第32話 結局、俺達は似た者同士。めんどくさい人だと互いに思う
えっ、今、嘘つきって言われたよな? まぁ、確かにそうだけど。好きにならないと言い、今、こうして美奈さんに告白したのだから。
「悠斗くん、私のこと好きにならないって言ってたよね? 私は悠斗くんとは家族でいたかったからあの時好きにならないでって言ったの。悠斗くんもそうでしょ? 私とは家族でいたいから夏休みの時、好きになっても絶対に気持ちは伝えないって言ったんだよね?」
「あぁ、そうだよ。けど、やっぱり自分の気持ちを相手に伝えるのも必要だと思ったんだ。ルール、思ったことは口にすること……俺は美奈さんに告白して好きって伝えた。美奈さんは俺のことどう思ってるんだ?」
俺は少し前から美奈さんの気持ちに気付いている。多分俺と同じように悩んで、相手と距離置くことを繰り返している。俺と美奈さんは似た者同士。多分、めんどくさい奴だと互い思っている。
「私も……悠斗くんが好き……だよ」
そう言った彼女の顔は真っ赤で今までに見たことのない表情をしていた。
***
自分にもう嘘を付きたくはない。私は、朝井悠斗くん……君が好きなんだ。
私は悠斗くんとは家族以上の関係にはなりたくなかった。なぜならそれ以上の関係になるのが怖かったからだ。
もし付き合って別れたりなんてしたら気まずくなって家族としていられなくなると思った。
だから私は悠斗くんと家族になった時に言った。
「私のこと好きにならないでね」と。
好きになっても気持ちは伝えてほしくなかった。私は悠斗くんとは家族でいたかったから。もし、気持ちを伝えてきたら私は断ろうと考えていた。
「ごめんなさい」と。
けど、いざ悠斗くんから告白されたら私は断れなかった。断る方が怖いと感じた。
ここでうんと言わなきゃ私は絶対に後悔する。
だから私は自分の気持ちを口にした。
***
「君も嘘つきじゃないか」
俺は、先ほど美奈さんに言われた言葉をそっくりそのまま返してやった。
「うん、嘘つきだね。私は君を好きにならないから君も私のことを好きにならないでって言い出した私が一番の嘘つきだ。悠斗くんは私が好き。私は悠斗くんが好き。これって両思いだよね?」
彼女は嬉しそうに聞いてきた。
「うん、まぁ、そういうことになるな……」
「「…………」」
ヤバイ、両思いで嬉しいのにいつもみたいに会話が続かない。好きって言った後ってどうするのが正解なんだ?
俺がどうすべきか悩んでいると美奈さんが何かに気付いた。
「あっ、今気付いたけど二人ともルール破っちゃったね。ルールを破った時の決まり覚えてる?」
「相手の言うことを何でも一つ聞く……だったか?」
「うん、そうだね。じゃあさ、悠斗くんから罰ゲームタイムね」
彼女は楽しそうにオレに言ってくる。俺にとっては罰ゲームは全く楽しくないんだが。
「はいはい、ルールを破った罰は何?」
俺がそう聞くと彼女は両手を広げた。
「ハグして」
「えっ……?」
「聞こえなかったの? ハグしてって言ったの。これが悠斗くんの罰。やらないはなしだからね?」
いやいや、罰がハグって美奈さん、それは罰よりご褒美みたいなものでは?
「あっ、立ってじゃないと無理か……」
美奈さんは、ベッドから立ち上がりニコニコしながら両手を広げて待っていた。おそらくこれは俺がしない限り美奈さんはずっとこのままでいるだろうな。
「じゃ、じゃあ、失礼します……」
俺は、優しく美奈さんを抱き締めた。すると美奈さんが笑い出した。
「失礼しますって何よ。それにしてもやっぱり男の子って体大きいよね。なんか守ってもらえる感半端ない」
美奈さんはこの状態にドキドキしてないのかというぐらい普通に話す。
俺はというと先ほどからドキドキしすぎて心臓が持ちそうにない。それなのに美奈さんは俺の手を取って指を絡ませてきた。
「ちょっと美奈さん、話と違いますが!?」
「別にいいじゃん。あっ、もしかして私と手、繋ぐの嫌?」
「別に嫌じゃないけど……」
「なら、少しの間このままでいいよね?」
上目遣いで俺に言ってくるのでオレはさっと目を反らした。ダメだ……ドキドキしすぎてどうしたらいいか全くわからない。てか、なんで美奈さんはこの状況が平気なんだ!?
「悠斗くんの手、温かいね。人の温もりを感じるよ」
「あの、美奈さん………」
「なに?」
「この状況になんで平然としていられるんだ?」
「えっ……平然としてる? 私、めちゃくちゃドキドキしてるんだけど。会話で誤魔化そうとしてるだけ……ってこんなこと言わせないでよ!」
言ったのは美奈さんでは!?
俺は、別に聞いていない。けど、ドキドキしているのはオレだけじゃなかったんだな。
***
「ねぇ、美奈」
翌日、登校してきてすぐに私は伊織に話しかけられた。
「あっ、おはよう、伊織。どうかしたの?」
「
「えっ!!??」
私は驚きのあまり大きな声を出してしまった。
「驚いてる立川さんも可愛い」
「なんかめっちゃレアな立川さんが見れた気がする」
なんか言われてる。大きな声出すだけでレアって私は、一体なんだと思われてるの?
「朝井くんと仲良くなり始めてからいろんな美奈見れて楽しいわ」
伊織は、そう言って何かに気付き立ち去っていった。これはからかわれているな。そう思っていると先に登校していたはずの悠斗くんが教室に入ってきたのが目についた。
「悠斗くん、どこ行ってたの?」
後ろの席に座ったタイミングで私は、後ろを振り向いて声をかけた。
「空き教室で文化祭の準備やってた」
「偉いね。私も明日から参加しようかな」
朝、早く来れる人は文化祭の準備を少しでも進めてほしいと昨日、文化委員から連絡があった。手伝いたい気持ちはあったが、私は朝早く起きるのが苦手で行けそうになかった。
「参加しようかなって君は起きるのが苦手なくせによく言ったもんだ」
「なっ、確かに苦手だけど起きようと思えば起きれるから」
「意地張るところ直したらどうなんだ?」
「意地張ってないし、悠斗くんに起こしてもらおうなんて思ってないから」
「口にしてる時点でオレに起こしてもらう気満々だろ」
くっ、言い返せない。悔しいけどこうやって悠斗くんと話せるのは楽しい。
ありのままの自分をさらけ出してるようで楽だ。相手を気遣うような嘘の言葉を口に出さなくていいから。
「悠斗くんって私に当たり強いよね。好きとか言っといて本当は私のこと嫌いなんじゃないの?」
本当はこんなこと言うつもりはなかった。けど、気付いたら聞いてしまっていた。
「嫌いだったらまず話すこともしない。俺の美奈さんへの気持ちは昨日言った通りだよ」
わかってる……。少し不安になったから聞いてしまっただけ。
「あっ、そう言えば悠斗くんに謝らないといけないことがあったんだった。昨日は、ごめんね。付き合ってもない私にハグとかされて。罰ゲームにしてはやりすぎたなって後になって思ったよ。私がしてほしいからって悠斗くんの気持ち考えてなかった」
「えっ……?」
俺は、美奈さんが謝る内容よりも違うことに驚いた。
「俺と美奈さんって付き合ってないの?」
「えっ……?」
美奈さんは俺からそんなことを聞かれるとは思っても見なかったのか俺の顔を見て驚いた表情をしていた。
「「えっ……」」
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