第31話 由香里の死の真相! 



「オイ!神崎家の弟神崎亮バラバラ遺体殺人事件の根源、近藤由香里の不審死を何とか解明しないと亮殺害事件には辿り着かないな?」


「本当ですね!」

 ベテラン刑事寅さんと新米刑事田代が、事件解決目指して話し合っている。


「夜になって冷え込んだ11月某日のあの夜、外に長時間居たら身体も冷え切っているから、ヒートショック現象というのはチョット違うかもしれない」


「生徒たちが紅葉を見ていた時間が4時頃までで、あとは誰も居なくなった。男子生徒の証言で忘れ物を取りに行った時間が6時頃で、男子と女子の言い争うようなわめき声がしたと証言していたが、由香里がず—っとプールにいたとは思えません」


「じゃ~争っていたのは誰なんだい?」


     ★☆


「恵子ちゃん何で……何で……亮なんだよ?俺……恵子ちゃんが好き……何でもするから……何でも……だから……亮とは別れてくれ!」


「本当に何でもしてくれるの……?フッフッフ……私の為だったら……じゃ~人殺しも出来る?」


「……それは……それは……飛躍し過ぎじゃないか?」


「フン!そんな勇気も無くて……何でもするって……笑わせるんじゃないわよ。側に寄らないで!」


「俺、恵子ちゃんの為だったら出来る……出来るさ!」

 この会話は事件の起きる数日前の話だ。


     ★☆ 


 あの夜プ-ルに忍び込んで来たのは茂だった。恵子に呼び出されてプールにやって来た茂はプールの中を見てびっくりした。実は…茂は現在愛知県有数の私立大学2年生で時間は割と自由になった。憧れの恵子に呼び出されて喜んでやって来た。するとプールの中に由香里が沈んでいた。


「恵子ちゃんこれ一体どういう事なんだよ?」


「ウウウ(´;ω;`)ウゥゥワァ~~~ン😭ワァ~~~ン由香里が……由香里が……私が一番知られたくない秘密を……二度までも……私の遠縁といっても殆ど関係無い……遠い親戚の大熊清隆の事を暴露したので……ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭喧嘩になったの。ウウウ(´;ω;`)ウゥゥワァ~~~ン😭ワァ~~~ン😭」


「オイ!大声で泣くな。シ—!……誰に聞かれるか分からないから……困ったなあ……」


「茂君と交際したら、私の言う事何でも聞いてくれるって言ったでしょう?私亮と別れて茂のものになる。だから……だから……後始末して」


「本当に……本当に……俺と付き合ってくれるのかい?」


「当然よ!だから……後始末して!」


「分かった!分かった!俺に任せろ……それより……何も……後片付けしなくても……誤って滑って死んでしまったでいいじゃないか?」


「(ノД`)シクシク……ううん……本当だ」


 足のサイズも恵子は極々平均的な23~23,5cmという事も有り、シューズも女子は皆同じ学校指定シューズという事も有り、足跡で怪しまれる事も無く、また争った形跡や物的証拠も見付からなかった事から、事故死として処理されてしまった。

 

 あっ!それから、茂だが靴下でプ-ルに忍び込んだので靴跡は残っていない。


 高台に建築された学校だったのと、プ-ルが山の斜面に面していて人目に付きにくい位置に有った事も有り、目撃情報も無かった。あの後二人は懐中電灯で物的証拠となるものが落ちていないか徹底的に調べてから帰宅した。


     ★☆

 

 

 事件の起きる数日前。

「由香里、私ね……亮と別れたの……亮が由香里と寄り戻したいって言っているのよ。私頼まれちゃって……11月某日の日曜日午後5時に、プールに来てくれないかって亮が……」


 こう言って由香里ちゃんをプールに誘い出した。

 

 近年は学校がセキュリティに力を入れているのは事実だ。それは2001年に犯罪史上に残る最悪の事件が起こったのを教訓に、セキュリティ強化に乗り出した。その事件とは大阪教育大学附属X小学校に刃物を持った男が侵入し、1年生と2年生8名の尊い命が奪われた事件だ。事件以来全国の学校では、不審者の侵入にさまざまな対策がとられている。


 だが、50年~60年前は小中高等学校のプ-ルに簡単に侵入できた。当然全部では無いが。

 

    

 55年余り前の、あの日は日曜日という事も有って先生は誰もいなかった。部活の顧問の先生も4時には帰宅していた。

 

 11月某日日曜日午後5時にはすっかり日が落ちて、辺りは人の判別が付かない程の闇に包まれていた。だが、由香里は亮に呼び出されて嬉しくて出掛けて行った。だが、待っていたのは亮ではなく恵子だった。


「恵子亮はどうしたのよ?」


「フン!来る訳無いでしょう。よくも私の秘密を一度ならず二度もバラしてくれたわね……何故……何故なのよ?」


「私小学生の時に……恵子が……恵子があんまりだから……怒れて言った事は有るけど……何も皆と一緒になって私を無視する事無いでしょう?」


「あなたが……愚図だからでしょう?じゃぁ誰が亮に言ったのよ?あなたしかいないでしょう?」

 

 実は…高校では恵子はマドンナ的存在だったのが災いして、良い事も悪い事も公になっていた。亮が恵子と付き合っていると聞いて、恵子を子供の頃から知る同級生がこっそり亮に教えてくれていた。


 それはそうだ。「滝水高校」は県下一の偏差値を誇る私立高校だ。選りすぐりの生徒達が県下どころか県外からも押し寄せてくるので、恵子の事を知っている生徒も混じっていても不思議はない。「大熊清隆が恵子と遠縁に当るのか」と、亮から尋ねられた由香里はうなずいてしまった。


「違うのよ……亮はもう大熊清隆の事を知っていたのよ。尋ねられてうなずいただけよ」


「それって……それって……話したと一緒の事でしょう?私はあなたのせいで……亮に……亮に……フラれてしまったのよ!もう悔しい。エイ!」


「なな 何をするの?キャキャ――――――――ッ!」


 ドドドドドドドドドッ ザザザザブン


 こうして…由香里は凍てつくような冷たいプ-ルに落ちて、ヒートショック現象で死んでしまった。




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