故に私達の心は二分する。二層仮想世界

秋風のシャー

序章

私が3歳だった頃。まだ、幼かった私は毎晩お母さんと一緒に寝ていた。母さんはよく、私に本を読んで聞かせてくれていた。


「母さん本読んで」

パジャマ姿でベッドの上で迫る娘である私をを優しく諭すお母さんの姿を今でも覚えている。

「はい、はい、今日はリーナが大好きな七神の泉にしよっか」

お母さんのお腹に背中を寄せ温かな温もりを感じながら頷く。

「うん、呼んで、呼んで」


「はい、はい、ちゅ」

「うひゃひゃひゃ」

「 コチョコチョ」

「うひゃ、ハッハッ、むっ」

「怒っちゃった、ゴメンネ」

「お母ちゃん、ちゅき」

「まぁ、私もよ。」


昔、昔ある所にそれそれは綺麗な泉がありました。その泉は七色に輝いており、七神の泉と呼ばれそこら一帯にはドワーフやエルフそこにしかいない希少種まで豊かな生態系が築かれ、外と独立した世界となっていました。彼らは時に敵対することはあるものの交流なども盛んに行っていました。しかし、ある時それは一転します。ドワーフの村で宝の地図が見つかったのです。


難しい言葉とかは分からないけど、読み語りをしてくれるお母さんの読み方は流暢で一気に情景が脳裏に映ってきた。


 「何だこれは」


ある日、鉱物を採掘するために坑道の中で仕事をしていたドワーフは何やら金色に光る巻物を見つけた。毎日の作業には時にお宝との出会いもあり、それが楽しみの一つでもあった。しかし、今回のは特に珍しかった。

「これは一体」

「おいおい、見てくれ」

見つけた筋肉質で一際目立つドワーフが作業中の皆を呼ぶ。

「どうした。どうした。」

「これなんだが、ここの下に埋まっていたんだ。」

「はて、なんだろう。分かるか。」

「ウーン、地図ちゅうことは分かるが、あとはな」

「長老に見せたらどうだ」

「そうだな、あの人なら分かるかもしれんな。」


「これを見て下さい。東の門の近くの坑道で見つかったのです。」

お腹が20cm、肩幅1m異型の爺さんがミネルバ長老である。

「これは? ウーン」

老眼鏡に虫眼鏡を合わせてじっくり観察する爺さん。地図を左右上下反転させ、暫くじっくり眺める爺さんに呆気をとられる。

「あ、あー」

不意に何か思いったように目を見開くと手を叩く。


「オー、この文字はもしやナムサムル語か? 見覚えがある。確か、2000年前に使われた文字だとかをワシが若い頃一緒に冒険をしていたクルトが言っておったわ、確かアヤツは今、クムルクルト族の長をしていた筈だ。」

「 では、クムルクルトの屋敷に私の息子を送ります。」

「うむ、東の統治を任されている。」


「ドン」 

木の家に帰り、息子を呼ぶが返事がない。

(遊びか)

ドンはお調子者であったが、足なら村一番で知られていた。


歌が流れる。

「七色の泉の地、ここは神秘の地よー7つの守り神が、この地を収めて居るのよ。」


小さな妖精達が川の畔を飛び回りながら歌を歌い楽器による音色を奏でている。それはそれは、可憐な顔をした少女達による演奏だ。妖精族は従来、不老長寿。つまり容姿はその生を得た段階で決まる。どこを見ても子供の様な容姿、10cm程の小柄な体に白、水色、紺と様々な色のドレスを身に纏い、背中の羽を器用に使い宙を舞っている。彼らはその小柄な体にフィットするドワーフお手性の特殊オーダーメイドの機材を使い、音色を奏でる。この神秘的な光景は多くの生き物を惹きつけ、不思議と愉快な気持ちにさせてくれる。歌に合わせて踊っている者も居る程だ。


木造の小屋の中では子供達が授業を受けており、農村ではドワーフのお婆さん、お爺さんが田畑を耕している。そんな自然溢れるこの地ではゆったりと時間が流れる。しかし、その中で慌ただしく今一人のドワーフの少年がこの地を走っていた。


