第2話


翌日、学園は休日。

学園は授業が休みでも喫茶室やテラスは開いている。

サロンでは仲良し令嬢たちの小規模なお茶会も開かれていた。


そこでは色々な話が話題にあがった。

そのテーマはすべて同じで……寮生は誰もが知ることとなり、お茶会で話を聞いた通学生も家族にそれを話した。


翌々日は八割の大人も休日。

天気も良く、貴婦人たちの優雅なお茶会が開かれた。

そこでも話はみんな同じ。

こうして、二日間の間に事実とちょっぴりの目撃情報スパイスに出どころ不明の噂が振りかけられたオードブルがどのお茶会でも振る舞われた。



そうして、ごく一部だけが何も知らないまま学業に、就業に時間を過ごしていた。


「恥ずかしげもなく授業に出られているなんて……」

「ええ、フェリア様は恥ずかしくて授業に出られないと嘆いておられますわ」

「まあ……それはお可哀想に」


あちらこちらで何か話をしている。

それも自分を見て。

しかし、フェリアが恥ずかしくて授業に出られないといっているということは、エバンス本人は言葉を濁していたが上手く既成事実が作れたということだろう。

頭を打っていたみたいだから、行為を覚えていないとか?

まあ、それもフェリアをエバンスの家に嫁がせれば思い出せるだろう。


疎ましいフェリアを寮生として押し込んで部屋を奪ってアクセサリーを奪い取ってやった。

幼児体型のフェリアが着ていたドレスは私に合わないから捨てさせた。

いま思えば、あのドレスを下取りにして新しいドレスを仕立ててもらえばよかった。

レースや宝石はいいものだったし、生地もそれ相応のものを使っていた。


部屋を奪ったことで家には帰ることもできず、父親に『エバンスに押し倒された』と言い出せないようだ。

だったら、優しい姉わたしから父に話してあげよう。

そんな嬉しい気分のセリーナに、勇気を出して近寄った女生徒がいた。


「セリーナ様、お伺いしても宜しくて?」

「何をかしら?」

「先週末に、その……エバンス様と、特殊教室で……。このようなことを女性の方に直接お尋ねするのは失礼だと存じております。ですが、その……エバンス様はしばらく休まれるそうなので……」


彼女が聞きたいのはエバンスとフェリアとの既成事実があったか、だろう。

エバンスの話でははっきりしないが、そんなこと彼女たちには真実かわからない。

既成事実なんか後からでも作れる。

その前に噂で動けなくしてやるのも『既成事実のお膳立て』になる。

それに姉の私が既成事実を認めてしまえば、フェリアに逃げ道はなくなる。

セリーナはそう考えると、恥ずかしそうに微笑んだ。


「ええ、エバンス様とのことは事実ですわ」

「そ、そうだったのですか」

「ええ、ですから今日にでも父に直接お話させていただきますわ」

「まあ、それはおめでとうございます」

「ありがとうございます」


このとき、セリーナは大きな勘違いをしていた。

そしてそれは、エバンスとセリーナの足下で地獄のフタが少しだけ開いた瞬間だった。

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