第3話鹿児島県人会

後ろを振り向き、オジサンに、

「すいません、鹿児島の方ですか?」

と、尋ねると、

「そうだよ、兄ちゃんも鹿児島だろ?イントネーションでわかったよ」

と、言うとその隣のオジサンも、

「おいも、鹿児島じゃっど」

と、オジサンはチューハイを一杯奢ってくれた。

プチ県人会である。

ばあちゃん連中が耳が遠いので、大声で喋っていれが、これも御愛嬌。

オジサンが初めての経験は26歳だったと、話し、おばちゃんは、あなたはいくつ?

と、言うので、

「16歳です」

「まぁ、お兄さんったら」

と、肩を叩き笑い出す。そして、オジサンがふんわり卵焼きを出してくれた。

大将は、

「頑張らなあかん、人生は強く!」

と言って焼き場に立つ。

美味しいのだ、ここの卵焼きは。


この日はベロベロなるまで飲んだ。

僕はデブでサングラスなので、直ぐに顔を覚えられる。

他の客の話しでは、こんな小さな蛸ん壺の店内の客はそうそうたるお年寄り。

会社の会長さん、重役、僕は年金暮らしの趣味なのか?と、思っていたら大間違いだった。

だからと言って、僕のスタイルは変えない。

酔っ払いの話しをまともに聞いたらバカを見るが、僕はその話しを信じる。

信じる心が無ければ、呑み屋の常連としては、ペケだ。


蛸ん壺、店の雰囲気は中毒性がある。

また、美味しんだなツマミが。そして、1番のツマミは会話。

今宵も、昼からだが営業中の証、黄色の回転灯に吸い寄せられるのだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る