第25話 怒れる弁護士
「そうですか。では説明させていただきますね。校長と教頭に今日話しを聞きに来たのは、菊池翔太君の事で話があるからです。どうも酷い対応をされたそうで。」
「わっわかりました…今から呼んできますので、ここでお待ち下さい‼」
学校側としては、俺のような弁護士は目障りだと感じるはずだ。だからどこかで仕掛けてくるはずだ。
「…はい。分かりました。ご苦労さまです。」
「どうしました?」
「あっいえ。大丈夫です。校長室に案内しろということでしたので、これから案内させていただきます。どうぞこちらへ。」
俺は眼の前の事務員のことを少し不憫に思いながらも、校長と教頭…そしてあの場に居た全ての先生に対して一度制裁を加えることにした。今日はその一端だ。
今日で終わるわけではない。むしろこれからが始まりと言っても過言ではないだろう。
「今日はよろしくお願いします。私、弁護士の東雲魁戸と申します。」
「こちらこそよろしくお願いします。その…本日はどのような要件で?」
「数日前ですかね。退学届を渡された生徒さん…まぁ菊池君がいらっしゃいまして、その生徒さんの代わりに私が来ました。それと一体どのような調査を行われたのかを調べに来ました。」
「そこについては分かっています。私達は確定として、他に誰か呼びましょうか?」
「そうですね…取り敢えず、菊池くんと話をした全ての関係者を呼んでくれれば大丈夫です。もしかすると追加で他の方を呼ぶ場合もありますが。」
「わかりました…それじゃあ少し待っていてください。」
そうして校長は一度放送室に向かった。数分すると…
『二年生の学年主任、2-1のクラスの担任は至急校長室に来てください。繰り返します…』
放送…凄い懐かしいな…中学校での給食で放送をしていた人がいたのを思い出すな。
そんな事を考えながら数分待っていると、校長と教頭と思われる人たちが最初にやってきた。
「校長先生‼今は授業中ですよ‼」
「本当ですよ‼」
「まぁ待ちたまえ。そこに居る方と話を我々はしないといけないんだ。」
言動に違和感しか無いんだが…ここから録音するか。
今回俺が持ってきたのは、録音機器だ。正直これがあれば証拠につながる。まぁこの人たちが失言してくれた場合に限るけど。
「私はこういうものです。」
「弁護士…弁護士だと!?」
「弁護士!!どんな要件で我が高校に?」
「たしか数日前に、一人の生徒に対して退学届を渡しましたよね?」
「えぇ…そうですが…それがどうかされましたか?」
「退学届を拝見させてもらいました。正直作りが甘いです。それに加えて、退学届を渡された本人から私に相談があって此処に来ました。」
「取り敢えず把握しました。こちらにどうぞ。」
「少しお待ち下さい。1人まだいらしていないようですが?」
「教頭は今、職員室にて現在テストの採点を行っています。もう少しだけお待ち下さい。」
「…今すぐ呼んできてください。」
「はい?」
「だから今すぐ呼んできてくださいって言ったんですよ。ここの学校に弁護士が来た意味…それがわかりませんか?」
「どういう意味です?」
「貴方の退学処分に対して相談主は一部不服を抱いています。ですからそれを全て明らかにして、全てを伝えさせていただきます。もし調査などを行われていないようでしたらそれこそ大変なことになりますね。」
「校長先生はねぇ!!素晴らしい方なのだよ!!君みたいな一介の弁護士が変なことを言うんじゃない!!」
「冨士山先生!!少し黙っていてください」
「ですが、このままですと校長先生の威信がゆらぎます!!それは防がせていただきます!!」
そうしてこちらに向かって歩いてきた。
「東雲君と言ったな…その生徒とはどのような関係で?」
「関係を教える必要は?…それと、君のような人に変なことを言われる筋合いはないね。」
「我が高校では退学予定者が先週は3人出ていてね…そういった類の話は聞いたことがあるのだよ。それに実際されたこともある。依頼なんだろう?」
「依頼ねぇ…さっき君も話をしたのをある程度聞いているだろう?」
「聞いているが、そういうわけでもない。」
「はぁ…話を聞いていないようですね。私は先程から、ずっと貴方に聞いてるのですよ。」
俺はそのままの勢いで話を続けた。
「取り敢えず教頭先生の事を呼んでください。」
「…分かりました。」
菊池くんのクラス担任は第二学年の教室がある4階に向かったようだ。職員室と校長室は離れていて、四階と二階となんとも中途半端な場所にある。
「取り敢えずこちらへ来てください…」
教頭先生の事を呼びに行ったクラス担任が、すぐに帰ってこないことは予想が付いているし、他にも冨士山というこの男がすごく面倒くさいのも分かる。
取り敢えず今、一番最初にやらなければいけないことは校長先生と話をすることだ。
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