少年は走りながら子供達に手を振り、出会った人に声をかける。とてもお転婆な少年だ。

 

「皆、頑張れよ」

「お兄ちゃん、うるさい」

いつもの光景に子どもたちも笑って返事を返す。罵声の中に何処か温もりを感じる。


「 おばさんこんにちは」

「こんにちはゴンくん、今日も頑張ってるのね」

「うん、日課だからね」


少年は自由気ままに走る。やがて、大きな木の近くに着くと、備え付けてある階段を登り始め、こなれた手つきで彼は木のてっぺんにたどり着く。

「ふうー」

ここからは色鮮やかな景色を一望できる。赤、オレンジ、紫と紅葉のように色鮮やかな草木や古き情緒ある街並みがたたずむ。彼はそこから見る景色がお気に入りである。その中でも一際目につくのが東西南北に流れている川だ。この地の名所と言って差し支えない。この地に流れる川は特別で七色に輝いており、七神の泉と呼ばれている。そして、その泉に因んでこの地を七神の泉のある地、ゴットレインと古来の者(いにしえの住人)達によって名付けられた。そこら一帯にはドワーフやエルフそこにしかいない希少種まで豊かな生態系が築かれ、外と独立した世界となっており、彼らは時に敵対することはあるものの交流なども盛んに行っていた。


因みに七神の泉の由来は虹のようだからという意味だけではなく、大昔に魔神が襲来した際に戦いの中心になったのがドワーフ、エルフ、クルムクルト族、グリフォン、オルドス、ゴーレム、ブルーノブルーの七種族だったことにも由来しているそうだ。本当かどうかは知らないが、伝説のようなものだ。皆これを授業で習う。さっきの子供達もこのお話を聞いていた様だった。


「やっぱ、最高!」

手を上げ背筋を伸ばしながら空を見上げる。

何処を見ても空は青く、雲の流れがよく見える。

暫くすると空には鳥の集団が隊列をなして飛行して来るのが見えてきた。オンバスという鳥の群れである。彼らは集団で行動を主とする鳥類だ。それを見たゴンはすぐさま行動にでる。

「しめた」

彼は手を空に向けて付き出す。


「 ファルブ」

すると、鳥の姿をした花火が打ち上がり、鳥の群れと並行して飛んでいく。一つ打つとゴンはそれを撃ちまくる。


無我夢中で彼は20体もの花火鳥を空へと羽ばたかせた。それはこの地に居る多くの者の目に留まる程の艶やかさで、鳥の群れと共に大地を飛翔していく。


「また、やってるよ、息子さん」


「俺の子はやんちゃだからな」

ドワーフの村の商店前で話しているのはゴンの父親メルボルンと親友のドワーフ、オーフである。


「ゴン君、最近張り切ってるからな」

「あぁ、儀式を終えて3年、待ちに待った本格的な授業をマンツーマンで受けることになった時は大騒ぎだったぜ。」

「でも、お前さんも教えてたんだろゴン君に魔法を?」

「いや、俺は魔法系統はそんなに得意じゃないから、あんまり教えてとらんな」

「そうじゃったな、お前さんは昔から脳筋じゃったわ」

「うるせぇ、俺はこれでも昔は冒険者で、筋肉戦士メルボルンで有名だったんだからな」

「そうじゃった、そうじゃった、力だけは凄たったな、魔法も弾き飛ばしとったしな」

「あん、力だけ?」

「おや、違う?」

「見せたるわ、勝負だ」


昔の話で彼等は盛り上がる。さすがに長年の付き合いは言い合いも派手だ。


魔法、いや違うこの世界では10歳を迎えるとエルフの統治する東門を通り七神の泉から東に10km離れた所にあるカムダムラの湖に行く習わしがある。その湖は女神が住まい、祈りを捧げると能力を授けてくれる何とも神秘的で謎めいた場所である。そして、それだけではなく自分オリジナルの能力を一つ授けてくれる。しかし、オリジナルの能力は誰一人被ることはできず、例え似ていても少し違いが存在している。また、不思議なことに親が死んだ場合、その能力は行き場を失い子供に引き継がれるという何とも遺伝の仕組みを逸脱した現象が起きる。まぁ、能力そのものが遺伝の仕組みを逸脱しているという見方もできるが、まぁ、それはさておき多くの者はその現象をこう言う、継ぐ物語と。

