第4話それは好きということ

妹の白音しろねは僕より四つ下の二十二歳で雪城記念病院で看護士をしている。

僕とは違い、しっかりしている。

その白音からLINEが届いた。


白音

「お兄ちゃん、面接どうだったの?」


「だめ、さんざんだった」

僕は返す。


白音

「どういうことなの。お兄ちゃん、やっとやる気だしたのに……」


「ちょっとしたアクシデントで集中できなかった」

と僕は返し、涙の雪エモンのスタンプを送る。

雪エモンとは雪城市のゆるキャラで雪だるまをモチーフにしたものだ。まあ、雪城市は瀬戸内気候のため、一年で雪が降る日は数えるほどだ。それなのに市を代表するキャラクターが雪だるまモチーフとはどういうことなのだろうか?

とLINEをしながら、僕はつまらないことを考えた。

まあ、雪エモンはかわいいから好きなんだけどね。


「そんじゃあ、仕方ないね。まあ、次があるよ。もし、仕事きまらなかったら私が養ってあげるよ」

と白音はいつものセリフを送ってくる。

それは僕が無職になってからの白音の口癖であった。

妹に養われるのもいいかもしれないが、さすがにそれを口にするわけにはいかない。


「ふざけたこというなよ。それで今日は何時に仕事終わる」

僕は無理矢理に話題を変える。


白音

「六時に終われる。晩御飯お願い!!」


「わかったよ」

短くそう返信し、僕はLINEのメッセージのやり取りを終える。

時間もあるし、スーパーによって帰ろう。

白音の好物のカレーでも作ろうかな。

僕はアイスカフェオレをのみ干し、カップなどをゴミ箱に捨てる。


帰宅するため、駅に向かう。

僕の家は神宮町駅から西側に四つ目の駅で高倉駅から徒歩十分のところにある。

高倉駅前にあるスーパー中村屋により、カレーの材料を買い込む。

こうやって買い物をしていても油断するとあの難波零子の可愛くて綺麗な顔が頭をよぎる。それにあのセクシーなスタイル、それを想像すると体温が二、三度あがるような気がする。難波零子の容姿を想像すると自然と顔がにやけてしまう。

一人でニヤニヤしていると不審者にまちがわられてしまう。これは自重しないといけない。


そんなことを思っていると天啓というか神のお告げのようなものが脳内に降りてきた。

ああっ、そうだ。

そうなんだ。

僕はわずかな時間で難波零子を好きになったのだ。彼女のことが頭のどこかにあり、どんなに意識しても消えることはない。

もう一度あの温かくて、柔らかな肌に触れたい。その欲望が胸のなかに渦巻き、呼吸が勝手に荒くなる。

意識して、落ち着かせなければどうにかなりそうな感覚だ。


僕は買い物をすませて、自宅マンションに帰宅した。

時刻は午後三時を少し回ったところだ。

妹の白音が帰ってくるまで、時間はけっこうあるな。

僕は自室に行き、部屋着のスウエットの上下に着替える。次にキッチンに向かう。

冷蔵庫から麦茶を取り出し、一気に流し込む。冷たい液体が喉をながれ、ちょっとだけ心が落ち着いた。

そしてリビングに行き、ふーと息を吐きながら、ソファーに寝転がる。


寝転がり、ぼんやりしていたら睡魔に襲われた。面接なんか受けて、心身が疲れていたのだろう。僕はすぐに眠ってしまった。



あれっここはどこなのだろうか?

自宅のリビングにあるソファーでうたた寝をしていたはずなのに、見知らぬ場所にいた。

僕はなにかは分からないが、ふわふわした感触のところに座っている。

それに何故か肌寒い。

僕は周囲をぐるりと見渡した。

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