第4話 女と男・鍵穴と鍵
今日は金曜日だから仕事中も心の中ではテンションが高かった。明日が休みだと思うと幸せだった。うきうきで1時間残業してきた。残業する時は残業届みたいな紙を上司に提出する。前の会社でもそうだった。
明日が休みだから、たまには外食しようと思って、帰りにアパート近くのすき家に寄って「炭火焼きほろほろチキンカレー」を注文した。めっちゃうまかったよ。チキンもでかいしルーもうまかった。Unknownおすすめ商品なので、気になる方は是非すき家で注文してみて。値段は750円だった。まじでうまかった。
生きてるっていいな!
どうでもいいけど、俺のアパートはすき家とマクドナルドがめっちゃ近くにあるんだ。ケンタッキーも近所にある。スーパーもコンビニもガソリンスタンドもドラッグストアも美容室もスポーツジムもパン屋もカラオケ屋もゲーム屋も靴屋も服屋もホテルも近くにある。というか、うちの近所は徒歩圏内に何でもある。都会なら普通かもしれないけど、ここは群馬だから、徒歩圏内にこれだけ揃ってるのは中々珍しい。群馬比で、ここは都会だ。
子供の頃はもっとド田舎に住んでた。町にコンビニすらなかった。あるのは山と田んぼと孤独だけ。田舎すぎて、めっちゃ開放的だった。家の鍵なんて閉めたことなかった。その辺のおばあさんが俺の家に勝手に入って玄関に野菜を置いていってくれる事もしばしば。友達のお父さんが運転する軽トラの荷台に乗って、風を切って笑ってた。
俺は子供の頃、地域の祭りで獅子舞を踊っていた。獅子舞は、元は江戸時代に飢饉や疫病を追い払うために始まった風習らしいが、時代が変わって、祝い事や祭りの場で行われるようになったそうだ。古い神社の屋台では群馬の名物である焼きまんじゅうが売られていた。俺は焼きまんじゅうはそんなに好きじゃない。甘ったるくて。
田舎もどんどん高齢化・少子化が進んで、俺が子供の頃にあった祭りや伝統は消えていくのだろう。日本特有の「和」の伝統が無くなっていくのは少し寂しい気もするが、仕方ない。時代の流れだ。
俺が子供の頃に住んでいた地域は、至る所に古い神社があった。鎌倉幕府初代征夷大将軍・源頼朝が参拝に訪れたとされる神社も近所にあった。
ちなみに俺は平安時代の武将だと平清盛が好き。ゲームがきっかけで好きになった。実際の平清盛がどういう体型だったのかは知らないが、そのゲーム内ではめっちゃゴツいスキンヘッドの強敵だった。魔王みたいに描かれていて、いかつかった。
ストリートファイターでも、俺はゴツいキャラクターが好きです。ザンギエフとか。
俺はストリートファイター6を暇潰しによく遊ぶ。格ゲーは敷居が高いと感じる人も多いかもしれないけど、コンボとか覚えて敵を倒した時の爽快感は他のゲームでは味わえない。今はオンラインでいくらでも対人戦ができるから良いね。やっぱり人と人が拳を交えるゲームが1番単純で楽しい。リアルファイトができない分、ゲームの中で存分に殴り合おうや。ストリートファイター6たのしいぜ。
俺の中での「男」としての理想像は「ファイトクラブ」という映画の主人公、タイラー・ダーデンだ。若い頃のブラッド・ピットが演じていたが、タイラーの男らしい人間性と筋肉に俺は心から惚れ、心酔した。ファイトクラブは俺が1番好きな映画だ。原作はチャック・パラニュークの小説である。
俺は男として、ナヨナヨした感じの芯の無い男より、やっぱり信念が真ん中にずっしりとある男に憧れる。
俺自身が心が脆いから、心の強い人に憧れる。心の強さとは、自分の弱さを認めつつも諦めずに立ち上がって前進していく事だと思う。敗北すること自体が悪いのではなく、敗北から立ち上がれないことが悪いのだ。
最近の“ロックバンド”は俺からすると全然ロックじゃない。令和のロックバンドはどうやら高い声で女々しい失恋の歌を歌うアイドルみたいなクソバンドばかりが流行るらしい。名前を覚える気にすらならない。そういうバンドが流行る大衆にも俺は辟易しているし、そういうバンドが“ロック”を騙る事にも辟易している。世の中は、くだらない。
俺の中で“ロック”は、もっと泥臭くて、痛くて、繊細で、強くて、かっこいいものだ。
それこそsyrup16gやNirvanaのようなバンドが俺の中での究極のロック像だ。
ちなみに俺は昔のV系は好き。V系は「そういうもの」として型があるから。DIR EN GREYやJanne Da Arcとか好き。THE NOVEMBERSは厳密にはV系ではないが、大好き。