能力は10歳からずっとその者と共に歩みを進め、能力者が死んだとしても死と共に消え去るのではなく次の物語を探し子に移る。それはまるで寄生虫のようだ。能力は幾千の者の記憶を宿し宿主はそれ共に人生を生きるシステムそれこそがこの名の由来だ。そういう訳でこの地域の人々は何らかの能力を皆持っているという訳だ。結婚しなかったらどうなるかって?それは宿主に宿ったままさ。


彼は先生から学んだことを思い出しながら景色を眺めていた。


「そろそろ時間か」

ゴンは仰向けになって空を見ていた体を起き上がらせ、木を後に走りだす。ドワーフが管理する北門を通り七神の泉を抜け、隣に位置する村、カルスの村に着くと男の人が声をかけてきた。


「おっ、来たねゴン君」

「 うん、カスルツ先生」

カスルツ・フォートマグナム先生はゴンの魔法を教えている先生だ。彼はとても優しく、力も強い、そして、ドワーフでありながら背が高く1.9mあるそうだ。まぁ、力に関しては父ちゃんの方が強いらしいんだけど。

「今日は何を教えてくれるの」

「 今日は、座学だよ」

「えーー」

「大切なことさ、魔法を学ぶ上でね。魔法には属性というものがあって火、水、木、雷、土、風、光、闇の計8種類あるんだ。」

「へぇー、僕に前教えてくれた花火は?」 

「あれは、火と風を合わせて作った複合魔法だよ。」

「複合魔法?」

「そう、魔法は主に8種類に分けられるが組み合わせ次第で無限の可能性を秘めているんだ。」


「ふぅーん」

「興味なさそうだねじゃあ、これなら」

彼は目に見えないものをを掴み取るようにしてかき混ぜる仕草をする。それはまるで自然エネルギーを掴み取るように。 するとみるみるうちに色を帯び始める。緑と青を混ぜて空色にした物体、赤と青を混ぜて作った赤紫の物体、緑と赤を混ぜて作った黄色の物体を作り出し中に浮かす。その様子は工作をしているようだった。完成された玉の周りは物凄い光を放っている。

