第13話 なさけない告白



「ったく・・・!」


バランスを失って、レンガの上に倒れると思っていた身体は、ギリギリのところで桜城部長に助けられた。

漫画やドラマなんかじゃ、こういう時ヒロインが倒れこむのは決まって胸なんだろうけど、私の目の前にあるのは部長の腰のベルトで、腕が掛かってるのは部長の肘の内側。

力が抜けてズルズル落ちたらすぐに膝がレンガにあたって、本当にギリギリだった事を知る。


「ぅ、あ・・りがとうございますー・・・」

「酔っ払いがハイヒールで走るな!」

「だって、部長が言い逃げするから・・・っ!」


って!そうだよ!!

こんなこと言う前に!!


「私!彼氏なんていませんけど!!」


冷たいレンガに膝をついたまま、痛くなるくらい首を反らして部長を見上げ、叫ぶ。

逃がさないぞとばかりにスーツの袖を握ったまま。


「なんなら、入社して7年、全然まったく!!」


その内容はまったくもって情けないけど。

でも、だいたいにして、私に彼氏が出来ない理由は桜城部長にあると思う。


私はもともと頭が良い人が好きだった。

知識を詰め込んだだけの人じゃなくて、それをちゃんと使える人が。

それだけでも憧れなのに。

当然だけど仕事中はすっごい、泣きが入るくらいに厳しいのに、たまにお昼休みに「今日は頑張ってっからご褒美な」ってデスクの引き出しからちっちゃいチョコレートをくれたりする、飴と鞭の使い方が絶妙で。

大量に書類を持ってる女の子がいたら他の人にも言って手伝わせるとか、そういう子に「頑張れよ」とか声を掛けてるのも見た事あるからみんなに優しいんだろうけど、でも私に声を掛けてくれる男の人の中に桜城部長以上の人はいなくて。

変に他の子より距離が近い分、部長以外の男の人をそういう目で見れなくなった。

部長に彼女が出来るとか結婚するとかしてくれないと諦めきれないのに、浮いた噂は全然ないし。

もうアラサーだし、このままお局になっていくんだろうなって思ってた矢先に、あんな期待させるような事言うなんて。


「ぜんぶ部長のせいです!!」




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