第2話 学生デビュー

学校名 オースティン魔法学校

 6年制 


 クラスは5つ 

 魔法特化 アルバス

 剣術、魔法 ソード

 後方支援 サーバント

 参謀、戦略 スタッツ

 研究、開発 デフモント


 あくまで個々の適性が優先される為、希望は通り辛い。とは言っても、各カリキュラムに分かれるのは3年生からなので、1〜2年の間は各クラス学ぶ事は変わらない。しかしアルバス、ソードには優秀な生徒や上位星つきが集まりやすい傾向にある。


 一部寮制 寮に強制というわけではなく、遠方からの入学や、金銭面的観点などからあくまで希望。


 国内最大規模の魔法学校。

 その為、ヘガドル国に9人しかいない7つ星魔法使いのうち4人はオースティンの卒業生。


 総生徒数2000人超え



 ――というわけである。

 ありがとう天の声よ。


 ていうか、入学準備期間短すぎだろ……

 アレフ准将と会ってからまだ1週間とかしか経ってないような気がするけど。

 あの後も何か色々色々ほんっと色々言われたが、要約すると


 1. 正体がバレてはいけない

 2. 魔素量を隠す為に在学中は抑魔結晶を付ける

 3. 協調性を身につけ、しっかりと学ぶこと


 と言ったところだろう。

 勿論気をつけた上で楽しませていただきますとも!

 そんな事を考えながら校門をくぐる。


 初めて見るけど。すごくでかい。

 学校と呼ぶより城と呼んだ方がしっくりくる様な見た目で、4つの塔が連結し一つの建物となっている。


 階段を登り緊張しながら恐る恐る中に入る。

 中の様子を見て少しびっくり。


「中は意外と普通なんだな」


 思わず声が漏れる。

 始業前から来てる為廊下は静寂に包まれている。


 すると


「あんた、こんな時間に何してんのよ」


 声の方に視線をやると、白に近い金髪の美少女が不思議そうにこちらを見ていた。


「ああ、いや今日から編入することになっていて説明を受けるために早めに来たんだ」

「ふーん。まっいいわ。あんたそんなとこに突っ立ってたら危ないわよ」

「ん? 危ないって……」


 その瞬間


 ガタガタというものすごい音と共にあたりの空気が震える。と、同時に一つの教室のドアが吹っ飛び中から初級魔獣オーク がこちらに突進してくる。

 後ろから


「下がって」


 と声が聞こえたが、美少女に守られる男がどこにいる!流石にそんなに情けなくはない。

 俺はすぐに中指を軽く曲げ

 常駐魔法である「内旋蕉風」を放つ

 初級魔獣くらいだと、魔力感知無効や内部干渉無効の付加魔法 も張っていないし簡単に体内部の風を使用できる。まあ本来は人形や風船、缶など魔素が備わってないものを破裂させる魔法なのだが、俺クラスになると魔獣にだってお茶の子さいさいだ。


 パチューン


 高い音で破裂

 血が飛び散らない様に物流操作の魔法で1箇所に血と破片を集める。


 すると、魔獣が出てきた部屋から白いシャツに長い髪を束ねた年上ぽい女性が慌てて出てきた。


「アリアー!! ごめんねーーまた失敗しちゃったー」


 おそらくさっきの美少女に話しかけているのだろう。

 後ろを振り返るとその美少女は目を丸くしてこちらを見ていた。


 ん?


