Charlotte編

第6話 アナタ、私のメイドになりなさい!


 今日は金曜日。今夜は『charlotte(シャーロット)』と言う女性五人組バンドのワンマンライブがある。(通称ロット)チケットは即日ソールドアウト。近いうちにメジャーデビューするなんて話もあるらしい。


 ウチの店でライブをやるのは五回目位じゃなかったっけ? 今ではリハーサルを見学したり、メンバーと一緒に食事する位の仲になっていた。


 俺と未来姉は店の掃除や足りない物の買い出しと大忙し。すっかり雑用係が板についた。




 ※




 「ちょっと未来ちゃん、……お時間よろしくて?」




 そう言って来たのはボーカルのジャンヌさん(本名ではない)


 「あっ、もうすぐ終わりますからカウンターで待ってて下さい!」


 買い出しから帰って来た未来姉は、冷蔵庫に両手いっぱいに抱えた食料を詰め込んでいる。


 「あら? ……アナタ、このジャンヌ様を待たせると言うのかしら?(笑)」←勿論冗談で言ってる


 「ゴメンなさーい!(笑)

 ちょっと悠真っ、ジャンヌさんにオレンジジュース出しといてー!」



 ……このジャンヌさん、ステージではマリーアントワネットの様な出立いでたちで歌い、踊り、カリスマ性がハンパない! そして他のメンバーは全員メイド姿という徹底ぶりだ。


 色モノバンドかと思われがちだけど、演奏も上手いし、ジャンルで言えばV系ハードロックになるのかな? 幻想的な世界観と音楽で熱狂的な女性ファンが多いのが特徴だ。



 「はい、ジャンヌさん、オレンジ百パーセントですからね!」


 「……あら悠真くん、ご機嫌よう。よく分かってるわね♪ そう言えばウチのマリア(Dr)がすっごい上手くなったって褒めてたわよ!」


 普段のジャンヌさんは、ショートボブで色気のある大人の女性って感じだ。近寄ると香水のいい匂いがする。

 


 「本当ですか? 嬉しいなぁー!」



 実はマリアさんは俺がドラムを教えてもらっている内の一人だ。普段はドラム教室の先生をやっているんだけど、俺はこの店で知り合ってからちょくちょくアドバイスをして貰っていたり、たまに個人レッスンを受けている。

 

 だけど、……コレ無料でいいの? って思っている。今度何か恩返ししないとだよねー。



 「悠真くんはバンド組まないの?」


 「俺は、……えっと、もうすぐイギリスから兄貴分が帰って来るので、それまではしっかり練習して、そしたら未来姉と三人でバンド組みます!」


 「まぁ、素敵じゃない! その時は一緒にやれたらいいわね! ……でも、その前に未来ちゃん……」



 「ジャンヌさん、お待たせしましたー!」



 その前に……なんだ? 未来姉が来たから話途切れちゃったよ。


 ジャンヌさんはカウンターの椅子から立ち上がって未来姉の肩を抱き、顔を近づけて……、



 「未来ちゃん! 突然なんだけど日曜日、私のメイドになりなさい!」


 「ほぇ? ど、……どういう事ですか?」


 「実はね、日曜にフェスがあるんだけど、私達は元々出演予定じゃなかったのに急遽組み込まれてねぇ……。ウチのエリス(B)がどうしても外せない用事で出られないのよ。未来ちゃん代わりに出られないかしら?」

 

 「えーっと、……この格好じゃ、……ダメですよね?(苦笑)」


 今日の未来姉の格好は薄いパープルのオーバーオールに🐈‍⬛ネコのプリントのTシャツだ。


 「未来ちゃん、そんなみすぼらしい格好で私の隣に立つつもりなのかしら?」


 ちょっと意地悪そうな顔つきをしてジャンヌさんが笑った。


 「すみませんでした、ジャンヌさま! メイド服、喜んで着させて頂きます!!(苦笑)」


 流石にあの世界観の中でオーバーオールはダメだよね。て事は未来姉メイド服着るのか! シンちゃんに見せてあげたいなぁ(笑)


 「ゴメンね、何人かに声掛けてるんだけど、メイド服着るの嫌とか日曜日だから他のイベントに出るとかで中々良い返事を貰えなかったのよ、助かったわ! ありがとう未来ちゃん♪」


 「それでどの曲やるんですか? 私、ロットの曲なら大体弾けますよー♪」


 未来姉もオレンジジュースを冷蔵庫から取り出し、飲みながらふふんと得意気に答えると、ジャンヌさんは嬉しそうに、


 「ありがとう♪ 今回は私達以外メジャーデビューしてるバンドだから持ち時間少ないのよ。この三曲でやるつもりなんだけど、……どうかしら?」


 セトリ表を見たら三曲ともロットのライブの中でも終盤に持って来る代表曲だった。……こりゃジャンヌさん、プロのバンド食ってやるつもり満々だな! 


 ……この内一曲はマリアさんから教えてもらって叩いた事あるなー、最初ツーバス慣れるまで結構疲れた記憶があるよ。


 「わかりましたー! 今夜終わったらこのセトリで練習してみます♪ ジャンヌさんと一緒に演奏出来るなんて嬉しいー♡」


 「もう、……可愛い事言って♡ それじゃ宜しくね!」


 ジャンヌさんは未来姉の頭をクシャクシャと撫でて楽屋に戻って行った。




 ※




 charlotteのライブは圧巻の一言だった! もうウチの店じゃ狭すぎるよね、パンパンに入った店内の熱気が凄い! 次からは千人規模のライブハウスの方が良いと思うよ!


 ジャンヌさんの伸びやかなハイトーンボイスにあの圧倒的な存在感。バックのメイドさん達もテクが凄い! ここに明日未来姉が入っても、流石に悪目立ちは出来ないよね(笑)



 『それでは皆様、ご機嫌よう!』



 ジャンヌさんのいつもの挨拶が終わっても熱気と歓声が鳴り止まない。


 さっ、客がはけて後片付けしたら未来姉の練習に付き合おうかな? あんなライブ見たら叩きたくてウズウズするよ!



 ……なんて思ってたら、



 『キャーーッ!!』って叫び声がしてスタッフ達がステージに集まっている。……なんだなんだ?


 

 ……っ!! そこにはマリアさんが倒れていてみんなに囲まれていた。



 「悠真ーっ、救急車っ! 早くっ!」



 未来姉が叫んでいたので俺は慌てて救急車を呼んだ。




 ……マリアさん、大丈夫なのか?






 つづくー!

 本編はここまでっ♪



 🌸読んで頂きありがとうございました🍒

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 🎸ここから先は補足&雑談コーナー🎸



 今回はV系バンドのお話です。私は世代では無いのですが、YouTubeや父の部屋から漁って有名所は浅く広く手をつけました。90年代のV系が1番勢いあってカッコ良かったんじゃないかしら?


 ※V系……ビジュアル系バンドの略、XやLUNA SEA、L'Arc〜en〜Ciel、Janne Da Arcなどなど♪


 今回ボーカルのジャンヌさんのビジュアルイメージはなんとなくMALICE MIZERの mana様を頭に思い描いてます。


https://youtu.be/pO2bgPhtJZo?si=P6Ti50CREFX1swSN


 ↑ 青いドレスの人ね♪


 MALICE MIZER……ガクトが居たバンドで世界観がヤヴァかった。舞台を観てるような演出でのガクトは良かったわー!  脱退の真相は本人達にしか分からない問題だからアレだけどね⤵︎


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