第26話 絶望の時間

 繧オ繧ォ繝「繝/ダークエルフ/二十八歳/63?ァ

 レベル53 冒険者ランクC/

 HP荳肴?/MP荳肴?

 状態異常/鮟定干邊セ逾樊髪驟?逞幄ヲ夐コサ逞コ/迥カ諷矩コサ逞コ。

 エクストラ・スキル/透明化/暗殺アサシネイト/物理攻撃回避/夜目/豈定?先?ァ


「《夜明けの旅団》だと……。ふざけんな!」

「はあ!? 冗談だよな、コウガっち。なんだよ、じゃあ、まさかアレが──」


 文字化けして読み取れない所もあったが、HPゲージが真っ黒に染まっている。明らかに異常だ。名前が文字化けで見えなかったものの、忍者めいた黒の装束に全身を包帯で巻いていた人物となれば──。


「《夜明けの旅団》で暗殺アサシネイトが使えると言ったら──暗殺者のムラサキだ」

「あが、あああああああああああああ!」


 怒号。人とは思えぬ声。

 たったそれだけで身が竦んだ。俺たちを敵と認識したのか緋色の瞳が怪しく煌めき──直後、瞬間移動をしたかのように、黒魔獣は俺たちの間合いに飛び込んだ。素早く両手にダガーを持ち、俺と瀧月朗の首元に肉迫する。

 刹那、それよりも閃光が煌めいた。


古龍天剣流こりゅうてんけんりゅう抜刀の型、波風風裂なみかぜふうれつ


 きん、と刀を鞘に戻す音だけが聞こえた直後、黒魔獣の胴体が切り離され、腕、足、頭が肉片と化して周囲に転がり、血の雨が降り注いだ。


(まったく見えなかった)


 ハッとして俺は肉片から漆黒花の核を探す。一度器に根付いた漆黒花は、その核を潰さなければ肉体は超再生してしまう。

 雲が差し掛かったのか日差しが消え周囲が薄暗くなる。

 俺はふいに視線を空へと向け──目を疑った。


「瀧月朗!」

「煌月よ、案ずるな。漆黒花の核ならここに──」

「逃げろ!」

「!」


 言うより先に体が動いていた。影が差し俺たちを凌駕する巨大な存在が突如現れたからだ。魔物リストの中で危険種とされている三頭三体の怪物、三頭重装番人ゲリュオーンは三人の男の身体が腹部で一つに繋がっており、全身甲冑に楯、剣、弓、槍という重装歩兵のいでたちは全長二十メートルを超える。


 刀剣を振り下ろしただけで大地は抉れ、花畑が消え去り巨大なクレーターに早変わりした。


「ぐっ……」

「がっ」


 直撃こそ紙一重で避けたが、あまりの衝撃に俺と瀧月朗は吹き飛んだ。ジャックは距離を取って投げナイフを投擲するが、甲冑相手に効果は薄い。


「煌月先輩、私が渡したブレスレットは付けていますね!」

「ん、ああ!」

「──っ、すぐに戻ります! 無茶したら駄目ですよ! 絶対に!」


 少し離れた所にいた陽菜乃は躊躇うも全速力でアルヒ村へと走り出す。

 それでいい。

 この中で援軍を頼むのなら陽菜乃しかいない。四人の中で一番HPが低く、防御力の薄い彼女の場合、一撃で即死の可能性もあるのだから。粘るのなら戦士職のほうがいい。


(ギルド会館のクエストの中で、最凶最悪の魔物がなんでここに?)


 俺たちが構えた瞬間。


 ──がああああああああああああああああああ!


 咆哮。

 先程の黒魔獣よりも肌に突き刺さる殺気と威圧は桁違いだった。三頭重装番人のHPゲージが三つ表示された瞬間、心が折れそうになった。


 甲冑が異様に赤黒く、先ほどの雄叫びを上げておきながら三頭重装番人の息遣いが感じられない。腕や足に漆黒の蔓のようなものが見える。目を凝らすと兜の中は空洞になっており、真っ赤な二つの双眸とは別に黒いなにかが揺れ踊っている。


 それがなにか気づいた瞬間、血の気が引いた。

 大量の、

 漆黒花──つまり眼前にいるのは魔物ではなく、黒魔獣だと否応なく現実を突きつけられた。


 荳蛾?ュ驥崎」?分莠コ。

 HP荳肴?/MP荳肴?

