第7話 異能を理解せよ

「お前ら派手にやりやがったな」


現在僕らは北原さんに呼び出されていた。


「別にいいだろ、さっさと報酬よこせや」


「はぁ、事務処理やるの俺なんだからなぁ!」


そういいながら北原さんは二枚のカードを僕とエンマ君にわけた。


「え…てっきり怒られるものだと」


「んなめんどくさいことしないよ、死ななければ俺は怒らんし、ジャッジの始末は大切だからな」


「あぁそれと、ツヅムに渡したのは新品だ、それなくすとここらで生活できねぇから気を付けろよ」


北原さんが軽く脅してきたので、大事に財布へしまおうと僕は決意した。


そんな僕が決意を固めていると、エンマ君は自分に配られたカードを見つめながらぼやく。


「チッ、今回の報酬しけてやがる」


僕も何が書いてあるのか気になってみてみると、プラスチック製のような真っ黒のカードに数字が書いてあった。


「それは報酬だ、端的に言えば金な。そこから生活費などを切り盛りしていくんだ。なくなったらまたジャッジを倒してこい。あんまデカいのとか亜種とか倒すなよ?事務処理がだるい」


へーそんな感じなのか…

僕のカードに書かれた金額は千五百円…って違う!


「1万5千円ッ⁈こ、こここれ桁あってます⁈」


「あってるよ、何なら今回は少ないくらいだな」


「だ、だって僕らジャッジを倒しただけですよ?」


「そのジャッジを倒せる奴がどれぐらいいるんだって話よ、戦力は囲うに限るってわけだ。そんなことよりお前ら1時半から練習場に集合な、ちゃんと来いよ~」


そういった北原さんはご飯を食べに何処かへ行ってしまった。


_______________


昼飯を済ませた僕は、北原さんに呼ばれた通り練習場へやってきた。

とてつもなく広い練習場に集められたのは、チームを組む予定になっているメンバーである。


よく見ると遠くにも似たような団体が存在したので、育成機関に入った学生は僕らだけではないらしい。


「気になるか?お前らは第四班、全部で六班まである」


ざっと30人、結構な人数である。


「まぁほとんど会わねぇだろうが、一応仲間がいるって認識でいいぞ」


北原さんが説明していると、白髪の少女がイラついたように言う


「雑談はいいからさっさと要件を済ませなさい」


「まぁそう怒んなよ、自己紹介は済ませたのか?」


「まだよ」


そんなわけで自己紹介タイムが始まる。


白髪の子は冬柄 雪ふゆつか ゆき、異能は氷を生み出し操ることができる。エンマ君同様物質に干渉するタイプらしい


プラチナブロンドの髪が特徴的な女の子は子狐 稲成こぎつね いなり、異能は【白狐】回復らかバフ、攻撃も一応できる万能な異能であり、成長型とのこと。


そして最後は緑頭の巨人男子、波動 硬次はどう こうじ異能は強化系で全身を金剛のように固くすることがで、異能を発動すると全身が黒くテカる。


以上が前回知らずに終わった三人組の名前と異能であった。


「よし、自己紹介は終わったな、それじゃあ特訓的なのを始めるぞ。お前ら五人に適した先生を呼んである、1対1でしっかり教えてやるから気合入れろ」


_______________


「それで…僕の担当は北原さんなんですか?」


「そうだよ、悪かったな俺で」


「いや、そんなことはないんですけど…」


「取り合えずお前の課題は格闘技の習得と、異能の全身強化だ」


「それなんですけど、一部を強化しないで全身を強化するのはなぜなんですか?」


そう聞いた俺に北原さんははっきりと答えてくれた。


「お前、そもそもなんで七倍以上が出せない」


「えっと、それ以上を出そうとすると体が壊れてしまうのと、ヒドイ頭痛が起きるからですね」


「理由はわかるか?」


「い、いえ」


「ソレは異能のキャパオーバーが引き起こすものだ、んでこの原因が異能の使い過ぎで脳が処理しきれなくなって起こる」


北原さんは指を僕の頭に当てると、トンっとついてきた


「お前の異能を最大限活用するには、お前の脳みそを強化して戦うに限る」


「それだったら脳と攻撃する場所を強化すれば…」


「バカやろう、パンチ一つに限っても足の踏ん張り、腰のひねり、肩の引きから何まで体全身を使うんだ。一部分の強化なんて、高速で強化倍率を変えられるようになってから許される技なんだよ!」


「す、すみません」


その後もみっちりなぜそれらをやらねばいけないのかを教わった。多分僕より僕の異能に詳しいんじゃなかろうか…


兎に角僕の異能は、強化した部位を永続的に強化すること。意識の持ちようとその時にどう使ったかによって、永続的な強化の幅は変わるらしい。


また、特にどこを意識するかでも強化の傾向は変わるらしく、例えば脳を強化しようとすれば、処理能力や反応速度、瞬発力が上がったりする。ただし、その強化する部位が複雑になればなるほど倍率を上げるのが難しく、永続強化も残りにくくなる。


そのため全身を強化するのが最も練習になり、最も戦闘向きであるらしい。


「なんか僕以上にくわしい…」


「んなもん俺の異能に決まってんだろ、俺の異能!」


「な、なんですかその異能って」


「そうか?聞きたいかぁ…教えてやろう!俺異能は【解析分解】ってのよ」


「ネームドなんですね!」


「当たり前よ、俺の異能は見た対象を解析できる。さらに一度触った物はなんでも分解できる」


「分解?」


俺が分解に疑問符を浮かべると、北原さんは地面を靴底で叩いた


「地面見とけ」


北原さんが地面を数秒見た瞬間、半径1mの円ほどの地面がバラバラに分解された。

分解された地面は砂より細かい粒子レベルまでボロボロである。


「す、すごいッ!」


「まぁ数秒眺めねきゃならんのと、一度そのものに触れないといけねぇから、お前みたいに異能を自分自身に使うタイプは分解できねぇ」


「それでも十分凄いですよ!」


「まぁ、俺のこたぁいいんだよ、それよりまずお前は全身強化全力でかけながら格闘技の練習だ」


「は、はい!」


そうして僕の特訓が幕を開けたのだった。

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