第3話 戦闘

 イーライの猛撃はまだまだ続く。素の身体能力だと言うのに、ミナは身体強化系の能力者と戦っているかのような錯覚に陥っていた。

 そして何より、一つ一つの攻撃に込められた意図。それが全く読めない。理解した頃には既に遅く、術中にハマっている。

 幸いなことに、最初の一撃以降、ミナは攻撃を食らっていない。だが防戦一方で、中々カウンターを叩き込めないでいた。


「予想外だ。高位能力者なのに体術にも優れているのか。本当に君は天才だな」


 ミナは過呼吸だ。が、イーライは息の一つ見出している様子がない。明らかに追い詰められているのはミナの方である。


「でも、ならなぜ能力を使わない? 俺のナイフを避けられるんだ。能力を使うことぐらいやれるはずだろ?」


 そんなことできるはずがない。ミナが対人に使う能力の出力はかなり絞っている。故にコントロールにはそれなりの意識を割かねばならず、今のように避けることで精一杯な状態だと中々に厳しいものがある。


「⋯⋯いや、違うな。俺を殺さないように手加減しようとしているのか。君がそうしようが勝手だが、それだと不合格になるぞ。君がやらなければならないのは、出力を抑えて能力を使うか、素の身体能力で俺に勝つかだ」


 実質的な選択肢は前者のみ。今、この土壇場で、人を殺さない程度に抑えた能力を使わなければ、このままだとジリ貧だ。

 しかし、そうするにはコントロールの猶予が必要。近接で戦闘しつつ、そのコントロールを行うのは困難。ならば、距離を取らなければならないのだが、


「まあ、そうは問屋が卸さないってな」


 走って逃げ出すミナを、イーライは追いかける。勿論、足の速さでも負けているからすぐに追いつかれるだろう。しかしミナは能力を使って跳躍する。


「なるほど。星屑のような軌道は高圧ガスのようなもの。爆裂はあくまでも副次効果。⋯⋯通りで自傷ダメージもなく飛べるわけだ。ロケットが飛ぶように、ガスを噴射させているのか」


 イーライの見立ては全く間違っていない。ミナは『仄明星々スターダスト』によって星屑のような軌道を描くが、その正体は高圧ガスのようなもの。爆裂はこれを操作した結果の現象である。

 爆裂そのものが能力ではない。


「器用だな。⋯⋯だが、君が能力を使うと言うなら、俺も能力を使って良いってことだ。試験という場では、あまりやりたくはないが」


 ずっと半目にしていた目が、その時だけは完全に開いた。目の色も変わり、黒から赤となる。


「うわっ!?」


 その瞬間、ミナの能力は封じられた。そうなれば彼女は一般人同然。地面に落下してしまう。そこまでの高度はなかったから死にも気絶もしなかったが、痛いものは痛い。


「ぐ⋯⋯何が」


「俺の能力だよ。効果は見ての通り、発動中は視界内のありとあらゆる能力を封じる」


「⋯⋯⋯⋯」


 非能力者となったミナでは、イーライから逃れることはできない。それでも、やらなければいけない。


「さあどうする? 君、このままだと本当に不合格になるぞ。そんなんじゃあ、何もできない。救助科に入る以上、実戦は避けられない。この程度の困難、ザラにあるぞ?」


 イーライはナイフを構える。


「来いよ。非能力者となった君に、何ができるかを見せてみろ」


 ミナは微動だにしない。しばらくの静寂が生まれる。しかし、イーライは痺れを切らさない。これは彼女が諦めたからではなかった。

 何かを考えている。そして何より、彼は今、下手に仕掛けられないのである。


「ありとあらゆる能力を封じる能力。発動の条件は、分かるだけで視認。つまり、視界外に逃れることで、わたしはもう一度能力が使えるようになるということですね」


 イーライは表情を変えない。ここまでなら、そこそこ頭が回るなら誰にでも分かるような情報だ。

 問題は此処から先である。そして、ミナはどうやらその先の答えまで分かったようだ。


「じゃあ、なんで、あなた、さっきみたいに仕掛けて来ないんだろうって、不思議に思いました。視界外に逃げられないように、さっさとこっちに来れば良いのに」


 イーライは少しだけ笑みを浮かべる。ああ、こいつには素質がある、と。


「あなたの能力、わたしの全身が視界内にないと発動条件を満たしたことにならないか、もしくは能力の効果が弱まるんじゃないですか? 近づけば、当然、視界内全てに全身を収めるなんて不可能。だから下手に近づけない」


