頂上の魔王ーVRMMOの称号「魔王」のせいで異世界召喚されたけど、ギルド拠点とNPCも連れて来ちゃった

岩国雅

滅竜の先導者と蟲毒そして白銀の鱗

プロローグ(0)

「彼女をこちらに渡すんだ。エルドラドのリーダーよ」

 天使の姿をした長髪の男性プレイヤーが言った。


 漆黒の装備の女性プレイヤーは緊張感のない顔をしている。

「……………………何だって?もう1回言ってくれない?」

 互いに距離はあるが、声が届かないほどではない。

 この女性プレイヤーの挑発である。


 天使は怒りをあらわにする。

「このクエストはワールド規模なんだぞ!クエストの失敗は帝国の滅亡を意味する!その少女の封印でそれを避けられるんだ!」

 

 滅亡。

 

 その言葉が嘘でないことは、彼女たちの背景が証明していた。

 彼女たちがいる帝都に押し寄せる大小さまざまなモンスター。

 空を覆う怪鳥の群れ、地を這う巨大なワーム、最強を見せつけるドラゴン。

 巨大な津波のように、モンスターの肉の壁が帝都を囲う壁へと激突していた。


「封印?……なんでこの子がそんな目に合わなくちゃいけないの?モンスター全部倒せばいいじゃん!」

 

「すでにこの防衛戦は20日も続いている。一向に勢いは無くならない。そればかりか、モンスターのレベルは少しずつ上がっている。それもすべて!その子の呪いが原因なんだ!今すぐに封印をしなければ間に合わない。遊んでいる暇はないんだ……少女をこちらに渡せ!」


「ハハハ、これはゲームなんだよ。遊びでしょ?…………まあ、でも。ふざけてここに立っている訳じゃないけどね」

 女は少女をかばうように立つ。


「戦闘が始まれば、その少女の命は保証できないぞ」


「いちいち言わなくてもいいよ。私たちはこの子を守るために来たんだ…………どっちが正義だろうね~?」


 天使は神々しい聖なる剣を構えた。

「正義は我々にある」

 

 女の影がより暗さを増して、揺れ動いた。

「あっそ、じゃ、私は「悪の王」ってわけだ」


 今、帝都を襲うモンスターよりも、さらに恐ろしい戦いが始まろうとしている。

 

「帝国の平和のために」

「少女一人の幸せ奪って成り立つ平和なんて、意味はねぇだろうが!」

 

 この日、ある2つのギルドを発端とする2000万人以上のプレイヤーを巻き込んだ大戦争は熾烈を極めた。

 だが、決着はすぐについた。

 そして瞬く間に世界に知れ渡った。

 この戦争の勝者の名とその「彼女」に送られたある称号。


 名は、フィセラ。


 称号は、魔王。


 その称号は冗談で与えられるものではない。

 

 魔王。

 

 それは人間の敵である。

 

 魔王。


 それは、世界に仇なす者。


 1年だ。

 魔王が異世界に呼ばれるまで。

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