第21話 リーゼロッテファン?

 翌朝は早めに目が覚めた。今日はリリーとデートが出来るのでワクワクしている。どんだけ楽しみやねん!って話だが、楽しみなのは確かだ。昨日のオークについては記憶から消してしまおう。


「おはようアル、起きてる?」


 リリーの声がしたので扉を開けて部屋を出た。


「おはようリリー、今日も可愛い格好だね、よく似合ってるよ」


 リリーは薄い黄色のワンピースを着ていた。ディナーデートの時と同じで可愛らしく着飾っている。


「ありがとう。嬉しいわ」


 二人で食堂に行き朝食を頂いた。


「最初は冒険者ギルドで良いの?この格好で行くのは少し恥ずかしけど……」


「可愛いし大丈夫だよ。ギルドで昨日の戦利品を換金してしまおう。」


 なんだか完全に恋人状態だ。そのまま冒険者ギルドに向かった。朝なので混雑しているがリリーがギルド内に入ると視線がリリーに集まり、一斉に静まりかえってしまった。普段とはだいぶ印象が違うからな……誰も動かないのでリリーの手を取りギルマスの部屋へ向かうことにする。こんな視線が集中している場所で換金したくない。リリーが一緒だからだろうが、職員達は勝手に2階へ上ろうとする俺たちを特に気にしていない。マリーズさんにいたってはサムズアップをしている。


 階段を上がりギルマスの部屋の前に着くとノックする。1階からは男共の断末魔のような叫びが聞こえてきた。


「誰だ?それに今の叫びは何だ?」


「叔父さん、リリーよ。アルも一緒にいるわ」


「リリーか、入っていいぞ」


 許可が降りたので扉を開けて中に入った。手は繋いだままだ。ギルマスは俺たちの繋いだ手を見てかなり驚いているようだ。


「色々聞きたい事もあるが、まずは何の用だ?」


「ダンジョンの戦利品を換金したかったのですが、下で換金するとリリーの事もあるので大騒ぎになりそうで……」


「んで、さっさと手を繋いで上がって来たわけか、てことはさっきの叫びはリーゼロッテファン共だな?普段着のリリーなんて見たことないだろうし、お前と手を繋いでる。喜びと悔しさのダブルパンチだろうな」


 そんなのおるんかい!確かにリリーは美少女だしそれに強さもある。モテるのは当たり前だな、格好良いから女性のファンもいるだろ。


「ギルドで周りを気にせず換金作業が出来る場所はありますか?大量のゴブリンとオークの魔石とオーク肉です。」


「個室がある。でもそこでは魔石だけだな、肉は解体場に持っていかないと冷凍施設がないし、運ぶのが面倒だ。」


 さすが冒険者ギルド、肉を冷凍する施設がちゃんとあるんだな。確かになけりゃ大量に持ち込まれた魔物や肉が腐ってしまうか……


「わかりました。個室を使わせて下さい。出来たら話の早いマリーズさんに担当してもらえると嬉しいです。」


「隣の部屋を使っていいぞ、リリーはわかるだろ?マリーズを呼んでくるから部屋で待っていろ。」


「ありがとうごさいます。使わせて貰います。」


「叔父さん、ありがとう。」


 姪にニッコリされてギルマスの顔がデレデレになっている。オッサンのデレデレ顔は誰も見たくないぞ……リリーと隣の部屋に移った。かなり豪華な応接室だ。


「リリーここは?」


「対貴族用の部屋よ、使う機会が少ないけど無いと困る部屋ね。中に魔導具があって話が外に漏れないようになっているわ」


 さすが冒険者ギルド、防諜出来る部屋を確保してある。貴族が関連する依頼となると秘密も多いだろうから設備は必要か……


コン、コン、コン、コン


「マリーズです。入ってもよろしいでしょうか?」


「どうぞ」


 リリーが返事をしてくれた。マリーズさんが入ってくると俺とリリーが手を繋いでないのを確認してあからさまにがっかりした顔をした。


「もう手繋ぎは終わりですか?リーゼロッテさんの女の子らしい姿をもっと見たかったのですが……」


「もう繋がないわよ!あれは急いでたからよ!」


「そうですか?とっても嬉しそうな顔してましたよ?」


 そう言われるとリリーは黙って俯いてしまった。耳まで真っ赤だ。部屋の真ん中に置いてある応接セットのソファーに座った。


「ギルマスにも聞いてると思いますが、ゴブリンとオークの魔石とオーク肉の換金をしたいです。」


「わかりました。ここでは魔石だけです。ゴブリンとオークどちらの魔石が多いですか?」


「オークですね、ゴブリンは少ないです。」


「では、まずこちらの箱にオークの魔石を入れて下さい。」


 テーブルの上に出された箱にオークの魔石を出した。


「これで終わりです」


「はい、437個ですね?」


 え?数えるの早くない?しかも合ってるよ?どうなってるの?混乱しているとリリーに肘でわき腹をつつかれた。


「魔道具よ、横に数字が出てるでしょ?」


「あ、本当だ。中に入れた数が分かるのか」


「ええ、冒険者の方が「大量」って言ったらだいたい100個以上ですから、いちいち数えていると時間がいくらあっても足りないんです。」


 そりゃそうだな、ダンジョンに籠って魔石を集めたら簡単に100個以上なるな。それのカウントなんていくら職員を増やしても時間がかかって仕方がないだろう。こういった魔道具はたくさんあるのだろうか?ちょっと魔道具にも興味が出てきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る