よしてん~あるタクシー運転手のつぶやき~

似鳥ミツル

第1話 はじめに

そこそこ長く生きていると、日常生活にも仕事中にもある色々なものが心の中にたまっていく。それは知識や経験といわれるものだけでなく、役に立たないが面白かったり腹立たしかったりといった心に残る出来事である。


表現者と呼ばれる人たちはきっと、そういった事柄を凝集昇華してエンターテイメントに仕立てているのだろうと私は思っている。おそらく、そんな人たちと自分は比べ物にならないだろうが蓄積してきたものは年月分あるのだから、そこそこのものができるのではないかと思い立ったのがこれである。


東京二十三区を主に走っているタクシーの世界の話をまとめたので、地域が変わったり時が経ったりすれば通用しない話になってしまうものもあるかと思う。だが、感じたものの根底にある人間の面白さはきっと不変だ。

読んだ人にそのあたりが伝わればいいとおもっている。

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