第3話 道中のハプニング

なぁ、誰か助けて欲しい...


「本当に大丈夫ですか!? 万が一お怪我をされたのならチュラ様といえど相討ちの覚悟で殺りに行きますが!」


「だから大丈夫だよ? だから、もう落ち着いて?」


このやり取りが、かれこれ五分は続いている


「本当ですね?」


「あぁ、これからはラミをもっと頼るから...ね?」


「!? 頼ってくださるのですね! リャク様のご命令ならどんなご命令でも構わないので任せてください!」


頼もしいが、殺しとか普通にやりそうだから殺し系の命令はやめとこう


「でも、命令以上のことはしないこと...分かった?」


「了解しました! 元より、私はリャク様の命令は絶対なのでそれを破ることはしません!」


「それで良し、とりあえずそろそろベッドから起きても良いかな?」


そう、心配からだろうかラミは僕をベッドから起きないように言って五分以上、暴走しかけていたのだ...



今は朝食の時間帯


チュラとの戦闘から一晩中寝たきりだったらしくラミが同じ部屋の床に布団をいて寝ていたらしい


ほんと、僕にとっては忠実で頼もしい完璧な部下であり家族のような存在だよ


周りからみたらやばい奴かもしれないけど...ん?


よく考えたら、僕からしてもあの異常な執着はやばい奴か?


まぁ、考えてもどうにもならないからどうでもいっか


二人で向かい合って朝食をとってる途中で僕はラミに話しかけた


「なぁ、ラミ、昨日言ったことだけど僕ら二人で勢力になるって話」


「あぁ、もう魔界のそこら中にリャク様の一番かっこ良い顔写真つきで配っときましたよ?」


「へ? まぁ、いずれ知られるから良いんだけどさ...ラミは良いのか?」


「良いもなにも、リャク様に逆らう者を判別して殺せるのです


最高ですよ」


ラミは明らかにんでいる


「殺すのは駄目だ! 分かったな?」


「む~、ご命令とあればかしこまりました...」


納得いってないなこれ、でもラミは命令には逆らわないという信頼ができるからひと安心だ


「なぁ、ちなみになんて内容で配った?」


「他勢力には僕らがお前らの争いを止めてやるというフレーズを」


へ?めっちゃ喧嘩ごし...もう先行きが暗くなってきた


「そして、まだどの勢力にも属していないと把握している者には、僕と魔界を変えないか? というフレーズを」


「他勢力に喧嘩腰なのは最悪だけど、仲間を募集するフレーズは完璧だね」


「お褒めの言葉、光栄です!」


うわ、まぶしい笑顔


他勢力に喧嘩腰なのは許そう、どうせ争いを止めるのに対立するんだし



大事なのは、勢力を拡大していくことである


そのためにも仲間を増やさないとなぁ...


「なぁ、ラミ」


「何でしょうか?」


「仲間を増やしたいんだけど、何か案無いかな?


うちの組織の方針、いわば戦争に参戦してる勢力を全て敵にまわしてるようなものだからさ


中々、自ら志願する人はいないと思うんだ」


「......待つしかないでしょう、その間に最初にやることを決めておきましょう」


「それもそうだね、ありがとう! やっぱ、僕にはラミがいないと駄目だな」


ん?ラミの反応が...えぇ!?


「......」


ラミは僕を真顔で見つめたまま、フリーズしていて魂が抜けてるようだった


ラミの頭上にラミが昇っていくのは気のせ、


「いじゃない!! ラミ、戻ってこい!」


「はっ!? 危ない、幸せなお言葉過ぎて死んでしまうところでした」


どれだけ僕のことが好きなんだよ...


「しっかりしてくれよ?」


「申し訳ないです、改めて、最初にやることを考えましょう」


「僕は、この組織でシュラ様のように魔界の戦争を終わらせたい」


「つまり、実力で示す一択では無く、それぞれの勢力に合わせて降伏してもらい全ての勢力を制したいと...」


「その通り、話が早くて助かるよ」


「では、どこの勢力を最初に攻略するかを考えなければ」


「最初は分かってくれる可能性が高く少数精鋭ではあるけど、数はいないあの組織はどう?」


「...あの組織、正直潰したいんですけど」


あ、ラミの目の光が無くなった。そう、目を付けた組織にはラミにとって最悪な人物が所属しているのだ


「でも、シールド シュラ時代から僕が取引でよく行っててラミも同伴してたから一番相応しいと思うんだ」


「あの娘には会わないように警戒します!」


「はは、頑張って。じゃぁこれで決まりだね」


ラミは何か後味の悪い顔をしていたが僕を一人にすることはしたくないと言う理由で覚悟を決めてくれた。



最初に攻略対象にした組織について説明しとこうと思う


組織名は「フリーバッド」


リーダーの名は、「ネメル▪シャドレイ」


ネメルは真っ黒な髪に黒い狐の仮面をしているが性格やスタイルだけでイケメンである


ネメルの強みはなにより、寛容性かんようせい


悪人、変人、どんな者だろうが受け入れ仲間にいれそして理解してくれる


だから、ネメルの組織のメンバーは一人一人の個性が強く、それゆえに敬遠されがちなので少数なのである。


ちなみに、一人一人の実力は本物である


ただ、ネメルへの忠誠心が異常である


一人を除いて...



