38_発熱

 週明けの月曜日。今朝はなんだか体調が芳しくない。体温を計ったら、37.5℃を指していた。花帆にジョギングを休むと、メッセージを送る。


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花帆、今日はジョギング休む。ごめん

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どうしたの? 大丈夫?

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無理して走れない事は無さそうだけど、熱計ったら37.5℃あった

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それは休んだ方がいいよ! 会社は?

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会社は休む程でも無いかな。とりあえず、もう一眠りする

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寝坊しないでね! 起きて熱上がってたら無理したらダメだよ!

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 2度目の起床時に計った体温は、37℃になっていた。ジョギングをしてからは体力もついていたのか、体調が悪くなるのも久しぶりだった。この体温なら問題無さそうだ、俺は出社する準備を始めた。



***



「おはよう、斉藤くん。藤田さんから聞いたんやけど、紹介したい人おるって? どんな子や?」


「今、デザイン系の学校に通ってる、27歳の女性です。実務経験は無いんですけど、アプリケーションは使えます。真面目でやる気は十分だと思います」


「ほう、そうか。ウチに興味あるようやったら一回面接来てもらおか。その子は友達か、なんかか?」


「え、ええ、まあそんな感じです。じゃ、今日にでも聞いておきます」


「じゃ、よろしく。斉藤くんもそうやけど、ウチ来てくれる人は紹介の子が多いねん。分かったら返事ちょうだい」


 そう言って、幸田は3階の社長室へと戻っていった。



 花帆に言うと、どんな反応をするだろう?


 先週末の時点では、紹介出来るかどうか定かでは無かったので、花帆には黙っていた。流石に、俺と一緒に仕事するのは嫌がるだろうか? いや、いつかまた一緒に仕事がしたい、そう言われた事もあったはずだ。



 昼になり、ランチに出ようと思ったが、驚くほどに食欲が無い。飲食店に行っても食べ切れそうになかったので、コンビニでおにぎりとサンドイッチを買ってきた。だが、おにぎりを半分食べた所で手が止まってしまった。食欲が無いどころか、さっきから背筋がゾクゾクしている。


「斉藤さんがコンビニランチなんて珍しいね。……ん? どうしたの? 体調悪いの?」


 隣でお弁当を食べていた藤田さんが声をかけてくれた。


「ええ、なんか背筋がゾクゾクしだして……藤田さん、体温計って持ってますか?」


 藤田さんに借りたデジタル体温計は、39.8℃を表示した。


「すごい熱じゃん! 朝はどうだったの? 無理して出社しちゃダメじゃない」


「すみません、家を出る時は37℃しか無かったから大丈夫だと思って」


「まあ……光良くんには私から言っておくから、さっさと帰りなさい」


 俺は藤田さんの言葉に甘えて、早退させて貰う事にした。




 電車を待っている時間でさえ辛い。背筋がゾクゾクするのに合わせて、体も震えはじめた。昔からこの症状が出ると、2〜3日は寝込んでしまうのが常だった。


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会社で熱計ったら、39.8℃になってた。早退させて貰って帰ってるとこ

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 花帆にメッセージを入れた。


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大変じゃない! バイト行く前に拓也ん家、寄るからちゃんと寝てて! 欲しいもの何かある? スーパー寄ってから行くから

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 花帆も丁度、昼休みだったようだ。お言葉に甘えて、スポーツドリンクや飲むゼリーなどのリクエストを入れておいた。FXをやっていた時に体調を崩した時は、弱った体と寂しさが相まって、本当に一人が辛かったことを思い出す。


 今はこうやって、見舞いに来てくれる人がいる。


 早く、花帆に面接の話を伝えてあげたい。


 花帆はどんな顔をするだろうか。

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