第18話 初陣(2)

これまでは、海野のおかげで相手の打線を抑える事が出来た。僕は練習でしか投げていない、球種はストレート一本のみ抑えるのは大変難しいだろう。一球目、インコース胸元に投げたはずだった...。しかし、制球が悪く投げた所はど真ん中だった。カキーンという快音がなり僕が初めて投げたボールはホームランになった。その後も、アウトをひとつも取ることが出来ず打線に捕まりコールド負けとなった。この試合で負けたのは僕の責任だ。涙が溢れて膝から崩れ落ちた。その時、僕の肩を海野が2回叩いた。そして、「生駒の責任じゃない、自己管理が出来なかった自分の責任だ」と言った。そして「行くぞ、整列だ」といい僕を連れて行った。ベンチに戻ったあと僕はバタンとベンチに横になり再び涙を流した。田村は声をかけようとしたが有村が「今は、そっとしておこう」といい1人にしてくれた。かっこ悪いな僕、みんなの前で打たれまくっている姿を見られ、「僕みたいな人間は一生ヒーローにはなれないだろうな」と思った。しばらくすると、「みんなの所に戻ろう、一緒に帰ろ」という声が聞こえた。

奏が僕の隣に座った。

「僕は一生ヒーローにはなれないだな」

「ヒーロー?」奏は聞いた?

「はあ、みんなの前で打たれまくって、かっこ悪いな僕」

「なに言ってるの?生駒君はずっと私のヒーローだよ」

「え、どうして」僕は聞いた。

「結果は残念だったけどチームのために投げてる姿かっこよかったよ」奏は言った。

「しかも、私が不良達に絡まれた時助けてくれた。もうヒーローだよ」奏は優しく言った。

「ありがとう、少し気持ちが楽になったよ」僕は礼を述べて、みんなの元へ戻った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る