第14話 ついにその時が…

 俺と五十嵐さんの2人がランチタイムの忙しさを乗り越える様子を、桜さんは休憩室の前から観察している。


そして…、最後のお客さんが店を後にする。これでピークは過ぎたから、以降は俺のワンオペでイケるな。


「桃子はさすが接客業経験者ね。料理は普段からしてるらしいし、即戦力よ」


桜さんの言う通りだ。追い抜かれるのも時間の問題だな。


「わたしが言う事は特にないわ。今度は遊華ちゃんとお願いするわ」


「はいは~い」


今日の行動を見る限り、東雲さんと組んでも問題なさそうだ。


「さてと、わたしは事務作業に入ろうかしら」


「アタシは掛け持ちだから帰るわ」


「わかりました。五十嵐さん、お疲れ様です」


「健君もお疲れ」


お互い労った後、女性2人は休憩室に入っていく。後はのんびりできると思ったんだが…。


「健一君、大変なことになっちゃった!」

桜さんが慌てた様子で休憩室から出てきた。


「どうしたんですか?」


「晴彦さんが倒れたって! 病院の人から、わたしの携帯に留守電が入ってて!」


最近晴彦さんの顔を観てないけど、忙しいのは変わらないみたいだな。


「わたしは病院に行って来るから、後はお願い」


「はい」

今の俺に出来るのは、晴彦さんの少しでも早い容態回復を祈る事だけだ。


「もし困った事があったら“臨時休業”しても良いからね」


「わかりました」

そんな事起こるとは思えないけど…。


「それじゃ、行って来るわ!」

そう言ってすぐ、桜さんは店を飛び出して行った。



 桜さんが店を出て行って約10分後。五十嵐さんが休憩室から出てきた。


「桜の旦那さん、大変な事になったらしいね」

彼女は出て早々、キッチンにいる俺に声をかけてきた。


「五十嵐さん、聴こえてたんですか?」


「まぁね。この入り口の扉、開けっ放しだったでしょ?」


「はい」

急用だったし、閉める余裕がないのは当然だ。


「…ねぇ、健君」

五十嵐さんはカバンを持ちながら、キッチンにいる俺に近付いてくる。


「何ですか?」

何でこっちに来るんだ? 後は帰るだけだろ?


「やっと2人きりになれたね♡」


「はっ?」

突然何を言い出すんだ?


「昨日アタシ言ったよね? 最近、旦那とHしてないって」


「それは聴きましたが…」


「今から相手してよ♡」


「できる訳ないでしょ! 営業中の店でなんて!」


それを聴いた五十嵐さんは、一旦店を出た。そしてすぐに戻ってくる。


「さっき“臨時休業”にしても良いって桜言ってたよね? だからしちゃった♡」


『OPEN』を『CLOSE』に変えたって事か。


「五十嵐さん、掛け持ちしてるんでしょ? ここでのんびりしてる場合じゃ…」


「子供が熱出したって嘘付いた♡」


ズル休みするほど、五十嵐さんはる気なんだな…。


「心配しなくても、アタシがリードしてあ・げ・る♡」


彼女は俺との距離を詰め、ズボン越しにに触れる。


「ちょっと!?」


「アタシとの経験を活かして、本命の彼女を気持ち良くさせるんだよ♡」


五十嵐さんはタイプじゃないとはいえ、童貞の俺の心は揺らぎっぱなしだ。向こうが遊びとしてるなら、俺もそのつもりでれば問題なかったりする…?


「本当に良いんですね?」

この誘惑に勝てるほど、俺は強くないんだ…。


「良いね~。若い子はこうでなくっちゃ♡」


「さすがにキッチンでるのはマズいので、休憩室に行きましょうか」



 俺と五十嵐さんは、ついにってしまった…。俺はの世話を彼女の口でされたので、お返しに彼女の胸を思う存分堪能させてもらったぞ。


桜さんより大きい胸は、俺を簡単に虜にしたのだ。本当に良い思いをさせてもらったが、“臨時休業”の時間が長すぎると怪しまれるので短時間で済ませた。


桜さんの不安が的中してしまった今、頑張って隠し通さないと…。そんな事を思いながら、ワンオペを続ける俺だった。

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