第2話 優等生と陽キャ

「なんかないかな〜」


 放課後とは、ベスト場面を見つける確率が上がる時間帯である。

 こんなことを考えているのは私だけだな。

 変人でごめんなさい。

 鼻歌まじりにルンルンで探していると、曲がり角に差し掛かった時だった。


「残念だったねー」

「うん」


 金髪陽キャな美人ギャルが、平凡優等生女子と廊下でダベっていた。

 しかも壁に寄り掛かりながら座っている。

 ギャルはあぐらをかき、優等生は体育座り。

 どうやら落ち込む優等生を慰めるギャルの構図のようだ。

 早速私は覗くように観察開始。

 曲がり角に感謝する。


「学年上位なのに何で1番に拘んの?」


 なるほど、頂点を逃して落ち込んでいたのか。

 良い大学を狙っているのかな。


「親にまたチクチク言われるもん」


 親との確執とやらか。

 自分は放置環境であるから、難しい環境は分からない。

 でも想像してみると、うむ、親ウザいって思っちゃうな。

 チクチク長く言われるのかな。

 だとしたら帰りたくなくなるな。


「目標の大学には余裕だからって安心材料を伝えているのに…何を頑張れば良いのよ…」


 愚痴が次々と出てきた。

 彼女の目からは涙がポロポロと流れている。

 するとギャルの彼女は泣いてる女子の頭を撫でる。


「今日、うちに泊まる?」

「えっ?」


 なんだ、その提案は。

 鼻息が荒くなる。興奮してしまった、落ち着け自分。


「明日は学校休みだし、良いじゃん」

「言わなきゃ」

「うちらもうだよ?」


 そうだ、高校生、なんだ。

 確かにまだまだ親の許可が必要とはいえ、やはりどこか大人な部分はあって。

 許可はどうであれ、知らせはしておけば良いのだ。

 なんだか考えさせられることになろうとは。

 これも人間観察の醍醐味。

 客観的に自分を見つめる機会もあるのだから。


 人間観察、それは、本を読んで、考えたり感じたりして、喜怒哀楽が出て来るようなこと。


 優等生女子は「ありがとう」と言ってスマホを鞄から出して操作を始めた。


「メッセージ送ったから、良いよね?」


 なんだか優等生女子はさっぱりした表情になっていた。


「よし、帰ろ!」


 2人は立ち、昇降口に向かって話しながら歩き出した。


「良い…グッジョブ…!」


 しみじみと言って私も帰ることにした。

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