第3話 それ、彼女へ

 おそらく赤くなった顔をしているだろう。

 でも、そんなことを気にせず、私は彼にプレゼントを渡した。

「ごめん、それは受け取れない」

 まさかの拒絶だった。

 私はこの事実を受け止められず、プレゼントを手から落としてしまった。

 そして、私はその場から逃げてしまった。

 彼と彼のためのクリスマスプレゼントを残して。

 いろんな人が私を見ている気がした。

 その視線が気持ち悪くて、それがなくなるまで必死に走り続けた。

 やがて、周りの音なんて聞こえず自分の呼吸の音だけが耳に響く。

 はあはあと息が切れてきた。

 息が落ち着いてきた頃。

しずく?」

 自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。

 聞こえた方に顔を向けると彼女がいた。

 親友の優花ゆうかだ。

「聞いたよ、博隆ひろたかから。あいつさいてーだね。わかってたくせにさ。滴が博隆のために一生懸命がんばってたこと。しかも、追いかけもしないなんて」

「でも、それは優花のためでしょ。博隆くんは優花のことが好きで優花の彼氏で……」

「そんなの関係ないよ!」

 優花は少し大きな声でそう言った。

「私は博隆も滴も好き。二人が大好きなの。なのに、滴を泣かせるなんて、博隆の馬鹿」

 そう優花に言われて初めて私は自分が泣いていることに気が付いた。

「あれ、なんで、私泣いてるの?」

「それは……」

 優花も理由はわかっていた。それでも、口に出すことをためらった。

「優花、あいつと博隆と別れる」

 優花は突然、そう私に宣言した。

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