「すげー、綺麗だ。」

「そうだろ」

そう言うと、作り出した3つの物体を合体させ始めた。するとなんと白色の物体ができたではないか。

「光を混ぜると色が変化するんだ。俗に言うところの光の三原色!」

「 教えて!」

「おっ、興味持ったか」

「うん、それ凄いおいらもそれやる」

「よーし、頑張るぞ!」

授業が始まった。彼の授業はいつも正確だ。手取り足取り教えてくれる。

「ゴン君、まず手を広げてそこに色ができるように想像するんだ」

「色?」

「そう、何事も想像が大切なんだ、そのためには何度も見て感受性を豊かにしなければならないからね」 

ゴンは云われた通り想像を実行する。

「うっー」

けれど、うまく行かない

「もっと、想像するんだ。俺の場合、赤は情熱、青は海、緑は森林を想像するかんじかな」

「イメージか」

再び、想像を開始した。今度は目を閉じて。

すると、目を閉じたはずの目に光を感じる。

「うっ、何だこれ眩しい」

「いいぞ、そしてそのまま周りにあるエネルギーを巻き取るんだ。」

言われた通り、ゴンはエネルギーを掴むイメージを持つ。

「おーー、いいぞ!・・・目を開けてみな」

目をゆっくりと開く。するとそこには眩い光を放つ球体が手に載っている。それはまるで小型の星のようだ。目を開くと同時に瞳に映る光に目を輝かせる。

「うわーー」

あまりの明るさに自分でも驚く。

「やるじゃないか、そのイメージを忘れないで」

先生も関心した表情で腰に手を当てグッドのポーズみを取っている。

「うん、感動した。まるで星のようだよ」

「そうだろ、因みに何をイメージしたんだ」

「赤ちゃん」

「え・・・」

彼の返しに先生も驚きの表情を隠せない

「 赤さん?」

「赤さん?・・・うん、そうだよ」

「何で赤ちゃんをイメージしたんだ?」

「えーと、あかっていうから」

「 はっは、はは」

先生は声を出して笑う。

「 そうか、そうか、うん上手い、初めてだよそれは」

「 そうかな、結構いい感じだけど」

「まっあ、そのイメージを大切にすればまた、出せるぜ!」

そう言われもう一度想像をしてみる。

「本当だ」

手の中に同じ光の玉を作ることができた。


「 よし、次は配合だな、他の色も想像してみよう」


「他の色か、じゃあ緑にしよかな」

ゴンは再び想像を開始する。すると瞬く間に緑の球体が完成する。

「すごいじゃないか、一発とは」

「緑の物は毎日見てるからね」

毎日、外で遊んでいる成果が出たようだ。


「よし、次に赤を作ってそれを緑の玉に混ぜてみせてくれ」


ゴンは赤ちゃんと自然を同時に想像する。ゴンの頭の中では今、赤ん坊が一人で森の中で一人で生活している情景が想像されている。それはまさに修羅場だ。


「やった、できた」

目を開けると黄色球体が手に載っている。

「早いな、流石だ」

「そうかな」

「そうだ、だが初歩中の初歩だけどな」

「えーーー、すごい褒めてくれたのに初歩か」

ゴンは頭を横にプルプル振るいながら落胆した表情を見せる。

「まぁ、このペースなら2年後にはある程度できるようになるだろう」


「そっか、2 年後か」

ゴンは2 年後の姿を思い浮かべる。

「うぉー、もっと教えて、早く」

待ちきれない思いが溢れ出す。

「まだ、やるのか、もう疲れてるんじゃ」

「平気!楽しいもん」

真っ直ぐな目で先生を見つめる。


先生はそんなゴンを見て、笑みを浮かびながら、ゴンの頭を撫でる。羽織っているマントをたなびかせながら。

「よし、トコトンしごいてやる」

とこちらもやる気に満ちた表情でグーサインを送る。


ゴンが家に戻ると食事がいつもの様に食事が用意されていた。

お母ちゃんの料理はすごく美味しいのでゴンの楽しみだった。

頬張るゴンを前にお父さんが喋る。


「 ゴン、お前に重要な任務を託したいんだがいいか。」

ゴンは頬張りながらお父さんの方を見る。

「う、どうしたの」

「実は、仕事中に地図を見つけてな、クルムクルトの館に行き、地図のヒントを聞いてきてほしいのだ」


「何、それ」

「地図だ、宝の」

「宝?美味しいの?」

「バカヤロー、宝石とか金銀、財宝とかの位置を示したものだ。」

「へぇー」

「行ってきてくれるか」

「 ウッ」

「魔法の練習にもなるかもしんぞ!」

「そっか、じゃ行ってくるよ。」

「おい、明日でいい、夜は危険だからな」


翌朝、身支度を整えお母ちゃんの見送りを受ける。

「いってらっしゃーい」

「行ってきます。」

ゴンは元気いっぱいに返事をし、七色に輝く川に沿う岩を悠々と駆け抜け、東へ東へと走しり出した。

「ゴンちゃんどうしたんだい、そんなに慌てて?」

「ちょい、お使い」

途中知り合いに声をかけられることがあるがゴンはスピードを落とさず進んで行く。


しかし、途中で知り合いのエルフ、クルフに会った。 

「よぅ、ゴン何してんだ?」

「おお、久しぶり、ちょっとね」

「何だよ」


「ドワーフの村で地図が見つかったんだ。・・・」


クルフは興味心身でゴンの話を聞き、


「ちょっと見せてくれ」


と言い少しばかし考えを巡らせたかと思うと顔をしかめながら


「あははー分かんねーや、ちょとエルフの長に聞いてみるや」


といい一目散に行ってしまった。

「おい、まてや・・・まいっか」


ゴンは口笛を吹き森の生き物と遊びながらクルフの戻りを待っていると一輪の花を見けた。小さく可憐な花だ。そうだ、母ちゃんの為に持ってかえるか、そう思い茎の根っこの辺りを掴み引っ張ろうとする。