あとは、単純に聴いていて楽しいかどうかが俺の中で重要だ。ZAZEN BOYSとかは単純に聴いていて楽しい。本能寺とか、ポテトサラダとか、聴いててめっちゃ楽しい。
なんか話が逸れた……。
まあ俺は子供の頃はド田舎に住んでたって事です。野球とゲームに明け暮れる、よくいる少年だった。でも性格は大人しかった。
よく親戚の田んぼの田植えとか稲刈りを手伝ったりしたものだ。かなり広大な敷地だった。細田守の「サマーウォーズ」みたいな感じの田舎だった。
ド田舎はド田舎の良さがあるが、人間関係が濃密すぎるというか、監視社会的な面があるから、そこがダルくて難点だと思う。集落の中で噂もすぐ広まるし。
俺は今の環境に満足してるから、何か起こらない限りずっとここに住み続けるだろうな。都会と田舎の良いとこ取りみたいな場所で、家賃もクソ安いし。
◆
そういえば俺は最近まで、新選組や幕末がテーマのゲームをしていた。江戸時代の庶民の暮らしもちょっと楽しそうだと思った。酒さえあれば俺はどんな時代でも生きられる。江戸時代にも酒はある。当時は日本酒しか無かったが、俺は日本酒も好きだ。
ちなみに江戸時代では、既にうどんや蕎麦も庶民に親しまれていた。天ぷらや鰻の蒲焼きも既にあった。ついでに居酒屋が誕生したのも江戸時代だ。
でも江戸時代は身分制度がエグいのが嫌だ。士・農・工・商の身分があり、更に下に“えた・ひにん”がある。偉い武士や役人が街を歩くたびに平民は頭を下げる必要がある。ちなみに武士の中でも上士・郷士とか階級がある。街の治安は悪い。
やっぱり現代に生まれてよかった。過去に多くの人の血が流れて、今の平和な日本がある。人類史は始まったばかり。最終的に人類がどうなるのか、死んだ俺は宇宙から見ていたい。きっと想像できない未来が待ってる。
宇宙は紐で出来ている。死んだら俺は大きな紐に還る。そしたら、会いたい人にまた会えるだろう。
人は愛の為に生きて、死ぬ。死んだ後も誰かを愛する。
◆
会社行ってアパートに帰ってきて、1人でのんびり過ごす俺の日々。
カクヨムには色んな作者さんがいて、読んでて飽きない。中には天才だと感じる人もいる。
世界的画家のゴッホは精神を病んでいた。彼が生きている間、絵は全くと言っていいほど売れなかった。彼は「埋もれた天才」として生涯に幕を下ろした。
カクヨムにも、埋もれた天才がいる。
最近、セリーヌの「なしくずしの死」を読み返してる。読み終えたら、俺なりに「なしくずしの死」について書くつもりだ。えらそうに書評する。セリーヌを称えまくるつもりだ。
俺はカクヨムに来る前は「小説家になろう」というサイトで小説やエッセイを自由奔放に投稿していた。俺が初めてネットに小説を投稿したのは2014年だった。17歳の時だったと思う。あれからもう10年の時が経とうとしている。
やがてカクヨムに流れ着いた。
精神が不安定だったから、小説家になろうでもカクヨムでも何度もアカウントを消しまくった。だがその度に復活した。さしずめ俺は不死鳥(フェニックス)です、か。
小説家になろうの時代から、俺の文をずっと読んでいてくれてる人も複数人いて、ありがたい。
俺は勝手に、読者をみんな友達だと思ってる。
厳密には俺が暗い部屋でスマホでぽちぽちと独り言を書いてるだけなのだが、俺は友達に語りかける感覚で文を書いてる。
このスマホの画面の向こう側にいるのは、血と肉と感情のある人間である。
最近、あなたの暮らしはどう?
◆
気が付いたらもう土曜日になっていた。
深夜の5時32分。睡眠薬を飲んだ。
軽く酒を飲んだ。350mlの氷結を1本。
ここ1ヶ月以上、度数4パーの酒を少量しか飲まない生活が続いている。俺は偉すぎる。もう酒に頼る人生は終わった。
◆
誰かに助けてほしい時こそ、俺は何も言えなくなる。
俺は自分の存在が空っぽに感じる。本を読んだり、カクヨムの他の人の文を読んだりして、心の空洞を補完した気持ちになっている。
でも空っぽの人生もありかなと思う。空っぽだと、何にも執着しないで飄々と生きることができるから。
もう別れた彼女と体を重ねた時の幸福感を思い出すと、ちょっと苦しくなる。感傷的になる。俺はタバコの煙を吐き出す。
彼女と交わした何気ない会話のほとんどを思い出せる。
彼女はなんで俺を受け入れてくれたのか?
それは、多分寂しかったから。俺じゃなくてもよかった。
でも俺もずっと寂しかった。
俺は鍵穴に鍵をゆっくり差し込んだ。
5話に続く
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