第37話

「はい、それでは今からアリシア様が滞在される用の宿を確保しにいきますね。って、あれ? そういえばアリシア様は本日はお連れ様とかはいらっしゃらないのですか?」

「あぁ、はい。実はこのソラド村で従者と合流する予定なんです。そしてその従者と合流したらレイドレッド家の方に帰る予定となっています」

「あ、そうだったんですね。はい、わかりました。それでは本日はアリシア様お一人様用の宿泊宿を取らせて頂きます」

「はい、ありがとうございます。よろしくお願いしますね」


 そう言って私は村長に深々と頭を下げていった。


「いえいえ、我々アルフォス領に住む者としては当然の事をやっているまでですよ。それではどうしましょう? 宿が確保出来るまで少し時間がかかると思いますので、良ければ村の案内でもいたしましょうか?」

「あぁ、それはとてもありがたいです。是非ともお願いできますか?」

「えぇ、わかりました。それでは早速外に行きましょうか」


 という事で私は宿が確保出来るまでの間、村長にソラド村の案内をして貰っていく事になった。


◇◇◇◇


「……ここがこの村で一番美味しい料理屋さんです。なのでお腹が空いた際には是非ともこの店を利用して頂ければなと」

「はい、わかりました。それではこれから活用させて貰いますね」


 それから数十分程かけて、私は村長にソラド村の案内をして貰っていった。まぁソラド村は小さめな村なので、割とすぐに全体の案内をする事が出来ていった。それにしても……。


―― わいわい……がやがや……!


「何だか村の中が全体的にとても賑わっていますね。近い内に何かお祭りでもやられるんですか?」


 村長に村の中を案内して貰っていった時、何だか村の様子がとても賑わっている事に私はすぐに気が付いた。村の中には沢山の人がいて、そして賑やかで活気づいているような感じだった。


「ん? あぁ、いや違うんです。実はですね……今日から三日後にこの村で結婚式を開かれる予定なんですよ」


 私が村長に尋ねてみると、どうやら近い内に結婚式が開かれるのでその準備が行われているらしい。


「へぇ、結婚式が開催されるんですね。それにしても村中で一丸となって結婚式の準備をされてるなんて凄いですね」

「えぇ、まぁこの村はかなり小さい村ですし、中々都会のような豪勢な結婚式なんて開くのは難しいですからね。だからこの村に住む者達が結婚式を開く時には村中の者達で盛大に祝おうっていう事にしているんです」

「あぁ、なるほど。だからこんなにも村中の人達が活気づいているんですね。ふふ、それはとても良い文化ですね」

「えぇ、本当に素晴らしい文化だと私も思いますよ。あ、そうだ! もしよろしければアリシア様にも結婚式に参加して頂きたいのですが、それは難しいですかね?」

「え、私が……ですか?」


 すると突然、ソラド村の村長はそんなお願いを私にしてきた。


「はい! もしもレイドレッド家のお嬢様が結婚式に参加して貰えれば、きっと結婚式を行うあの二人も喜ぶと思いますので」

「え、えぇっと、そうですね……」


 普段ならアルフォス領に住む人の頼みだから快く引き受ける私なんだけど……でも私はつい先日に婚約破棄をされた身だ。だから今の私の存在って……正直に言えば今から結婚する人達にとってはかなり不吉な存在でしかない気がするんだよね。だから……。

 

「えぇっと……私も出来れば参加させて頂きたいと思うのですが……ですが、今は色々と込み入った事情があって結婚式には参加出来ないんです。本当に申し訳ないです……」

「そうなんですね……あぁいえ、こちらこそ無理を言ってしまい本当に申し訳ございません!」


 という事で私は頭を下げながらその結婚式の参加は辞退させて貰う事にしていった。すると村長も申し訳ないような顔をしながらそう返事を返してきてくれた。


「いえ、こちらこそです。参加出来ないのは非常に残念ですが……ですがお二人の結婚式については心からお祝いさせて頂きます。これからお二人には幸せな家庭を作っていって貰いたいですね」

「えぇ、ありがとうございます。あぁ、でも実はもう奥さんのお腹にはもう子供もいるらしいんですよ。だからこれからは三人で仲良く幸せに暮らしていって貰いたいですね」

「あ、そうなんですね。ふふ、それは本当にとても幸せな事ですね。えぇ、是非ともこれからも仲良く幸せに暮らしていって貰いたいものですね」


 という事で私は明後日に開催されるこの村での結婚式の成功と、その二人の間に生まれてくるであろう子供の幸せを祈りっていく事にした。どうかこれからの人生が幸福でありますように、と。

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