するとその時遠くから声がしてきた。


「ゴン君だめだ!」


そう言われた頃には時既に遅くゴンがその花を掴んでいた。

「あちゃー」

急に花が肥大し、ゴンを丸呑みにしてしまったのだ。 


「なんだ、なんだ、おーーー、やばい誰か助けて!」

悲鳴が辺りを響かせる。

「助けてください」


そうクルフが言うまでもなく、クルフの隣にいた方は、目にも留まらぬ物凄い速さでゴンの元に近づき片手剣で正確無比な攻撃を繰り出した。風を切る音と同時に花の口が開きゴンが出てくる。


「ファー、臭い」


ベドべドになったゴンは顔をこれまたベトベトな手で拭う。


「いまのは、パストリモスと呼ばれる花だよ。なんでも飲み込もうとするんだ。」

彼は手ぬぐいを渡す。


「ありがとう、 助かった。やっぱすごいや!」


ゴンの尊敬の眼差しの前に立ってあたのエルフの長、パラソルさんだった。


「やぁゴン君、お父上は元気にしているかい。」

 

「あぁ、もううるさすぎるくらいに」


ゴンの父ととエルフの長は昔からの友人で今も親交があり、ゴンとも顔見知りだ。


「ゴンくん早速だけど、その地図にはエルフの矢キリグズの矢が描かれているね、もしかしたらエルフにも重要なものかもしれない。だからクルフも連れて行って貰えるかな?」


「ウ~ン」

しばらく仏頂面で考えるゴン。

良いよな、一人で行けとは言われてないし。


「まぁ何も言われてないしいいよ」


「おぉそうか、良かった。勿論財宝狙いだよ。」


「え?チョッどういうこ・・・」

ちょっと、そう言われてゴンは悲しくなった。尊敬してたのに・・・


それを悟ってかパラソルさんが慌てる。

「うそうそ、そんなことするわけないよさっきドワーフの村長に通信したら、一人だと心配だから誰か付いていてやってくれて言われたんだよ。」

「なぁんだ、そういうことならいいよ。なんったってパラソルさんの頼みちゃー断れないからね」

ゴンはパラソルにグーサインを向ける。それに応えてパラソルさんも同じサインを向けた。

ということで2人でクムルクルト族に会いに行くことになったんだが何せ血気盛んな二人だ。森を抜け猛スピードで駆け抜ける。

「よし、ゴン競争だ」 

クルフは持ち前の瞬発力を活かして木の枝から枝を華麗に飛んでいく。


「あ、汚ねぇ 待てぇ」


そう遊びながら彼らは向かっているといつの間にか東の門の前に着いていた。ゴンが門番に


「クルムクルトの長にお話をしにきました」

と不器用な敬語で言うと門番が鐘を鳴らす。


「入れ」


付いていくとそこには木と瓦ででできた立派なお屋敷が佇んでいる。


中に入り2階の奥の部屋に案内されるとそこには白い白髪に立派な髭を蓄えたクルムクルト族の長と思わしき方が座っている。


「実は」

ゴンが話し始めると

「それは、ナムサムル語で間違えない」

ゴンが話すよりも先に言い当てた。

ゴンが驚いた表情をしたのもつかの間、彼は直ぐ話しを続ける。


「驚いた表情じゃな、クルムクルト族の一部には相手を見ると思考の一部を読み取れるのじゃよ。で、それじゃが泉の中心にある祠に上弦の月の日 7つの聖遺物を備えよ、さすれば汝らに山にも勝る富が渡るであろうと書いてあるな。」