「ほう⋯⋯正解だ」


 イーライの能力は、頭の先からつま先まで、視界内に収めていないといけない。より正確に言えば、そこに対象となる人物の全体像がなければいけない。だから服を着ていても能力は発動するが、壁などに隠れられると存在を認識できなくなって能力の発動条件から外れる。

 もしそうなれば、認識できる人体の部位の割合によって、封印具合は変化するのである。


「でも、対策の一つも取っていないと思うか?」


「いいえ。思っていません。あなたが持っている武器はナイフ一本。ですが、実際は他の武器もあるはず。わたしなら、拳銃とか、遠距離武器を持ちますね」


「ああ、そうだ」


 イーライは隠していた拳銃を取り出す。


「ゴム弾の拳銃。殺傷力は勿論ないが、頭に当たれば気絶くらいするだろうさ」


 彼は拳銃を構え、照準を頭に合わせ、即座にトリガーを引く。ゴム弾と言っても、至近距離なこともあり避けることはまず無理なはずだ。能力が使えない能力者など一般人同然。

 イーライは嘘を付いていた。まだ合格か不合格かを決めていないと言っていたが、もう既に決まっている。合格だ。この拳銃を取り出した時点で、そうなった。

 そうしなくてはならないと直感させたことが、合格の理由になったのだ。だからこれでミナが気絶しても不合格にはならない。これはあくまでも実戦の厳しさを教えるためのもの。この敗北が勉強になれば良いと思ったからやろうとしたこと。


「──なに?」


 ──決して、避けられるとは考えていなかった。

 ミナは射撃される直前に姿勢を低くし、頭への直撃を避けたのだ。イーライの戦闘能力の高さから、確実に頭を狙ってくると読んでの回避。それは見事に的中し、彼の能力の条件を完全に外した。

 一瞬にしてミナはイーライの懐に入り込む。そして能力を使う。コントロールの猶予は十分あった。

 軌道が描かれ、爆裂が生じる。


「⋯⋯⋯⋯」


 ⋯⋯だが、しかし、イーライには直撃しなかった。


「危なかった。油断していたな。まさか懐に入られるとは」


 イーライはミナに、思わず本気の膝蹴りを叩き込んだ。それによりミナの爆裂の照準は大きくズレてしまい、当たらなかったのである。


「ゲホっ⋯⋯ゲホっ⋯⋯」


「おい大丈夫か? すまん。やりすぎた」


 彼だって女の子を痛めつけたいわけではない。ナイフによる一撃も、スピードを当たる直前に殺すなどしてできるだけ痛みを抑えるようにしていた。


「大丈夫⋯⋯です。これくらい⋯⋯実戦じゃあ⋯⋯ザラ、なんでしょう⋯⋯?」


 ミナは口を拭い、体制を立て直す。呼吸もかつてないほど乱れている。意識が今の一撃で朦朧としている。立つのも辛いような状態。

 それでも、まだ、一撃も入れられていない。


(もう合格なんだが⋯⋯そこまで言うなら、付き合うしかないよな)


