第3話:元、崑崙山の仙女。

「鏡の?・・・鏡の精?」

「たしかに・・・君、鏡から出てきたよね、間違いなく・・・」


「だね・・・」


「君・・・中国の人?」


「みたいね・・・」


「それに日本語、分かるんだ?」


「善右衛門に教わったからね・・・」


「ああ、俺のひいじいさんか・・・」


「善右衛門・・・懐かしい名前、よろしくねヨシヒコ」


「え?なんで俺の名前知ってるの?」


「蔵の中にいた時にヨシヒコを感じて、すぐにヨシヒコのすべてが私に

中に入ってきたから・・・」

「びっくりしたでしょ、ヨシヒコ・・・ごめんね」

「善右衛門がね・・・」

「あんたの、ヨシヒコのひいおじいさんだけどね・・・善右衛門が亡くなる前に

鏡に封印されてからずっと鏡の中にいたからね 」


「あの・・・封印を解いちゃいけなかったのかな?」


「いいの、ちょうどいい時期だったんじゃない? 」

「今日からよろしくね、ヨシヒコ・・・たった今から私とヨシヒコは

相思相愛・・・いつも一緒だからね」


「え〜意気投合すらしてないのに相思相愛って・・・会っていきなりは

どうなのかな?」


「いいの、だってヨシヒコが鏡の封印解いちゃったんだもん」

「出した責任取らなきゃ・・・その意味わかるよね」


「責任たって・・・なにをどう責任とれっての?」


「だから、今日からはヨシヒコは私の恋人」

「裏切ったら怖いよ・・・」


「え〜・・・そんな勝手な・・・」


「なに?・・・私じゃ不満?」

「もし私を嫌いなんて言ったら500年くらい恨んでやるから・・・」

「500年って言ったら、西遊記の孫悟空が五行山に閉じ込められた年数だからね」


「いやいや不満なんてとんでもない・・・むしろ君みたいな可愛い子が

僕の彼女って、いいのかなって思って・・・」


「いいんだよ、仲良くやろうね、ヨシヒコ」

「ってことで・・・さっそくハグして・・・」


「は?」


「だから〜ハグしてって言ってるの・・・」


「ハ・・・ハグ?・・・なんで?」


「愛し合ってるからに決まってるでしょ・・・」


「あのさ、進むの早すぎないかな?」


「こんなこともったいぶってどうすんの?」

「ヨシヒコ〜ハグして」

「はやく〜・・・」


「もう・・・しょうがないな〜」


飛飛フェイ・フェイをハグしてまじ、めっちゃ気持ちよかった愛彦だった。

ずっと、一生抱きしめたままでいたかった。


(わあああ・・・ははあ、めっちゃ気持ちいしめっちゃいい匂いする・・・)


「あのさ、聞くけど、飛飛・・・なんで鏡に封印なんかされてたの?」


「教えない・・・」


「え〜・・・」


「知らない方が神秘的でしょ・・・男と女は秘密があったほうがいいんだよ」

「だから〜鏡、大事にしてね・・・」

「てかさ・・・いつまで私に抱きついてるつもり?」


「ああ・・・ごめん、気持ちよかったから・・・つい」

「でもさ、この状況、どうやって家族に説明すればいいんだ・・・」


「ありのままを言えばいいじゃん」


「誰も信じないと思うんだけどな〜・・・」


「私がいるんだから、否応なしに信じるしかないでしょ、おバカさんね」

「それに黙ってたって、すぐバレるよ」

「善右衛門は、ヨシヒコのひいじいさんは普通に私を連れて歩いてたよ」


「ひいじいさんと僕とじゃ、家での立場が違うよ」

「って言うか・・・分かってきた・・・あの鏡、もとは、ひいじいさんが

持ってたものなんだ・・・」


「正解・・・」


「善右衛門、大金持ちだったでしょ・・・あれ全部、私のお・か・ げ」

「私、仙術が使えるの」

「それでね、ひいじいさんは私の仙術のおかげでお金持ちになれたってわけ」

「私はもともと中国の崑崙山ってところに住んでた仙女だから・・・」


「仙女?」


「そう・・・ほら」


そう言って飛飛は机に向かって指をくるくる回して訳のわからない言葉を

口走ると いきなり札束の山が現れた。


愛彦は札束の山を見てビビった。


「どこからこんな大金持ってきたんだよ」

「すぐに戻して、戻して・・・なにしてんの?」

「こんなこと犯罪だからね」


「大丈夫だよ、このお金は世に出ちゃまずいお金だから」


「余計ダメじゃん・・・そんな金、必要ないよ」

「頼むから、そう言うことやめてくれる?」


「ヨシヒコは真面目なんだね」

「善右衛門とは大違い・・・でも、そういうヨシヒコのほうが好きだよ」


「飛飛・・・今さっき、仙女って言ったよな?」


「そ、仙女の親玉、西王母の下で男相手に遊びまくってたの・・・」


「え?男相手に遊びまくってたって・・・風俗?」


「ふうぞく?」


「あ、それはいいわ・・・それより、それって、いつの時代の話?」


「いつだっけ・・・え〜っとね・・・忘れた」


「都合の悪いことは、教えてくれなかったり忘れたりするんだね」

「あのさ・・・君って普通に鏡に戻れたりできるの?」


「自分じゃ、戻れないよ・・・誰かが私を封印しないかぎり無理・・・」

「呪文が書いてあった札はヨシヒコが切ったから、もう誰も私を封印できなくなっちゃったけどね・・・ 呪文知ってた善右衛門はもうこの世にはいないし、

私を封印するのを手伝った、なまくら坊主ももういないし・・・ 」


「そうか・・・戻れないんだ・・・」


「私を鏡に戻そうとしてる?」


「いやいや、ちょっと聞いてみただけ・・・参考のために」


「私を鏡に戻そうなんて企んだら・・・」


「僕は500年くらい恨まれるんだろ?・・・」


「あと500年プラスして1000年、恨んでやるから・・・」


「あのさ・・・そんなに恨まなくても俺が平均寿命まで生きられたら上等だよ」


鏡から出てきたイケイケな中国娘。

愛彦は飛飛を鏡から出したことを、ほんのすこ〜しだけ後悔した。


つづく。

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