「7つも?」

余りの話の進展具合にも驚く2人。


「そうじゃ、一つは北村を統治するドワーフの持っているドワーフの首飾り、2つは北東の方角を統治するエルフの持つキリグズの矢、3つ目は東を統治する我らクルムクルト族のクルストリフィと呼ばれる帽子じゃ。


そして、4つ目は南の村を統治するグリフォンの持つグリフィスの羽、


5つ目は南西を統治するオルドスと呼ばれる大男が所持するカタスケの斧


6つ目はゴーレムの持つエクスプレスと呼ばれる大砲の形をしたもの。


そして最後、7つ目が人間によく似た種族であるブルーノブルーが持つ巨大なスピアスロワー投槍器だ。」


「じゃあ、これから後4つの聖遺物を取りに行かないと行けないのか」


「ゴン、ワクワクするな」


目を輝かせながらゴンに向かってクルフが言う。


「そうだな」

ゴンも同様に目を輝かせる。


「 ゴン君、クルフ君こっちにおいで」

そう案内されゴン達は付いていく。

「ここは」

ゴンは不思議そうにあたりを見渡す。

「宝物殿じゃよ」

そこには様々な物が展示されてある。

「なぜ、こんなに展示しているんですか」

「それは、私がコレクターじゃからじゃよ」

「へぇー」

クルフは興味津々だ。

奥に行くと長老が指を指す

「コレがクリストリフィじゃよ」

そこには白色でつばが長く、何とも上品な出で立ちの帽子があった。それはどう見ても普通の者のサイズではなかった。

「でっけー」

「身に着けるものじゃないからの」

「これが聖遺物か、スゲーや、こんなの身に付けられるのか?」

クリスは人の話しも耳に入らないくらい見惚れてる。

「身に付けられるといえばつけられるが、まぁ難しいじゃろうな」

「へぇー」

「まぁ、それはさておき、お前さんたちはこれからこれを集めるんじゃ」

「うぉー、楽しみ、なぁ、ゴン」

彼らの様子をまるで昔の自分を見ているかのような表情で長老は眺める。

「さぁ、そうと決まったらとっとと行ってきなさい」

「うん、・・・あの聖遺物はどうするんですか?」

「 クリストリフィのことか?」

「うん、僕たちこんなの持てるかなって?」

「それなら、後でお前さんたちの村に送っておくから大丈夫じゃ、持ち歩かせるのも危ないし、それより早く行ってきなさい」

ゴンとクルフは目を互いに見つめ合う

「よし、行こうゴン」


ゴンとクルフは長老にお礼を言うと期待を胸に屋敷を後にする。夕日の光が彼等の冒険を後押しする様に差し込む。

「行ってきます」

「ふふ、昔の儂を見ていようじゃ・・・」

「元気で」

「こら、前向かんかい」


そしてこれから彼等の勇気と希望に満ちた冒険が始まった。


14年後。

リーナちゃん朝ですよ。

「眠いよ、ムー」

ちゅ

頬に受ける温もりの感触に思わず、目を覚ます。

「今日用事あるんでしょ。」

優しい声で耳元で囁かれる声に思い起こされる。あ、そうだ。

「ご飯できてるからね。」


「ステリーナ、おはよう」

「おはよ、パパ」

髪もボサボサでパジャマ姿でダイニングに向かう。

朝食はパンに目玉焼き、スムージーとヘルシーなものだ。

「リーナ、課題だったか締め切り近いんだろ。終わったのか。」

リーナは目を泳がせる。

「終わってないけど、大丈夫、大丈夫!」

「本当か、お父さん手伝うよ」

「私もやるよ。」

「ママまで、大丈夫だって」

二人には言えないけど、目処は立っている。

私は朝食をとっとと済ます。

「 ごちそうさま」

急がないと締め切りに間に合わない。私の家は魔法使いの家で、今まさに魔法学校の課題に追われているのだ。


私は部屋に戻り、着替えを済ませ。誰も居ない部屋の中で語りかける。

「ミル、あの人どうなってる」

腐りかけの食材見たいになってるよ。

ほんとにあの人でいいの。

「大丈夫でしょ。」

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