 走ってきた女性も立ち止まり。不思議そうに状況を伺う。


「ん? アリアどうしたの? てゆーか君は?」

「あー俺は、今日から編入の――」

「ちょっとあんたなんなのよ!!」


 女性と俺は驚き2人で美少女を見つめる


「え? なんなのよって?」

「私はそこのシェリー先生から頼まれて、失敗してもすぐ対処できる様にここに立ってたの!」


 あーそういう……


「あんたの魔法、ほとんど魔素と魔力に乱れがなかった。いいえ、それ以前に初級とはいえ、属性魔法を使わず一瞬って、あんたいったい何者なのよ!」


 あーー完全にやらかした

 そう。俺はいきなりアレフ准将との約束1を破りかねない事をしてしまった。

 抑魔結晶を付けてるから安心しきっていた。


 シェリー先生も慌てた様子で


「ええ! アリアがやったわけじゃないの!?」


 と聞く。

 ふぅ。大丈夫落ち着こう。

 冷や汗をダラダラ流しながら俺は


「まあ、たまたま当たり所が良かっただけですよ。ははは」


 と返したが、すぐにアリアに突っ込まれる


「さっきの魔法に当たり所も何もないと思うけど?」


 やばい完全に詰んだ。助けてアレフ准将

 なんて事を考えていると反対側の廊下から


「こらーーー! シェリーお前また学校で召喚魔法を展開しただろー」


 野太い男の声が聞こえ


「じ、授業の準備のために必要だったんですー」と言いながらシェリー先生は男が来た方向とは逆に逃げた。


 てゆーか魔獣を召喚して失敗ってなんなんだよ…


 取り残された俺とアリアの間に少しの沈黙が走る。俺は耐えきれず


「じ、じゃあ俺は校長室に用事があるから」

「待ちなさいよ」

「ええ、割と急ぎなんだけど」

「あんた星の数は?」

「3つ星です!」

「な、嘘つくんじゃないわよ!!」


 もうそのまま逃げた。逃げるが勝ちだ。


 闇雲に走ったが、意外と簡単に見つけた

 表札には校長室 と記されている。

 短い息を吐き入室する。


「本日入学予定のイヴ・レッドパールです!本日からお世話になります!」


 奥から女性の声で返答が来る。


「やっときたか」


 ん?この声って

 俺は奥に進み声の主を探す。すると。


「え」

「久しぶり。いや1週間ぶりかな」

 まさかの目の前にはアレフ准将がいた

「え、アレフ准将閣下……という事は」

「そう。私がオースティン魔法学校の校長アレフ・プレイスだ」


 えええ、だから訳のわからない編入方法で通ったのかよ!だからあえてオースティンだったのかよーー


 と思ったが、とりあえず会話を進める。


「き、聞いてなかったんですが」

「言ってないからな」


 アレフ准将は勝ち誇った様な顔でこちらを見ていた。

 続けて


「また突然逃げられたんじゃ、私の顔も立たないだろう?」

「すごい根に持ってるじゃないですか…」

「当たり前だろう?」


 それもそうか……

 まあ、何とかなるか。

 諦めた俺は淡々と編入説明を受けた。




 ――「っと。ここまでが、編入に必要な資料だ」


 30分ほど経ったかな、何とか資料の説明や必要情報の記入は終わった様だ。 


「君のクラスはアルバスだ。異論は?」

「ほぼ決定じゃないですか…まあどこでも大丈夫ですけど」

「ところでイブ。君の星の数は3つで良かったのか?」

「え、ええ。さっき偶然あった生徒にそう言ってしまいましたから」

「ん? 偶然あった生徒に星を聞かれたのか?」

「まあ、はい。そうですね」


 アレフ校長は少し考えた後に


「そういえばさっき、魔獣感知ブザーが鳴ったが、すぐに消えた…この学校の結界魔法的に誤作動はない。まさか」


 やばい。校長殿の顔が鬼のようになってきた。ここは素直に


「申し訳ございません。シェリー先生が授業の練習の為に魔獣を召喚したみたいなのですが、制御が外れてしまい暴走していました。後ろに生徒もいたため、逃げるわけにもいかず……」


 よしよし。嘘は言ってないぞ。シェリー先生はこの鬼に後で怒られるだろう。しかしやってしまった事だ。罪は償わないと。

 自分のことを棚に上げ、そんなことを思う。

 アレフ校長はこちらを見つめ口を開く。


「言いたい事は多々あるが、まあ事情があったなら今回は目を瞑ろう。しかし!君はこの瞬間から3つ星だ!それは肝に銘じて行動しなさい。」

「はい!!失礼致します」


 俺は逃げる様に校長室を出た。


 校長室を出ると、すぐに声をかけられた。


「貴方がイブ・レッドパール君だったの?」


 振り返ると朝ぶりのシェリー先生がいた。


「どーも、朝ぶりですね」

「軽いなー…」


 シェリー先生は苦笑いを浮かべる


「シェリー先生も、校長先生から呼び出し?」

「まあ、それは後ほどね……」

「ん? じゃあ何でここに?」

「私が貴方の担任、シェリー・アルクルネです。」


 ほへーなるほど。まあ多少とはいえ、顔見知りが担任とはツイてる!


 雑談を交わしながら教室の前に着く。

 ここが俺の教室

 軍学校なんて、あんなの学校と呼んでいいわけがない様な極悪非道。もう地獄みたいなもんだよほんと。


「イブ君準備はいい?」

「ええ。勿論!」


 シェリー先生が扉を開け、中へと進む。

 俺が足を踏み入れると、教室は分かりやすいくらいにざわついていた。

 昔行った演奏会の席のような教室で、視線がこちらに集まる。


 俺は先生や周りにバレないように軽い魔法を自分自身にかける。地獄耳だ。

 離れている席まで届くくらいの範囲に設定


「あの子可愛くない?」

「馬鹿。制服が男だろ」

「すっごい美形」

「こんな時期に編入生?」


 ふむふむ。悪くはない第一印象なのではないか。女ではないけどね。決して。


「あいつ……朝の……」


 ん?その言葉の方に顔をずらす

 お互いにげっという顔をした。

 あの色白な肌に金髪の美少女間違いない。朝遭遇したアリアだ。


 シェリー先生が意気揚々と俺の紹介をしてくれていたが完全に上の空

 初日から大丈夫かよ……


 俺は震えた声で


「よろしくお願いしまあす」


 というと、皆んな明るく返してくれた。


 絶対皆んな今の俺より元気だよ。

 輝け若者よ……


 なんて柄にもないことを思いながら席に着く。兎にも角にもここから学校生活が始まるのだ。

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