第二章 フリーバッド編

第4話 魔石 ランセル

魔石 ランセル


魔界でも珍しい鉱石で、強い魔力を帯びておりランセル製の剣は魔力の高い実力者にも対抗できるほどの威力を誇り、高級品となっており、中々出回らないのである


武力として重宝されるランセルを狙う者は戦争が起きている今、溢れている


そんなランセルが一つ、とある少女の手にあった


「どうしても、ランセルを渡す気はないのかしら?


それはネメル様が苦労して手に入れられた宝物なの...命ごと奪うわよ?」


紫髪のロングヘア、背中に大鎌を背負ったこの大人びた少女の名は「シェル」


ネメル▪シャドレイの部下であり、ランセルを盗んだ少女と接触していた


「何か理由があるのか? 今なら、理由を聞いてやれるぞ?そして返してもらおう」


この平和主義な考え方の全身黒ローブで身を包んだのは「ガイル」


シェルと同じくランセルを取り戻しに来ていた



ランセルを盗んだ少女


シェルとガイルに追い付かれおどおどし足も震えている


ツインテールで幼児体型


上下共に動きやすい黒い服に身を包み、グレーのマントを身につけている


彼女の名は...


「返さない! これは私の怪盗デビューの戦果


この私、怪盗 パールの物となった!」


「ふーん、じゃ、殺すね?」


「うっ...来るなら来い!」


言葉とは裏腹にパールは逃げ出し背中をがら空きにしてしまった


「背後ががら空きよ? 横突撃おうとつげき!」


シェルは大鎌を持つと大鎌を投げると大鎌の柄に捕まり鎌と共にパールの背後にとんできた


「えっ...」


パールは振り返ると、死を覚悟した


「やめといた方が良いと思うよ、か弱い逃げる者...たとえ盗人だろうが僕は助けるよ」


シェルの大鎌はパールの背後に現れたリャクの刺々とげとげしい水色の槍によって止められた


「リャク様じゃない、何故ここに? どういうつもり?」


「僕が頼んだんだよ、シェル」


「ネメル様!?」



武器を交えるリャクとシェルの元にネメルがゆっくりと近づいて来た


「リャク、ありがとう」


「お前のとこのシェルはかなり強いから、あまり頼まないでくれよな?」


「ご謙遜けんそんを」


「さぁ、なんで盗んだのか教えてくれるかな?」


ネメルの背後に五メートルはある大きな黒いバラが咲くとネメルの背中に翼のようにバラのつたが生える


「奇妙な守り」


するとリャクはうねうねした鏡のようなものをパールの目の前に出現させた


「ネメル、この子を殺す気か?」


「ランセルにはそれほどの価値があるんだよ」


「...めんどくさいけどやるしかないのか」


「リャク、僕は君を気に入ってるんだ」


「だから?」


「殺したくない」


「なら、喧嘩だな」


「なんで庇うの? 他人のために命を張るような性格じゃないでしょ?」


「...ランセルが欲しいからと言ったら?」


「シェル、ガイル、リャクは僕が殺る


二人であの少女を殺ってくれる?」


「はっ!!」


二人は少女めがけて走り、リャクはそれを止めない


「へぇ、止めないの? 恐らくあの少女は戦える力を持ってないよ?」


「まぁ、見とけ」


「じゃぁ、死になさい!」


「すまないな、ネメル様の命令は俺の意志だ」


シェルとガイルが少女を殺そうとした時だった...


