not my business,but ②



「脅威度を測定…」


 もはや手癖みたいなもので、俺は甲冑の魔人が現れた瞬間には測定を開始していた。


 脅威度、1/10ワン・オブ・テン以下と断定。

 勝率、100%。


 一先ず安堵しつつ出方を伺っていると、ある違和感に気付く。


 四人が着ている甲冑が、あまりにシンプルだったのだ。

 普通、自身の所属がわかるマークや、せめてどこの国かくらいわかりそうなものだが、彼らの鎧は意匠ひとつ無い単純な甲冑だった。

 だが、ただの野盗などではないはずだ。

 全員が全員同じ装備など、寄せ集めの野盗では揃えられない。


 であるなら、答えは一つだ。

 あえて、自分達の所属を隠している。

 現に、安物の甲冑の下に着込んだチェーンメイルや剣などは良い装備を使っており、フルフェイスな点も含めて隠匿のためのポーズである可能性が高い。


「おい、貴様ら!何をしている?見たところ森人ではないようだが、その子供の関係者か?」


 粗野な男の声で、甲冑の一人が声をかけてきた。


「いや、違う」


「なら、こっちに寄越せ!それは我々の獲物だ」


「獲物?」


「そうだ。邪魔立てするなら、貴様も殺すぞ?早くしろ!」


 どうやら興奮しているようで、凄まじい剣幕である。

 それもそうか。

 恐らくこいつらは村を燃やし、村民を殺し、逃げた子供を追い立ててここまで来たのだろう。

 かなりの興奮状態でもおかしくない。


 と分析していると、叫んでいる男の隣にいた者が手元の弓を引き、俺に照準を合わせていた。


「少しは落ち着いたらどうだ?何があった?何故こんな事をしている?」


「黙れ!早くしろと言っている!出来ない事情があるのか?庇い立てするのか!?どこの誰だか知らんが、余程死にたいらしいな!?」


 俺としてはこの魔人側の事情なんかも知りたかったのだが、会話が成立しそうになかった。


「構わん!撃て!邪魔者は排除する!」


 その合図で、本当に矢を撃ってきた。


 しかし、俺に当たる寸前、勝手にパルスシールドが一瞬だけ展開され、弾かれた。


「っ!?なんだ今のは!?」


 驚愕し、魔人たちが後退る。


「レムナント1番」


 お気に入り登録していると、わざわざローブの懐から取り出す必要がなくなる。

 呼ぶだけで俺の右手には武骨な、デザートイーグルのような拳銃が握られていた。

 それを弓を引いてきた魔人へ向け、躊躇なく引き金を引く。

 バゴンッと重たい反動と炸裂音がなり、魔人の胴体が弾け飛んだ。


「なっ!?はっ!?なんだ、何が起きた!??」


 思った以上に柔らかく、周囲一帯に臓物や血が飛沫してしまった。

 しかも彼らは今、何が起きたのかも理解できていないようだった。


「おい、まさか本当に銃がわからないのか…?ライア、これは一般的な反応か?」


「はい。先ほども言いましたが、科学技術の全ては千年前に淘汰されてしまったので」


「知識や伝聞としても伝わってないのか…なら、少し可哀そうな事をしたな」


 銃を知らないという事は、今彼らは突然仲間が破裂したように見えているのだろう。

 実際、俺が次の照準を合わせても怖がっていない。

 銃と、さきほどの死が結びついていないのだ。


 弓を射るという事は、俺を殺そうとしたという事。

 撃ち返しても正当な防衛行動だと主張できると思ったのだが、これでは差があり過ぎるかもしれない。


「おいお前ら、彼我の戦力差はわかったろ?少しは話す気にも──」


 歩み寄ろうと近づいた瞬間、魔人たちは剣を引き抜いた。


「このっ、化物めッ!!森人どもの秘密兵器なのか何なのか知らんが、ぶち殺してやるぞクソ女ッ!」


 息巻いて、三人がかりで俺に向かってきた。


「だめだこりゃ」


 面倒くさくなってきたので、俺は目にも止まらぬ速度で照準を動かし、引き金を二回引く。

 リーダーらしき男の両隣にいた魔人の頭を吹き飛ばし、さらに狙いを下に向けた。

 最後に残った魔人の右足を撃つと、根元から足が吹っ飛ぶ。


 これが、男たちが走り出して一歩を踏み出す間に起きた事である。


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