第22話 変わりゆく日々

零斗さんが資料を作っている間、俺も体調を整えたりしていた。そして今日は家族に会いに行く日だ。



俺と零斗さんは魁兄が運転する車に乗って俺の家族がいる家へと向かった。正直この家に来ると頭が痛くなる…あんまり長居していたら吐いちゃいそうだ。



「大丈夫かい?翔太君」



「えぇ…今日でしっかりと話をして今後の対応を決めていかないと俺も前に進めないような気がしましたから…」



「そうか…君は強いね」



「そんな…俺はそんな強くないですよ。冤罪事件に巻き込まれて学校を退学させられそうになったり、親から殴られたりと色々とありましたね。最初はそれを受け入れようとまで思ったほどですよ?でも一度気絶したのかな…その時にすごく冷静になれたから。」



「取り敢えずこれまでよく頑張ってきたね…今日君が家族と話し合ってどうするか決めるんだ…退学届のことに関しては最悪私に任せてくれれば解決してみせよう!!」



「ありがとうございます…零斗さん」



俺は魁兄が運転する車で数十分かけて戻ってきた…俺があの時飛び出したこの家に…



「翔太…俺が先に開けてくるから俺の後に続けて入ってこい。心配することはないからな。」



「どうする?俺は後ろについていようか?」



「そうですね…後ろにいてあげてください」



魁兄が玄関のインターホンを指で押した…すると急に騒がしくなった。



ガチャッ!!



玄関ドアが勢いよく開かれ魁兄の目と鼻の先を通過する…そうして出てきたのは…俺の父と考えられる人だった?顔が歪んでいるように見え、狂気的な笑みを浮かべていて、少し怖い。



「翔太…貴様今までどこをほっつき歩いていた!!」



俺の父はその笑った表情のまま、こちらに向かって歩いてくる…俺は足がすくんで動けなかった…



「翔太君のお父さんですよね?私、弁護士の東雲魁戸と言います。」



「同じく弁護士の前田零斗と言います。本日はよろしくお願いします。」



二人は名刺を未だに笑っている父に向かって差し出す…父はその名刺を受けと…らなかった…



「ふん…何が弁護士だ!!それに翔太!!お前のせいで我が社は…我が社は!!」



俺に向かって殴りかかってくる…しかし魁兄がその拳を受け止めた…



「暴力はダメです…それに彼のせいで貴方の会社が潰れたわけでは有りません。というよりまだ貴方の会社は倒産していないでしょう?」



「我が社の従業員はもう誰もいないだろう…それに何故犯罪者と話さなければいけないのだ…あの従業員共が復帰する条件として提示してきたのはお前の冤罪を晴らせとのことだ…お前は犯罪者で痴漢をした…俺の息子じゃない!!」



「…」



やっぱりそう言われるのは傷つくな…正直今すぐにでも此処を出て眠りたいが、此処は我慢だ…我慢



「…私には一つわからないことがあります。」



「何だ…言ってみろ?」



どこか酒臭いと思ったら…こいつ酒飲んでたのかよ…これじゃあ絶対話しがまとまらないじゃん…別に酒に強いとは聞いたこともないし…



「なんで貴方は息子さんの事をそんなに信じないのですか?貴方にとって一人の息子でしょう?それなら赤の他人の意見より、自分の子供の意見を聞いてあげるべきじゃないんですか?」



「お前らにはわからないだろうな…俺が社長になるまでどれだけ苦労したか…入社した直後から上司に媚びを売り続け、ようやく掴んだチャンスを活かして、上の位に上がり最終的に社長という地位を実力で勝ち取ったんだ…」



「それとこの事件に何の関係があるのですか?たとえ貴方が社長という地位を実力で得ていようと、貴方の対応は絶対に間違っています。それに和解金は貴方は500万も払ったそうですが…何故ですか?」



「我が社の不利益になるようなことを口外されては困るからな…口止め料も込みということだ…そんなこともわからないのか?」



「…相場よりはるかに多いですよ?確かに口止め料というのは分からなくもないですが、貴方がそこまで払う必要はないのでは?」



「今言っただろう?口止め料だと!!」



「口止め料なら全く持って意味ないですよ?だってこの事件のことを追っているマスコミの数を知っていますか?私も把握しきれないほどのマスコミが貴方の事と翔太君のことを追っているんですよ?」



「最近俺の家の周囲にカメラを構えた奴らがいるのはそのせいか…今度俺のことを取ろうとしたら許さない!!」



「…貴方は自分が払った金額500万がどのように使われたか知っていますか?」



「はぁ?別に俺が払った金額だしそれに和解金なら別に関係ないだろう?」



「…まぁ理解していないようですが取り敢えずそこは良いでしょう…貴方が支払った和解金はゲームの課金や、家具の新調に使われたようですね…本当に酷いもんです…私はこの件に関わったもの全ての人に対して、どんな手を使ってでも制裁を加えるつもりなので覚悟しておいてください…それとこちらをお渡ししますので内容の方を把握しておいてください…その後、この電話番号におかけください。」



魁兄はそう言ってこちらに向かって歩いてくる…正直此処にあんまり長居したくなかったから助かった…



「魁兄…ありがとう…それに零斗さんも…」



「大丈夫?辛そうだけど…それと後は電話で解決できるから…もう会わなくても大丈夫そうだよ」



「大丈夫かい?それにずっと怯えているように見えていたから心配だったんだけど…」



「なんかあの人ずっと笑っているようにしか見えなくて…それに俺は結局話せなかった。」



「大丈夫だ…恐らく君の心は彼らと会うのを拒絶しているんだと思う…もし冤罪が証明されたら、接近禁止命令も出してもらったほうが良いのかもな…」



「そうですね…もしまた会ったら何されるかわかりませんからね…」



俺と魁兄と零斗さんの三人でこの後も過ごした…零斗さんが色んな物を買ってくれてとても嬉しかった。


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