第12話 『私の使命』side夜空

 ◇◇◇  ─場所?─ 


 ここは、何処? 謎の空間に飛ばされた私は状況を把握するため辺りを見渡す。

 真っ白な部屋……。ガラスで作られたと思われる円の字に曲がっている机に、巨大なテレビ、特大の窓が二つある。


(なんだか……魔法省の会議室みたい……)


 私は綺麗に整頓されていた椅子に腰を下ろし、一息つく。


(この空間がもう一人の私が作り出した可能性も残ってるもんね! うんうん! 間違っても疲れちゃったわけじゃあないよ!!)


 もし彼女がこの空間を作り出したのだとすると、遅かれ早かれ姿を見せるはず。


 異空間にすっかり慣れてしまった私は、この部屋で待機することにした。


 しばらくすると、足音と共に私がな声が聞こえるーー。


「……なんで僕、女の子になってるのかな? ねぇ? どうして?」


「優。そんなことより、姉さんが先に待っているはずだ。急ごう」


「……そうだね。早く会いたいし」

  

 ーーのだが、別の誰かの声も聞こえる。


「……アタシ以外の女にデレデレして……!!」


「ん。私たちを放置するのは死活問題。マリア、ちゅーしよ」


「ごめん。ちょっと何言ってるかわからない」


 女の子三人、男の子一人、計四人の集団がこちらに向かってくる音がする。


(……へぇー。他の女の子がゾロゾロと……)


 私の酷い嫉妬心がこれでもかと思うほど現れてくる。……私ってこんなに独占欲強かったんだ……。


 くだらないことを考えていると、壁だと思っていた白壁がゆっくりと開き、中から四人の美男美女が姿を現す。


 白で統一されたドレスに白髪ポニーテル。

狐のお面を被る一人の少女、『マリア・アール』こと


 黄色がチャームポイントのドレスを見に纏い、つり目で小顔な魔法少女。胸は……うん! ノーコメント! それにしてもこの子、予想だけど『断罪の魔女』だと思う。

 

 大きな胸が強調されたドレス、無表情だけどどこか優しい雰囲気を作りこんでいる

 魔法少女……いや、『操縦の魔女』。


 そして、最後の男の子が最高司令官……。ん? 最高司令官? えっ?


 ……と、ともかくこの部屋に入ってきたということは、私の推測通り会議室なのかな?

 

「姉さん! 待たせたな」


 満面の笑顔で私を見る最高司令官。


(えっ……気持ち悪)


 いつもの堅苦しい姿からのギャップが私にとって、とても気持ち悪かったのだ。


 最高司令官の姿にドン引きしていると、一人の少女が私の目の前まで駆け寄ってきた。


「ごめん。待たせちゃって……この埋め合わせは必ずするから」


 手を合わせて頭を下げてくる愛しの優ちゃん。やばいよみんな! お面つけてるけど可愛いよ!!


「ふん! そんな奴、さっさと別れてアタシと付き合いなさい」


 断罪の魔女さん、貴方はちょっと黙って欲しい。


「ん、その通り。なんならハーレムでも作る?」


 ……えっ? 操縦の魔女さん。貴方もしかして天才ですか?


「ええ……?」

 

 表情は見えないけど、おそらく引きつった笑みを浮かべているであろう優ちゃん。


「……え、えっと……皆んな! ここにきた目的忘れているよ! 僕たちはある意味初対面。ちゃんと名前とかは確認したいーー「

……ふっ! 優が姉さんと別れる? ははっ! 冗談も胸だけにしろ」……えっ? ちょっ!」


「アンタには言われたくないわよ!! このイキリブラメガネ!!」


「なっ……!? なんだと!?」


 せっかく優ちゃんが話を進めようとしたのに瞬く間に言い合いを始める二人。 


 優ちゃんは窓に視線を向け「……あぁ〜、いい景色だなぁ〜」などと言葉をこぼしている。


 これは長くなりそうだと、私も優ちゃんと同じように、話し終わるまで現実逃避をしようとしていたのだがーー


「……貴方たち、少し黙ってくれないかしら? 私の優が困っているわ」

 

 ーーその場を凍り尽くすような冷たい一言が、私の口から自然と吐き出される。

 

「……すまん」


「……まぁ? マリアの為だから黙ってあげる!」


 私の威圧感に負けた二人は大人しく座席に座った。


 (……今の口調。私のものとはまるで違う。……これは本当に、同じなの?)


 もどかしい気持ちを抱えながら、魔法少女達の話し合いが今まさに、始まろうとしていた。


◆◆◆


 一体誰がこのタイトルが複数続くと思ったのだろうか……。

  

 次回、第13話 『私の使命②』side夜空 です。



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