 ああ、なんて奴だ。将来有望なんてどころじゃない。星華ミナは、必ず、偉業を成し遂げるだろう。イーライの目にはそういう人物だと写った。


「⋯⋯くくく。君、将来何になりたい?」


「S.S.R.F.、です」


「そうかい。きっとなれるさ、君なら。あの隊で、俺に一撃でも与えられた奴は数えられるくらいしかいない。ここまで追い詰められるのだって、半分もいないだろうさ」


「⋯⋯まさか、あなた」


 気が付いたミナの言葉に、被せるようにイーライは喋る。


「──さあ、やろうか。ここからが本試験だ。星華ミナ君」


「──っ!」


 その言葉をきっかけに、本当の戦いが始まった。

 ミナは、まず、能力を封じられることを予期して真っ先に行ったことがあった。彼女は能力を地面に対して使い、辺り一帯を爆裂させたのだ。これにより地面が抉られ、煙幕が発生した。


「俺の能力を使用不可にしに来たか。良い判断だ」


 そして次の瞬間には、イーライの周りに星屑のような軌道が現れ、爆裂が生じた。

 しかし、これも彼には通用しなかった。彼はその前から右手を前に突き出していたからだ。


「俺の能力の発動条件は二つあってな。どちらかを満たしていれば良い。一つはさっき君が当てた、視界内に能力者を入れること。そしてもう一つは、触れること」


 能力者ではなく、能力による現象を視界内に入れても、能力は消えない。能力者を視認しなければ、能力を強制解除することはできないわけだ。

 しかし、触れることによって──実際に直接触れているわけではなく、手の平に纏っているような膜に触れることによって、能力による現象だけでも能力の消去が可能だ。この場合、能力者に触れたり、視界内に入れたりする必要はない。

 事実、硝子が割れるような、もしくは削れるような音が鳴ったと同時に、ミナの爆裂は消えていた。

 ただ、触れる必要がある以上、それなりにリスクは付き物である。


「なら」


 ミナはイーライとの距離を勢い良く詰める。ナイフの得意距離だ。迎撃するのみ。音から察するに、動きは一直線と単調。タイミングは完璧に掴める。


「つまりバレバレの罠」


 イーライの目前で爆裂が生じた。それは光がより強かった。閃光弾のように、人の目を潰すには十分過ぎるほどだ。しかしどうやら破壊力は弱まっているようだ。

 爆裂の衝撃波を推進力にしても問題ないくらいに相殺し、ミナは空中で一回転しつつイーライの背後に回っている。だがそれを彼は読んでおり、目があった。いくら煙幕の中でも、至近距離だと互いに視認できる。

 能力は使用不可となった。


「まずは一撃」


 ここからが本試験、という言葉通り、これまでの攻撃回数はリセットされている。条件は同じであるため、残り九回の被弾で不合格となる。

 イーライはナイフをミナに振りかぶった。


「──当たれば、です」


 が、ナイフは弾かれた。能力によるものではない。コンクリートを切りつけたからだ。


(さっき! さっき、地面を爆破した時に割れたコンクリートの破片を!)


 閃光は避けられることを想定していた。あれは囮。もう策はないと思わせるための陽動。

 本命はこちらであったのだ。

 コンクリートを切り付け、ナイフは弾かれた。至近距離。能力は封じられている。だが、ミナは、能力に頼りきった能力者ではない。

 素の身体能力でさえ、イーライの攻撃をいなせる程度には高いのである。

 イーライの足を払おうとする。しかし、蹴り返される。勿論、これは一撃扱いにはならなかった。

 近接戦に持ち込まれたミナ。イーライは進みながらナイフを振るい、ミナは後退しつつナイフを避ける。

 ナイフは一撃で仕留める武器ではない。連撃を加え、体制を崩したところを仕留めに行く武器だ。

 そういう技術においてミナはイーライに大敗している。だが、能力の性能、もっと言えば一対一の戦闘における能力の差は歴然としていた。勿論、ミナのほうが高い。

 近接戦において、イーライの能力は弱くなる。視界内に対象の全身を収めることが不可能であるからだ。それだけ能力の出力は低下し、よって、抹消ではなく弱体化に留まる。


「っ!」


 ミナの能力出力は常軌を逸している。弱体化されたと言えども、レベル換算にして3上位程度は発揮できていた。

 ミナは再び能力が抹消される前に煙幕を炊く。


「厳しいな。簡単な妨害方法だが、やり方がやり方だ。いくらなんでも、対策は無理がある」


 イーライがやられたくないのは視界を遮られること。

 この煙幕は能力由来ではないため、物理的な方法で吹き飛ばすしかない。また、視界を遮るほどの煙幕は、相手からも同じ条件だが、ミナは何かしらの方法を用いて彼の居場所を把握しているようだ。

