第4話:葉見のこだわり。

さて葉見はみるはラブドールだから、とうぜんご飯も食べないし排泄もしない。

なんて経済的。


最近は俺が会社に行ってる間、なにもしないってのも気がひけるのか

葉見はタブレット片手にレシピを見ながら料理を作る練習をしてるらしい。


だから会社から帰ると台所からいい匂いがして来る。

こういうのはとってもいい傾向。

家に帰るとさ、待っててくれる人がいて晩御飯が出て来るっていいんじゃん。


ただ葉見の料理はまだそれほど上手くないから、まじ美味ってほどじゃない。

俺自体は好き嫌いがないから、多少美味くなくても葉見が作ったものは全部

残さず平らげる。

残したりしたら可哀想だからね。


だから葉見は綺麗に食べた俺のお茶碗やお皿を見て喜ぶ。

だけど自分はご飯を食べないから俺がご飯を食べてる間は俺の横に座って俺が

ご飯を食べてるのを嬉しそうに見ている。


最近に葉見は表情も豊かだし・・・。

そんな彼女を見てると、なんかまじで、より女の子らしく見える・・・。

俺の気のせいじゃないと思うんだけど・・・。


所詮は作り物だから皮膚の劣化とかないのかな?って思うけど、そういうのも

見られない。

そこは葉見の魂が頑張ってるのかもって思ってしまう。


魂になっても女は女。

若くありたい綺麗でいたいって言う女の執念みたいなもんかもな?

不思議だよな。


あとは葉見の服に対する関心だね、まあ部屋の中ならスッポンポンでも

いいんだろうけど、そこは女の子、ファッションには興味があるらしい。

まあ生きてた頃は普通に興味あっただろうし・・。


そこで俺は葉見を連れて彼女の服を買いに行くことにした。

どうしても一人でブティックなんかに行けない女の子と住んでるとそうなるわな。


「あのさ明日土曜日だし会社休みだから葉見の服でも買いに行こうか?」


「いいね・・・私が圭ちゃんのマンションに来てから初デートだね」


「お〜そういやそうか・・・ふたりで外に出るのはじめてだもんな」

「ラブドール連れて買い物に行ってる男なん俺くらいだろうな?」


「あのね、そのラブドールっていい方やめない?」


「え?嫌なの?・・・ラブドールはラブドールでしょ?」


「なんだかそれって人形でしょ?モノみたいだし・・・使用感ありありな感んじ」

「私、もう人形じゃないし・・・」


「そうなの?・・・じゃ〜ラブドールって呼ぶのやめるわ」

「だけどラブドールって呼び方、それなりに可愛いと思うけどな」

「 前まではダッチワイフって言ってたみたいだよ」

「南極1号とかさ・・・」


「わ〜それ嫌な感じ・・・そんないい方いかにもな感じ、セクハラだよ?」


「セクハラってね、それが普通だった時代もあったんだよ」


「男社会の歪んだ背景が垣間見えるね」


「なにそれ?・・・それは偏見・・・考えすぎ?」

「一般的商品としての総称ってだけだろ?」

「どんな商品にだって名前や呼び方は必要なんだし・・・」


「ほらまた〜商品なんて・・・」

「私は生きてるんだからね・・・商品じゃないから」


「なにも葉見のことを言ってるわけじゃないだろ?」

「なんか今日絡んでくるね」


「あ〜もしかしたら生理だからかも・・・」


「・・・今なんてった?」


「生理・・・」


「なんでよ・・・ラブドールが生理になんかなるわけないだろ?」

「そんなことが起こったら人類絶滅だわ」

「てか、ひいては少子化問題にも発展するだろ?」


「ほらまた言った」


「なにを?」


「ラブドールって」


「あ、悪い・・つい・・・もうクセになってるな」


「今度そう言ったら、ペナルティー科せるからね」


「なんだよ、ペナルティーって?」


「今度また言ったら、エッチさせてあげない」


「あのな〜ペナルティーもクソも、まだ一回にもやってないだろ?」

「なにボケかましてんの?」


「そか・・・圭ちゃん、私としたい?」

「そりゃね・・・男と女が一緒に暮らしてて、なにもないってのは不自然だからな」


「じゃ〜生理が終わったらね」


「まだ言ってんの?」


「あ、そっか・・・生理になったって思うのはきっと生きてた時の習性だね 」


「習性ね・・・思い込みだろ?」


「そういや気のせいかもしれないけどさ、なんか葉見どんどん人間っぽくなって

きてないか?」

「最初に俺のマンションに来た時より人間っぽくなってるよな」


「たとえば、どこが?どこが?」


「どこがって・・・たとえば皮膚とか・・・たしかに昔に比べたら最近のラブ・・・

・・・はリアルにはできてるんだろうけど、それでもな 」

「表情だってずっと豊かになってきてるし・・・」


「そうかな・・・私変わってきてる?」


「気のせいじゃなく間違いなく変わって来てるって思うけど・・・」


「じゃ〜そのうち圭ちゃんと一緒にご飯食べられるようになるかも・・・」

「圭ちゃんとラブラブでご飯食べられるようになったらいいな」

「それって夢だね・・・」


「ああ・・・飯が食えるってことは必然的に排泄もするようになるから

非経済的かな?」


「進化の過程には、いろんなリスクが伴うもんだよ」


「時々そういう難しいこと言うな」


「それも生きてた時の習性かもね」


習性じゃなくて修正したほうがいいんじゃないか?・・・生理的感覚。


つづく。



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