第26話 ヤンヤン、レジスタンスの手伝いをする!

「アヤンガだ。戦士ヤンヤン。君の参加を歓迎する」


「えへへ、ヤンヤンです。ホホエミ王国から来ました」


 あの精悍な男性はアヤンガという人だった。

 元軍人の私をレジスタンスに受け入れてくれるなんて、心の広い人だなあー。


 そう!

 私は好みのタイプの男子がいたので、レジスタンスになりますぅ、と告げて見習いにしてもらったのだ!

 まあ夕食までには船に帰ればいいでしょ。


「アヤンガ正気!? この女、軍人なんでしょう!? スパイに決まってる! 環太平洋連合はバトーキン自治区を助けてくれなかったじゃない!」


 あっ!!

 アヤンガに詰め寄る女が!

 お、女~!

 彼は私の旦那様になってくれるかも知れない人だぞ!


「連合が純血連邦に敗北して、自治区にはコサック軍が来た。それでどうなったか覚えているか? 歓迎した者たちはみんな殺された。俺たちを管理するものが、華国からコサックに変わっただけだった」


「そうだけど……」


「だから俺たちはレジスタンスになった。多くの仲間たちが倒れた! だが俺たちは戦い続けている! 今! この国は華国からもコサックからも解放された! 俺たちは勝利を掴もうとしているんだ!!」


 あっつー!!

 いいですねー。

 若さを感じます!!


 ところで気になったことがあるんですが。

 アヤンガに聞いてみる。


「あのう……コサック軍と戦ってたそうですけど」


「ああ」


「MCとかはどこに……? あ、無ければMWでもいいんですけど」


「俺たちにはよく言うことを聞く、恐れを知らない馬がある」


「はい!?」


「こいつがいれば、どんな相手とでも戦えるさ!」


 馬、首を撫でられてブルルーっ誇らしげにしており、アヤンガをペロペロ舐めたりしている。

 かーわいい。


 だが!


 馬!?

 ま、まさか、陸上戦力は馬と小銃だけなのでは……。


 ────。


 そうでした!!

 うわーっ、こんなん勝てるわけないじゃない。

 私がたまたまコサック群を壊滅させててよかったねえ……。


「アヤンガ! なんかこの女変な笑顔を浮かべてる」


「人の顔のことを言ってはいけないぞ! さあヤンヤン、案内しよう。庁舎からコサックが去った! 売国奴連中は仲間が粛清している。俺たちは凱旋するんだ。自治区を解放した英雄としてな!」


「ははあ、なるほどー」


 男の人はそれくらい猛々しくて自信満々だといいよねえ。

 私はニコニコしながら、MWを動かして彼らの後についていった。


 逃げ出したコサック軍は、時代遅れな自動車なんかを使ってたらしい。

 FM弾が必中する乗り物を戦場で使うの自殺行為でしょ……。


 ちなみに馬はFM弾が当たりづらいので、とても正しい選択と言えるのだ……。


「ねえあんた! 軍用のMWなんか乗って調子乗ってんじゃないわよ! 華国の奴らみたいな顔して!」


「父が華僑なので」


「お前!」


「母もろとも虎に食べられましたが……」


「お前ぇ……」


 いけ好かない女がトーンダウンしたぞ。

 そうして、庁舎が見えてきた。

 ははあ、あのバラック建造物が庁舎……。


 裏に豪華な建物があって、あちこちから煙が上がったり略奪されてますが。

 えっ、あれがコサック人総督の家? 元々華国の総督の家だった? ははあ……。


 私は思わず微笑んでしまった。

 愛憎渦巻いてますねえ。


「アヤンガ、この後戦う相手とかいるの? いないなら結婚をするしか無いと思う……!!」


 私は純粋な疑問を口にした。

 私ができることは、戦うことか結婚することだけだからね。

 敵がいないなら結婚するしか無い。今すぐ結婚しよう。


「ま、待ってくれ。突然の猛烈なプロポーズだが今はその時じゃない」


 しまった、口から出てたか……。

 やはり私のこの溢れ出る情熱は押し止められないのだなあ。


「アヤンガに手を出すな!」


「なんだこの女」


 私と毎回邪魔してくる女の間で火花が散る。


「ドルマーは俺の幼馴染だ。妹のように思っている」


 ドルマーと言う名前らしい女が、ガーンとショックを受けた顔をした。

 ははははは、妹ですか。


「今はヤンヤンもいて、妹が二人になったようだ。俺は嬉しい」


 ガーン!


「なんで二人とも同じ顔をしてるんだ」


 こ、この男ー。

 だが、私は直接的に好意をぶつけたので意識せずにはいられまい。

 ふふふ、隙を見せたら結婚してやる。


「ヤンヤン。俺たちの敵は、戻ってくる華国の連中だ。国をコサックに支配されて、国内を散り散りになって逃げ回った。国民を盾にしてだ。そいつらが今更、正しい支配者だという顔をして戻ってくる。絶対にそんな恥知らずをやってこさせるわけにはいかない!」


「それはそうねえ」


「分かってくれるか! 華国の連中は、これからMCを駆って来るだろう。あいつらはコサックに使わなかった戦力を、俺たちや自国の人間に向ける!」


 怒ってらっしゃる。

 なるほどなあ……。

 つまり、バトーキン自治区はこれから内戦になると。


 せっかく支配者が去ったのに、新しいダメな支配者が来ると。

 世界から争いは無くならないのだ。


「力を貸してくれ、ヤンヤン」


「う、うん、まあ」


 一応連合所属の国だからね……!

 私も伍長になって、下士官としての自覚が出てきたところだ。


 ここは穏便に済ませることはできないものかなあ……。

 そんな事を考えて、その日は夕飯を食べに帰ったのだった。


 翌朝。

 なんか外が騒がしい。


 なんだなんだ。

 シャワーを浴びてから外に飛び出したら、たくさんのMCが歩いていくところだった。


「わーっ、なんだこれ」


「おうヤンヤン、おはよう。こいつは朝飯のビーフンパンだ」


「シェフ~! 食べやすい朝ごはんありがとう」


「シェフじゃねえ。あいつらはな、華国の連中だ。これから自治区の王としてまた凱旋するつもりだろうさ」


「ははあ」


「レジスタンスを皆殺しにしてやるって息巻いてたぜ」


「な、なんだってー!」


 それはいけない。

 アヤンガを守護らねばならないのだ!


 どっちが皆殺しになるか分からせてやるう!


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