田舎少女の私、エクソシストになろうと思います

雪村 降太郎

第1話 

アラード大陸南西 ミチリ村

村の入り口へと、少女は走っていました。

やがて少女の目には、大きな人だかりが写ります。少女はその中へ突っ込んでいき、人を腕で8回掻き分け、2回誰かの足を踏み、2回謝罪の意味がこもった言葉を発して、やっと人だかりの一番前まで到達し、人だかりができていた理由を見ることが出来ました。

(リータおばさんの言ってたこと、ほんとだったんだ......)

少女の視線の先には、ミチリ村にはまるで似合わない、金の装飾のされた黒色の馬車が止まっていました。馬車の装飾には、ドラゴンが描かれています。

その扉が開いて、中から端正な顔立ちの男が出てきました。

かなりの長身で、馬車と同じ金の装飾と黒の衣服を纏っています。頭には服と同じ黒色のつばの長い帽子が、胸のポケットにはトカゲが彫られた、これまた金色の装飾が施されたバッチがついていました。

(あのトカゲのバッチ、間違いない。爛炎教会らんえんきょうかいの人だわ。しかもあのバッチも馬車も服も豪華な装飾......相当偉い立場みたいね。でも何でそんな人が.....?)

少女は困惑していました。なんせ爛炎教会は、潤溢聖園じゅんいつせいえんと並び、老人から小さな子供まで知っている有名な宗教です。人口49人のこんな小さな村に、しかもあの男1人で来るような理由は、少なくとも少女には思いつきませんでした。

すると、突然爛炎教会の男は叫びました。

「村長を呼んでくれ!話がある!急ぎで頼む!」

騒ぎを聞きつけていたのでしょう。老人が人混みから飛び出してきました。

「私が村長のムクリでごせぇやす。その馬車、それにそのバッチ......爛炎教会の方がこんなところまで......何かあったんでございますか?」

ムクリはガサついた声で答えました。  

男は大声で言います。

「私はマクラゴ・ヘルハウンド。この村からずっっと南の、爛炎第6教会の神父である。

実はこの村にとある調査へやってきたのだ。これはなるべく秘密で頼むよフクロウとやら。」

フクロウもといムクリの背は小さく、神父の男と並ぶとより男の長身が目立って、威圧感を与えていました。

「へえェそうですかァ、そんな遠くから......わ......わかりました。私の家へどうぞ。そこなら秘密の話もできますんでえ」

ムクリは大層怯えた様子で答え、家へ向かいます。長身の神父、ヘルハウンドはそのあとをついていきます。ですが、ヘルハウンドはふと立ち止まり、ムクリへ尋ねました。

「そうだムクロとやら。1つ良いか?」

「ムクリでごぜぇますヘルハウンドの旦那......何でごぜぇますか?」

長身の神父は平然と言った。

「この村で、は、

 これまでいたか?」


少女の心臓がびくん、と大きく跳ねました。

 

少女は、急いで来た道を戻りました。


「へぇ......何人かいますがねぇ。それがどうかしたんでございますでしょうか。」

「......いや......特に気にしなくても良い。それよりも君の家へ急ぐとしよう。あ〜......フグリ殿。」

「......ムクリでごぜえます。旦那。」







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