第6話、いつあなたがあなた自身を自由に使うことができたか

・・・・・


曲が終わり「音楽家」が話を始める。

一曲目から、あまりにも怖すぎた。


誰かの感情が押し込まれる感覚は、相変わらず、気に入らないが、はっきり言えば、「恐怖」である。


「音楽家」は歌っていないと本当に「普通」である。就任祝いとオーケストラの人達に「感謝」している。


リラックスしているとはいわないが、春先に見た時より穏やかな感じだ。


「音楽家」は10曲ぐらい提示されて、今日の曲を決めたと言っていた。指揮者に言いたい。今日、この日ならばもっとcelebrationな曲を「音楽家」に提示した方がよかったのでは?と。


「音楽家」様の歴史は長い。曲がないとは思えない。まさか一番叩かれた曲を提示するのか。本当に奇抜だ。


知らない曲をまた歌い始めた。

周りの様子から過去の曲だと思う。


4曲目か?

指揮者が上手いのか「音楽家」の声が音に乗らない曲だった。


感じた感情は言葉にすると「切望」としか、形容し難いなにか。未消化な感覚はこれかな?


なんだろうか。歌詞はいわゆる愛の歌だろう。

だが、感覚は酷く泣きそうな感覚だ。祝い事の感覚はしない。


後ろのオーケストラの音楽がない、少しだけの隙間に入った「音楽家」の歌の感覚。


歌い方は相変わらず不可思議だが歌自体は上手いのだから、更に謎だ。どうやったらその歌い方になるんだろう?


今日の曲、全体的にそうだが「音楽家」は何か未消化な心理状態なのか?


「普通」に話をしている時には感じない。

だけど呑まれる感覚から感じられるのは、恐らく「切望」。


礼装を着て楽しそうに話す「音楽家」。

その感覚的なギャップに困惑する。


なんだろう?ただ、気がついたら俺はこの曲の終わりに拍手をしていた。今まで全くしなかったし、するつもりもなかったのに。

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