第4話 空を飛ぶアレクシス嬢
「まあ、かわいいハネツキペンギンさん。ごきげんよう」
アレクシスはお嬢様らしく鳥に挨拶している。なおその鳥は絶賛羽ばたき中。八羽ほどで三角形の陣を作り海を越えようとしている。
彼女は檻に閉じ込められたまま厚い雲の上で鳥に並んで空を飛んでいた。
「うーん、今の季節のあの星座。そして渡り鳥であるハネツキペンギンと同じ方向に飛んでいるということは南に向かっているに間違いありませんわね。問題は今現在どこの上空にいるか。落下地点に人や家、畑があってはいけませんわ」
目下は運悪く途切れることのない雲海。
「うーん、どうしましょう」
頭に指を突き立てくるくるとまわしながら考えた結果、
「そうですわ! この辺にセーラーンーム山があるはずですわ!」
セーラーンーム山とは南部最高峰の山。頂上が雲の上よりも突き出ている可能性がある。
山頂には巨大な丸岩があり、良い目印となっている。丸岩はもとより自然に山頂にあるわけではなく、何者かの手で運ばれた。かつての異民族の王の墓とされている。
「あ、ありましたわ!」
九時の方向にセーラーンーム山を発見。
「って、もう通り過ぎようとしている!? いけませんわ、早く降りないと海に落ちてしまいますわ!」
アレクシスは足裏全体で鉄檻を踏んだ。
グワイーン!!
鉄が軋ませて落下を促す。
突然の轟音に鳥たちの列がにわかに乱れたがすぐに冷静さを取り戻す。
「お騒がせしましたわ。それではハネツキペンギンさん、良い旅を~」
瀟洒な白ハンカチを振ってひと時の旅の友に別れを告げた。
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