死神しにがみ審判しんぱん


シェルの鎌が全く同じ鎌で止められた


「お前は、リャク様のストーカー...」


「私をストーカー呼ばわりする貴女は前々から消したかったんです


そして、貴女ごときリャク様ではなく私で十分です」


「ふん、私も今貴女を消したくなったとこよ」


「ラミ」


「へぇ、リャクの切り札って訳だ」


「まぁね、あともう一人いるよ?」


「ラミ以外にはいないはずだけど?」



ラミ様が大好き


リャク様に尽くすその忠誠心と周りに認められる強さ


私を嫌がりながらも頼ってくれる


私はラミ様のためなら何でもしたい、そしてラミ様はそれを知って雑用や護衛などを任せてくれる


ネメル様には育ててもらった恩がある


私は元々、ただの魔界の猫だったのだ


黒猫として生きていた私は、天然のランセルを噛み砕き飲み込んだことでとんでもない量の魔力を取り込み、のたうち回った


そして、気付いたらネメル様の館の部屋のベッドで寝ていて、身体を得ていた


私は魔力で猫の能力を強力にして使えたりする


しかし私は決断した、ネメル様には悪いしキレられると思うが、それでもラミ様に仕える


「つまり、ガイル! 私が貴方を倒す」


「へぇ、キャッツ、お前裏切るんだな?」


「そうだよ! 私はラミ様の部下キャッツ!」


ガイルの蹴りをキャッツが二メートル程に伸びた鋭く細い頑丈な右手の五本の爪が止めていた



ネメルは静かな怒りで震えていた


「君たち三人は謝っても許さないよ?」


「僕の部下が一人増えたね、お前を倒したらお祝いするよ」


「よし、殺し合おうか」


「リャク...様...」


離れたところから眺めていたパールはそう言って、リャクをじっと見つめていた



シェル対ラミ


「この大鎌を使いこなしてる私の方が有利よ?」


「私はどんな武器も使いこなせる、貴女の敗因は私をなめてかかったことですよ」


死神しにがみ審判しんぱん


ラミの素早い鎌の斬擊がシェルをおそ


「はぁっ!! からのてりゃー!」


シェルは鎌を回転させてラミの攻撃を弾くとそのままラミに鎌を一振りする


「っ、回転鎌かいてんがま


ラミは鎌で一振りを防ぐと空中で前転した勢いのまま回る鎌となってシェルに突撃する


「これだから天才は嫌いよ!」


シェルは鎌を正面で回転させてラミの回転の勢いを殺し、後退した


「やはり、一筋縄ではいきませんね...」


「ラミ...やはり強いわね」


両者、一歩も引かぬ戦いを繰り広げる...


「シェル、貴女のお得意は魔力を纏わせた鎌を使った技の応酬」


「それがどうかしたかしら?」


「私はあえて鎌を捨てる」


ラミは鎌を捨てると手に刺々しい水色の槍を手に持つ


「それは...リャク様の槍...」


「の劣化版ですが、貴女を倒すには十分!」


「なめないで欲しいわ? 死神の審判しにがみのしんぱん!」


「水の加護」


「!?」


シェルの鎌の一撃がラミに迫ったがラミの槍の一振りから水の盾が出来るとシェルの一撃を防いだ


「その槍ってそんな能力が!? リャク様が使ってるところを見たことがなかった...」


「そりゃ、あの槍の使用自体は強者にしか見せませんから


そして私は、昔、リャク様と戦う機会があり...」


「所詮借り物! 大技 死神の裁き!!」


シェルが鎌を思い切り正面に振りきるとラミに向かって魔力を纏った巨大な斬擊がかなりのスピードで迫ってきた


「...」


ラミは槍を正面に横向きに持つとボール投げのフォームをとり、槍をシェルの元にかなりのスピードで飛ばした


「シュンッ!」


ラミの投げた槍はシェルの斬擊を衝撃同士で相殺した


「私の...大技が...でもまだ...」


シェルが言い放つ瞬間だった


「まだ? もう終わりですよ?」


「えっ...」


ラミはシェルの背後にいた


魔鎖爆まさばく


シェルの身体に魔力で作った鎖を巻き付けた


「いやっ、」


次の瞬間、ラミはシェルからアクロバティックに距離を取る


鎖がまぶしく光ると大爆発を起こした


「私は槍を見たことがある強者、貴女は出されたことのない弱者


お互いリャク様と戦った者同士、差があるんですよ」


勝者 ラミ


そう、ラミは相殺した直後に爆煙に混じってシェルの背後に超スピードで走って回り勝ったのだ


つまり、大技を破り動揺された隙をついたということだ


ラミ、彼女の強さはまだまだ計り知れない...











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