 その証拠に、この視界が最悪の状況下で、的確にイーライを狙って爆撃してきている。


(常に動き続ければ当たらないことからも、精度はかなり落ちてる。目で見られていれば、回避は不可能だからな)


 ミナの能力は発動から爆撃までにタイムラグが一切ない。そのためこの爆撃を回避することは不可能であり、唯一の対処法は射程距離外に逃れるか、爆裂を防御することのみ。


(となると、視認以外の方法で俺の居場所を探知している。ならばどうやって、か)


 イーライは考え始めて、一秒も経たずに結論を導く。


(⋯⋯あの星屑だな)


 星屑。爆裂が発生する前に現れる軌道。それは爆裂させずに滞留させることも可能な謎の物質。

 煙幕に紛れてそれを分布することで、居場所の探知が可能ではないのか。


(しかし、妙だな。だとすれば俺の能力で掻き消せるはず。⋯⋯いや、違う。この星屑、もしや能力由来ではない?)


 イーライが消去できるものは能力、もしくは能力由来のもの。

 例えば水を作り、操れる能力者が居たとする。イーライが消せるのは、能力者の能力の発動そのもの。能力者が操っている水。能力者が作り出した水の三つに限る。

 勿論、元からあった自然な水は消せない。それを操っている間は能力判定となり消せるが、操作をやめられた自然な水は消せなくなる。

 そう。それが自然由来のものであり、能力による干渉がなければ、イーライの『能力封殺フォービット』の対象外となる。


(⋯⋯わけがわからない。星屑みたいな物質、聞いたことも見たこともないが⋯⋯あるいは、ああ、そうか。能力による人体変化が原因か)


 水の能力者は水中でも呼吸できたり、息を止められる時間が長くなったりする。能力者は自分の能力への耐性を得たり、それに応じた変化が見られることがある。

 ミナもその類なのだろう。

 そういう能力者として、事実、とあるレベル6能力者が例として挙げられる。


(確か名前はアル⋯⋯アルジス? アルジェス? 何だったか忘れたが、そいつも現在の科学技術では認識できない物質を操る能力者だったな。ますます、こいつの能力の研究価値は高まるな。レベル5に認定されたのは、そういう側面もあるのか)


 何はともあれ、現状の話だ。

 ミナは星屑を煙幕に紛れさせている。透明人間を浮かび上がらせるように、漂わせた星屑の移動を把握して、彼女はイーライの現在位置を探知している、ということだ。


(残念なことに俺にはこの星屑はよく見えない。目を凝らしても。そして星華は、目を凝らさずとも星屑が見えるくらいにはそれを見る目がある)


 本来の星屑は、ミナ以外には見えない。ミナの能力が影響して普通の人にも見えるようになったが、煙幕の中でくっきりわかるくらいにはなっていない。しかし、ミナにはそれをはっきり識別できる目がある。

 星屑は能力の影響下を離れているため、消すことはできない。

 何より、今漂っている星屑は濃度が薄い状態だろう。だから余計に分かりづらい。攻撃には個別の星屑があり、それならば視認はできる。しかし反応はできない。


(⋯⋯キツイ。本気で殺す気なら今頃やられているのは俺だろうな。爆裂が一歩遅れているくらい、範囲と出力を今以上に上げればカバーできる範疇。殺さないようにしているからこその精度の低下。というか、星華はやろうとすれば⋯⋯まあなんにせよ、追い詰められているのは俺だ)