 貍?サ定干縺ォ豎壽沒縺輔l縺滓ュサ縺ォ菴薙?ら岼逧??逡ー荳也阜莠コ縺ョ谿イ貊??よサ?⊂縺吶?よサ?⊂縺吶?よサ?⊂縺吶?よサ?⊂縺吶?よサ?⊂縺吶?よサ?⊂縺吶?よサ?⊂縺吶?よサ?⊂縺吶?よサ?⊂縺吶?よサ?⊂縺吶?よサ?⊂縺吶?よサ?⊂縺吶?よサ?⊂縺吶?よサ?⊂縺吶?よサ?⊂縺吶?


 鑑定眼を使っても文字化けしか表示されず、有益な情報は得られなかった。


(一年前に行方不明になった《夜明けの旅団》、黒魔獣化した三頭重装番人。大森林で遭遇して相打ちになった死体に漆黒花が寄生した? だがあの巨体で徘徊していて他の冒険者が気付かなかったなんてあるか? まるでピンポイントで転移したような──)

「来るぞ、煌月」

「あ、ああ!」


 大振りの槍と剣が同時に俺たち目掛けて振り下ろされる。

 瀧月朗は槍の坂輪に飛び移り、そのまま柄を駆け上がっていく。


「これでもくらえ!」


 ジャックは投げナイフの代わりに、プチトマト程の手榴弾へと武器を変える。派手な音と爆炎が三頭重装番人の動きを鈍らせた。本来ならその爆破一つで暴狂猪や、一角兎ぐらいなら倒せる火力だ。


(炎系ならダメージが与えられる。なら――!)


 今の俺は盾役になることも、接近戦で瀧月朗並みの火力もない。だからこそいざという時のことを考えてMPを最大限活用できる魔法武器で火力補填しようと準備してきた。


 選んだのは魔法弓。

 弓の練習は《夜明けの旅団》の団長、弓使いサカモトから習ったものだ。時間がある時に稽古をつけてくれた面倒見のいい人。サカモトは、きっと生きている。そう──思いたかった。


(ナナカマドの枝から作った幻獣不死鳥フェニックスの弓で、出力を最大に設定……)


 鍛冶師クスノキの試作品で、今回は性能を試すつもりだったのだが、とんだ初披露になった。


炎之矢フレイム・アロー!」


 炎に包まれた矢は一撃放った瞬間、凄まじい速さで三頭重装番人の肩に直撃、爆ぜた。砲弾並みの威力は、HPゲージをグッと減らす。


「コウガっち、それ狡くない!? オレと同じ地味冒険者だっただろう! 裏切り者!」

「今それどころじゃないだろうが!」


 この魔法武器はMP消費が激しいので一発撃つごとにガンガンMPが削られていくものの、炎の矢の威力はBランクの魔法使いと同等の攻撃力を叩き出す。

 爆音が轟き紅蓮の爆炎が甲冑を溶解し、形を歪ませた。


(チッ、狙いが逸れる)


 一発撃つごとに指先や頬など炎症を起こすが、構わずに撃ち続けた。

 俺の狙う場所は兜の奥の一点だけだ。漆黒花は炎魔法に弱い。兜の奥を狙って打ち込むが六つある手がそれらを遮る。


「やっぱガードが固い」

「オレが腕の三つぐらい誘導で何とかする。もう半分はソウちゃん!」

「承った」


 瀧月朗は腕に狙いをつけて駆け出す。


「古龍天剣流抜刀の型──不知火雷撃しらぬいらいげき


 さらに加速し、目にも止まらぬ速さで三頭重装番人の腕を斬り落としていく


 ──ああああああああああああああああああああ。


 瀧月朗は残った腕や肩周りに素早く移動しつつ、次の攻撃を突く出すためタイミングを見計らう。まだ戦闘を開始して数分と経っていないが、体感的には数時間戦っているかのように感じた。


 拮抗──いや瀧月朗がいることでギリギリ戦線が維持できているだけで、このまま長期戦になれば確実にこちらが潰れる。


(一か八かで《竜狂化ベルセルク》を使うか……だが)

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