先生の庭

文乃綴

エピグラフ

「優雅の墓というものは見すぼらしいもんだね」と柏木が言った。

「政治的権力や金力は立派な墓を残す。堂々たる墓をね。奴らは生前さっぱり想像力を持っていなかったから、墓もおのずから、想像力の余地のないような奴が建っちまうんだ。しかし優雅のほうは、自他の想像力だけによって生きていたから、墓もこんな、想像力を働かすより仕方のないものが残っちまうんだ。この方が俺はみじめだと思うね。死後も人の想像力に物乞いをしつづけなくちゃならんのだからな」


――三島由紀夫『金閣寺』

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