 本気の殺し合いなら、ミナは初手で広範囲爆撃をすれば勝利していた。

 イーライも初手で能力を完全に封殺し、銃撃で殺せていた。

 それをしなかったのは、殺せないからであり、実力が測れないから。


「⋯⋯実力ってのは本当にわかりづらいな」


 面倒だ。

 もう分かっている。ミナの戦闘技術の高さは、昨日まで中学生だったとは思えないくらいだ。

 実力は十二分にある。

 ああ、そうだ。この戦いは、最早試験ではない。

 戦闘、だ。


「────」


 『能力封殺フォービット』の説明。

 一つ、この能力はあらゆる能力を消し去る。

 二つ、条件は能力者を見ること、もしくは能力現象に手で触れること。

 そして三つ、この能力によって消し去った時、どれくらいの出力であったかを理解できるということ。

 なぜならばこの能力には限度がある。過去に一度しか限度に至ったとこはないが、確かにある。

 能力は身体機能の一つ。限度があるのは至極当然。ならば、その度合いも把握できて当たり前。


「能力には射程距離がある。つまり、能力者から距離が離れれば離れるほど出力は低下する。低下し始めた距離がその射程距離だ」


 ミナの最大射程距離は半径五十メートルだ。人を殺さない出力、丁度、対人戦で使う程度であれば、これは二百メートルまで伸びる。

 イーライはそれを知っている。

 だから、彼は煙幕から逃れた。爆撃を触れて無力化するという至難の業をしつつ。


「今、


 爆裂を消し去ったとき、確かに感じた出力の低下。

 ミナは視認されることを恐れておそらく煙幕の中にいる。イーライは煙幕から脱出していた。煙幕からの距離は目測で二百メートル弱。


「つまり、君はすぐその辺りにいるってことだ」 


 居場所はほとんど割れたようなもの。あとは弾丸の雨を降らすのみ。


「弾丸を能力で弾けば煙幕が掻き消え、視認できる。逃げれば音で分かる」


 イーライは拳銃を構え、そして連発した。やがて、煙幕の至るところに撃ち込み終わった。当たればそれで気絶しているだろう。


「さて、煙幕もそろそろ晴れる頃だ。自己申告をしろ。何発当たった? 虚偽でも、もう一度同じことを繰り返すだけだ」


 煙幕が薄くなり、中の状況が見えてくる。


「⋯⋯何」


 そこには──しかし、誰もいなかった。


「──い、しまっ!?」


 背後から、イーライは組み付かれ、地面に叩きつけられた。

 それをやったのは誰でもない。ミナだった。


「最初からわたしは煙幕の中に居なかった。ずっと、影に潜んでいた。全部、この時のために!」


 イーライが煙幕の中にミナが居ると思い、そこを狙えば、隙ができる。そこに居ると勘違いすれば、その他への意識は必然的に無くなる。


「⋯⋯なるほど。⋯⋯やられたな。万が一にでもバレたら君は不利も良いところになっていたのに。よくやれたな」


「あなたは実戦経験豊富ですから。こうでもして博打を打たないと、勝てないと思いました」


 星屑による探知。射程距離外に逃れることで煙幕の中に居ると予測する。何より、精度は低下しているとはいえ、爆裂を的確に消すことができる手腕。

 もし煙幕の中で戦っていれば、負けていたのはミナの方だ。


「それに、最後あなたはわたしの組付きに気がついていた。避けることもできたはずです」


「⋯⋯⋯⋯。⋯⋯分かっていたか」


 でも、とイーライは続ける。


「確かに組み付かれることは避けられたが、体制を大きく崩していた。二撃目も完全に避けることはできなかったさ」


 必ず傷を負っていた。致命傷にはならないだろう。戦闘は続行できるだろう。だが、一撃は一撃だ。完全に避け切ることはできなかった。


「⋯⋯まあ元から合格にするつもりだったが、晴れて今ので、再確認できた」


 イーライはミナから離れ、正面向い合って、はっきり言葉にする。


「──ようこそ、ミース学園能力学部救助科へ。歓迎するよ、星華美七」

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