その頃、ネメルの館にて


「へぇ、僕の館から魔界の中でも滅多に取れない鉱石 ランセルが盗まれた...」


「始末はどうします...アジトならシェルの奴が尾行にて突き止めてます」


「ガイル、君が捕らえに行ってくれるかな? 案内人としてシェルをつける」


「了解!」



目的を決めた日の二日後、ネメルの館へ出発した


だが、ラミは顔が青ざめ気分が悪そうだ


「なぁ、僕一人でも行けないことはないからラミは休んでくれて構わないんだよ?」


「ご心配無く...リャク様を一人にすることだけは私が遠慮願います!」


そっか、ならもう何も言わないけどそんなに弱ってたらついてきてくれる気持ちは心強いけど役に立てそうにないんじゃないかな?


ん?


「オレンジ様を殺ったお前と会えるとはな、良い機会だ


こっちは私含め、三人だぞ? しかも三人ともオレンジ様の妹分だから、実力も相応だ」


ラミは殺気を出し始めた...こうなったら止めようがないのでラミに任せよう


しかし、殺しは見るのは気が引けるのでいざという時は実力行使で止める



僕は、三人組の名前を聞いておく


「君たちの名前は?」


「私はグリレン


私の両隣にいるのは右がファーシー、左がローリよ」


「どうでも良いです...リャク様を殺そうとしたあの女が悪いんですよ?


恨まれる筋合いなどありません」


「ラミ、貴様ぁ!!」


三人組の一人、ファーシーが剣でラミに襲いかかる


終わった...ラミにとって武器を持つ敵は脅威どころか願ったりかなったりなのである


「その剣...私の方が上手く扱えますよ?」


すると、ラミの右腕にファーシーの剣が現れその剣からチュラの魔力の解放と同じような紫色のオーラが溢れてくる


そう、ラミは敵の武器や戦い方を真似て自身の強大な魔力で上位互換となる


つまり真似られた下位互換は勝てない...ラミ以上の魔力を持たぬ者は基本勝てないのだ


「それは私の剣!? だが私の剣術は破れない!」


ファーシーとやらはラミに冷や汗を流しながらも突撃し剣を振り下ろす...終わったな...


「? あれ? 貴女の剣で貴女の剣が粉々に斬れちゃった


あら不思議?」


ファーシーは唯一残った剣の持ち手を眺めて目が恐怖で染まっている


とぼけやがって...僕には見えたよ、一瞬でラミがファーシーとやらの剣を斬り刻んだのを


「リャク様がいらっしゃるので命は見逃します


が、まだやるというならまたの機会に暗殺しますね」


ラミは満面の笑み...対する3人は涙目


もはや、可哀想だ


「ラミ、終わりだ。 引き下がってくれる?」


僕は三人組のリーダー、グリレンに撤退を促す


「...オレンジ様のかたきは必ず取るからな!


強くなってまた来る、待ってろ!!」


そう言ってオレンジ一行は撤退していった



僕は、一応ラミに説教しておく


「ラミ、オレンジを殺したらしいな?」


僕は、オレンジと一度だけ会ったことがある



あれは二年前...


シュラ様が亡くなられる前のことだ


僕が一人で仕事部屋で業務をこなしているとチュラからの仕事の書類を届けにチュラの代理人が訪れた


それがオレンジだった


当時からチュラの妹分として働いておりチュラに忠実だった


「リャク様、チュラ様からの書類をお届けに参りました」


「あぁ、ありがとう」


「リャク様...チュラ様の好きな食べ物って知ってますか?」


「君は知らないの?」


「恥ずかしながら...差し入れとして用意したいんです」


「そうだなぁ...チュラはカレーが大好きだぞ?」


「そうなんですか」


「ちなみに、チュラの兄であるシュラ様もカレーが好きだぞ?


兄妹だよなぁ...」


「ありがとうございます! カレーですね、今度差し入れとして作ります」


「あはは、チュラは幸せ者だなぁ」


「では、失礼しました」


この程度だが面識がある、ちなみにオレンジという名前だということはチュラの部屋で二人で会議をすることが多く、チュラから名前だけ聞いたことがあり知っていた


特徴が一致していたからな



話は現在に戻る


「はい、殺しました。シュラ様を連れ戻すために追跡していたので邪魔と判断しまして」


「...これからは僕が頼んだとき以外殺さないこと! 分かったな?」


責めたところでオレンジは生き返らない、なら今後の対策をしておいた方が良い


「了解しました」


そんなやり取りをしながら再び歩いている間にネメル率いる「フリーバッド」のアジトにたどり着いた



うん、ネメルってほんとに根から良いやつなんだよなぁ...


「ネメル、久しぶり」


「あ、リャクじゃん! いらっしゃい、とりあえずあがってよ」


「今回は遊びに来たんじゃないんだ」


「知ってるよ、この戦争のことでしょ? 確かタイムリープだっけ?


その件でしょ?」


「流石、洞察力のネメル」


「買いかぶりだって、その二つ名あまり納得いってないんだから」


まぁ確かに自分の屋敷の花に水をあげる主に悪いやつはそうそう居ないし強いとも思われないだろう


でもそれは偏見だ...ネメルの部下はどれも主に従うような者じゃない


それを手懐てなずけるんだからな...そのカリスマ性と強さはとてつもない



あれ?ラミが大人しいな?嫌な予感...


「ラミ様! えへへ、会いたかった!!」


ラミは、猫耳の生えた幼女に押し倒され顔をなめ回され意識が飛んでいた


何となく予想はついてた、さぁ、ネメルはともかく部下がどう出てくるかだな...


タイムリープの初活動、やるか!!















 


 

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