その歪さは美しいフラクタルを描き、根源的な恐怖を彩る。

難易度の高いレビューをする。その、自覚と覚悟は持ってきた。


 本作品は三つの異なるシチュエーションと、三名の主人公(わたし)の視点から構成されるオムニバスである。

[わたし]は現在-過去-未来を、或いは物語を変則的に行き来しながら、歪で曖昧な不安に囚われて行く。
 この可逆的な変遷には恐怖と安堵が、非情と温情が、虚と実が綾を成し、その先に衝撃の『キマイラ』が潜んでいる事は想像に難くない。只、この作品は[わたし]に 現実的な恐怖 よりも 根源的な恐怖 を齎すだろう。
 理屈で上手く言い表せない不安と恐怖は読み手を魅了して離さず、その歪さは自然界の黄金比にも似て、美しいフラクタルを描く。その様に[わたし]は深い感動と尊敬を覚えるのだ。


但し(わたし)が其々体験する三つの物語は、かなり怖い。


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