第2話

ガシャンガシャン



僕は今、甲冑を身に纏い彼女の部屋へ向かう。



ガシャンガシャン



う〜ん、毎度思うけど歩くたびにうるさいんだよなこれ〜



――うん? この甲冑かい? 何、気になるって?


ふふふ〜これはね、仲良いギルドの方に最近ロックリザードの鱗をちょっともらって作ったんだよね。ダンジョンや火山等の鉱石が多く取れる所に棲んでいるロックリザードって鉱石や硬い岩とか主食にする種族だから物凄く頑丈だししかも魔法耐性も意外とあって結構冒険者間では人気の素材みたい。

僕はそれよりこのザラザラとした肌触りが意外と好きだったりするんだよね〜。


――え? そうじゃない? 彼女を起こすのに必要ないだって?


理由は単純明快だよ、彼女はとても寝起きが悪いんだ。彼女は僕が起こしに行くと甘えたいのかハグしてくるんだ。ここまでだったら可愛いのだがなんとそのハグはレジェンドオークぐらいの力だよ、抱きしめられただけで一瞬で即死レベルだ。しかもちょっと機嫌が悪い日だと魔法を無意識なのか食らわせてくる時がある毎日が命懸けだ。


だから身を守る術がないとだめなんだ。


前にそれを知らずに起こしに行ってえらい目にあって1週間くらい生死の境を彷徨ったのでそれ以来するようにしている。


他の人にも代わりにやってもらっていたのだがその時はギルドの屋敷の三分の一が彼女によって破壊されなおかつ起こしに行ったギルドメンバーがトラウマで1ヶ月出勤拒否をするようになった…なんでも僕じゃなければ駄目なんだそうで。


そんなこんなでそれ以降、これは僕の仕事になった。


ギルドの廊下を歩くというのは普通だが、朝に甲冑姿でというワードが加わるだけで途端に変質者だ。そんな異様な状況にも関わらず途中ギルドのメンバー達は僕とすれ違っても何一つ驚いたようなリアクションをしない。


「おはようございます。今日も目覚まし頑張ってね」


「おはようございます!はい、 任せてください!」


「やっほ〜!彼氏くん〜今日も愛する彼女ちゃんを起こしに行くの〜ラブラブだね〜」


「おはようございます!茶化さないでください」



普通に挨拶して終わりだ。



彼女は王都でも強さもそうだがその美しさでも有名だ、そんな彼女の油断した寝顔をギルドの男共は見たいと思うが下手したら命を取られてしまうのでみんな怖がって名乗りを上げるやつなんて極々少数しかいない。



まぁ、いつものことだし僕が起こすしかないのかな〜


「は〜〜い、到着っと〜」


そんなこと言いながら彼女がいる部屋の前についた。


スゥ~ハァ〜、スゥ~ハァ〜


深呼吸をして心を落ち着かせる。

僕はほとんど行ったことはないがギルドのみんながダンジョンに向かう時はこんな気持ちだったのかな。


「よ、よし、行くぞ!」


ここからが大勝負だ






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