだ。もうシロは退院しているぞ」


コラボか。

いいね。

ずっと別のやつと戦ってたから魔物とやり合いたい。

ってかシロはもう退院してたのか。

よかった。


「OK、ありがとう」


「あっ、ちょっと待ってくれ」


「ん? なんだ?」


俺が不思議に思いそう聞くと


「一回その魔導武具を貸してくれ。あぁ、安心しろ。別に今更とったりはしない」


どうやら俺の顔に出ていたらしく思ったことがバレてしまった。

そんな中爺さんは手に持った鍵? のような道具で印をつけてそのまま俺に渡してきた。


「これでよしっと、おう、持ってっていいぞ」


「そうか」


そう言って俺は爺さんに家の最寄り駅まで送られ、そのまま家に帰った。


「あぁ、久しぶりの我が家だ」


まぁ、アパートなんだけどな。

それにしても久しぶりだ。

数日間は帰ってないからな。


そうして俺はベッドに飛び込み、そのままスマホを身始めた。


「えーと? 確か武器を頼んだのが……4日前、後3日……か」


うん、まだ時間がある。

ってかここでいいのだろうか。

俺は今魔導武具アーティファクトを持っている。

普通の武器ならまだしも流石に魔導武具を持っていてここに置いておくのは危険すぎる。

新しい家にでも引っ越すか?


多分もうちょっと深いところに行けばそれぐらいは行けそうなんだけど……

いや、まだいいか。

大体ほとんど俺が持っているし、それはギルド事務所を立てる時に一緒にやってしまうとしよう。


俺はそんなことを考えながら、寝た。


そうして翌日。


「ダンジョン配信するか」


俺は配信機材を用意していた。

だってアレだぜ?

俺がこの前犯罪組織を潰したらその報酬で魔導武具をもらったんだ、これを使わないではないだろう。

まぁ、流石に危険だから姿を変えたりはしないがな。


そうして俺はひさしぶりの結晶の洞窟に向かった。

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