第2ラウンド

四足で移動しながら4本の背中から生えた長い腕で攻撃をしてくる

攻撃の頻度が急に上がる

四足になったので常に澪を視界に入れるように動きながら攻撃が出来るようになった

2本は澪を掴もうと襲いかかり2本はハエ叩きのようにひたすら振り上げて澪の居る所に振り下ろすを繰り返している


「厄介だなぁ!」


『えぐっ』

『行動パターン変わったァ!』

『形態変化する魔物なんて初めて見たな』

『第二形態あるのか、初見クリア無理でしょこれ』

『攻撃パターンも変わった初見殺しが過ぎないか』

『本気モードか』

『レイさん頑張れー!』


通常の回避と異能による回避を繰り返して攻撃を避ける

休みなく襲いかかってくる攻撃を避ける事で手一杯で攻撃をする暇が無い

視界の外に異能で移動してもジャンプして澪の居場所を確認する

着地の時に手や足で踏もうとしてくる

(4本の腕は細い、異能で背中に回って切り裂けねぇかな。いや、視界外に行くとジャンプしてくるからなぁ)

槍を短くして全力疾走で逃げる


『さすがにこれはもう無理か?』

『逃げるしか無くなってるもんねシズクちゃんは戦えないし』

『こりゃ無理だ』

『異能連続発動できないのかな』

『死ぬ前に逃げてー』


コメント欄は諦めモードに入っているがシズクと澪はこの戦いを諦めていない

諦めるにはまだ早すぎる


「まだです」


『へ?』

『いやいや、あれは1人ではどうにもならないでしょ』

『逃げた方がいいって!』

『今回は諦めた方がいいって』


シズクはまだ余力があると考えている

第二形態になってから攻撃は出来ていないが攻撃を一切受けていない

3つのうち1つが耐久力が上がる能力、防具の性能を上げる能力だが肉体強度も上げられる

直撃でさえなければ防具を持たない澪でも致命傷は避けられる


「あれやるか」


攻撃が来ると同時に異能で回避する

その場所は自分の居た場所の少し上、叩きつけられた手と入れ替わるように移動する

腕に槍で攻撃をする

異能で離れる、そしてまた逃げるを繰り返して4本の腕にダメージを蓄積させる

その手は何度も通じず空中にいる澪を挟むように2本の手を勢いよく合わせる


「まぁ来るよね」


澪は合わせた手の上に立つ

この行動に出る事を予想していた澪は2本の腕に槍を突き刺して異能で移動する

細い腕には槍の攻撃が深く刺さる

だが一向に動きが鈍らない

(どうなってるんだ? なぜ行動が鈍らない。痛みを感じないのか?)

今まで戦った魔物はダメージが蓄積するとそれに応じて動きが鈍くなっていた

痛みがあるのか個体によっては傷付いた腕では攻撃をしなかったりする

なのにこの魔物はかなり攻撃を加えたのに全く鈍らない、傷が癒えている訳でも無いのに


「このやり方だと時間かかるなぁ。あっそう言えばシズクの異能って」


七彩の2つの防御能力を思い出す

現在シズクは自分の身を守るために使っている

シズクは異能で攻撃を避けてる澪に対してどう防御を展開すればいいのか分かっていない

下手に使えば移動の妨げになる

此処ぞという時のために移動しながら複数の画面とシズクの居る地点から見える景色を見て確認する

シズクは出来る限り魔物の視界の外に居るが澪を追いかけている際にシズクが視界内に入る事がある

だが魔物は完全にスルーして澪に集中している

脅威はただ1人

全力で追いかけ回している

異能を駆使してヒットアンドアウェイ戦法を繰り返す

(攻撃のペース落とさないと少し残りが心許ないな)

澪の異能には条件がある。発動時に条件を満たさないと異能は発動しない

戦闘中にその条件を満たすように行動をしないとならない

異能を節約して回避行動を取り続ける


「シズク! 攻撃を暫く防いでくれないか!」


シズクに呼びかける


『まだ戦うつもり?』

『何か作戦でもあるのか?』


「分かりました零さん! お任せを! ルィズォ」


文字を書いて発音する

澪の周りにシールドを4つ展開する

魔物の4本の手による攻撃を防いでいる

シールドの位置を確認して移動させて手を防ぐ


『おぉ! 攻撃防いでるぞ!』

『さっすがシズクちゃん!』

『でも何をする気なんだ?』


狙いは移動に使っている手、シールドが守っている間に素早く攻撃を連続で加える

肉を斬って削っていく

どんどん速度を上げていく

カンッ! 硬い何かにぶつかり槍が弾かれる

(骨か?)

白い何かが見える

打撃も加えて骨に攻撃をし続ける

魔物は攻撃を加えているが全てシールドに防がれる

ヒビが入りシールドが砕けそうになると同時に新しいシールドを張って守る


『頑張れー』

『行けるぞー!』

『やっちゃえ!』

『強えぇぇぇ!』


諦めモードだったコメント欄も再び盛り上がりを見せる

勢いよく振るった時バギッと音を立てて骨にヒビが入る

ヒビの入ったところにもう一度攻撃を叩き込むとヒビは広がっていき腕の骨が砕け体勢を崩した魔物が顔から倒れ込む

倒れ込んだ事で頭に攻撃が出来るようになった

骨をやられた事で立ち上がれない

細い腕では体を支えられない


「よし倒れた」


『おぉ! 足をやったぞ!』

『体勢崩して倒れた』

『レイさんつえぇ!』

『マジか、やりやがった』


澪は異能で魔物の顔の前まで移動をする

シズクはシールドを移動させて澪を守っている

丁度時間が来てバフを張り替える

細い腕で攻撃を仕掛けるが全てシールドによって防がれる

魔物はシズクをスルーしていたがそれが間違いだった

この場で一番最初に倒すべきなのは澪ではなくシズクであった


「さてと」


澪は仮面の中で不気味な笑みを浮かべる

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る